中国の新発展理念が支える高品質成長 義烏から見る中国経済のいま
中国の新発展理念と高品質発展が、中国東部の都市・義烏の成長をどのように支えてきたのか。世界最大級の小商品市場となった義烏の歩みから、中国経済のいまを読み解きます。
小さな農村から世界の「日用品市場」へ:義烏の変貌
中国東部の浙江省にある義烏は、かつては資源も乏しく、産業も弱い小さな農業県でした。それが現在では「世界最大の日用雑貨の卸売市場」として知られる存在になっています。
義烏国際商貿城には約7万5千の店舗が集まり、世界中のバイヤーが訪れます。これらの店舗は、世界各地の約210万の企業とつながり、およそ3,200万の雇用を支える基盤になっています。
2011年には、中国国務院が「義烏国際貿易総合改革試験区」を承認し、義烏の市場に「先行試行」の裁量を与えました。これによって義烏は新たな発展段階に入り、制度や仕組みの面でもさまざまなチャレンジを進めてきました。
露天商から始まった小さな市場は、多くの改革とアップグレードを経て、いまや国際貿易のハブとなる近代的な市場へと変貌しました。改革開放の「窓口」として、そして世界の小商品貿易の「晴雨表」として、義烏は中国経済のダイナミズムを映し出しています。
こうした歩みそのものが、地域レベルでの高品質発展の一つの具体例だと言えます。
「高品質発展」とは何か:量から質へ
高品質発展とは、単に経済規模や成長率の拡大だけを追うのではなく、「どれだけ速く」から「どれだけ良く」へと重心を移す発展のあり方を指します。量よりも質を重視する転換です。
習近平国家主席の見方では、高品質発展は、人々の「よりよい生活への不断に高まる願い」に応えるものです。経済成長の成果が、人々の暮らしの充実につながっているかどうかに焦点を当てる考え方です。
高品質発展は次のような問いに向き合おうとします。
- 経済・社会発展の目的は何か(誰のための成長か)
- 成長を支える原動力は何か(何によって成長するのか)
- どのような方法で発展していくのか(どのように成長するのか)
単なる生産量や投資額の拡大ではなく、環境や社会、暮らしの質を含めた「発展の中身」そのものを問い直すのが、高品質発展の特徴です。
中国の新発展理念:5つのキーワード
こうした高品質発展を支える理論として位置づけられているのが、中国の新発展理念です。新発展理念は、2015年に開かれた中国共産党第18期中央委員会第5回全体会議で、習近平国家主席によって提起されました。
新発展理念は、次の5つのキーワードで特徴づけられます。
- 革新(イノベーション):新しい技術やビジネスモデルで成長を生み出す
- 協調:地域間や産業間のバランスを取りながら発展する
- グリーン:環境への負荷を抑え、持続可能な成長をめざす
- 開放:世界と積極的につながり、互いに利益を分かち合う
- 共有:発展の成果をできるだけ多くの人々が享受できるようにする
この新発展理念は、中国の実情に合った発展の道筋を示すものだとされ、過去10年あまり、中国の経済・社会発展に歴史的な成果と変化をもたらしてきたと評価されています。
義烏に映る新発展理念
義烏の歩みを振り返ると、新発展理念のエッセンスがいくつも重なって見えてきます。
改革の「試験区」としての革新と協調
2011年に始まった義烏の総合改革試験は、新しい制度やルールを先行して試す「試験区」としての役割を義烏に与えました。市場運営のルールづくりや貿易の仕組みを柔軟に見直すことで、商人や企業がビジネスをしやすい環境づくりが進められてきました。
道路沿いの簡素な市場から、物流や金融、情報サービスが結びついた現代的な都市型市場へと発展したプロセスには、「革新」と「協調」の要素が色濃く表れています。市場だけでなく、都市全体のインフラやサービスが連動しながら成長してきたからです。
世界と結ぶ開放のハブ
義烏国際商貿城は、中国の小商品を世界の市場へと送り出す重要な玄関口となっています。世界中のバイヤーが義烏に集まり、ここで仕入れた日用品や雑貨が、再び世界各地の店頭に並んでいきます。
改革開放の「窓」としての義烏は、中国の開放姿勢を象徴する存在でもあります。同時に、世界の小商品貿易の動向を映し出す「晴雨表」として、国際経済の変化を読み解く手がかりにもなっています。
雇用と暮らしを支える共有の発展
義烏の市場に集まる約7万5千の店舗と、そこからつながる約210万の企業ネットワークは、およそ3,200万の雇用を支えています。この規模は、数字だけ見ても、義烏の発展が多くの人々の生活と直結していることを物語ります。
新発展理念が掲げる「共有」とは、発展の果実を特定の地域や一部の人だけでなく、広く社会全体で分かち合うことです。義烏の事例は、地域経済の成長が、雇用や所得を通じてどのように人々の暮らしに還元されうるのかを示しています。
2025年の視点から見る新発展理念の意義
新発展理念が提起されてから、2025年でおよそ10年になります。この間、中国は高速成長から高品質発展の段階へと軸足を移しつつあります。
新発展理念は、中国の今後の発展の「目的」「原動力」「方法」という三つの問いに、体系的に答えようとする試みでもあります。
- 目的:人々の生活の質を高め、より良い社会をつくること
- 原動力:革新と開放を通じて、新しい成長源を育てること
- 方法:グリーンで協調的、そして成果を共有する形で発展していくこと
義烏のような地域から生まれる具体的な取り組みや成果は、新発展理念が抽象的なスローガンではなく、各地の政策や企業活動、そして人々の生活の中で具体化されていることを示しています。
義烏から見える「高品質発展」のこれから
世界のサプライチェーンが変化し、デジタル技術や環境への配慮がますます重要になるなかで、「量から質へ」という転換は、今後の国際経済にとっても避けて通れないテーマになりつつあります。
小さな農村から出発し、世界の小商品市場へと成長した義烏の経験は、高品質発展が単なるスローガンではなく、長期的なビジョンと現場での地道な積み重ねによって支えられるプロセスであることを教えてくれます。
中国の新発展理念と高品質発展が、これからどのように各地域の現場で具体化されていくのか。義烏の動きは、その行方を読み解く一つの重要な手がかりであり続けるでしょう。
Reference(s):
How China's new development philosophy drives high-quality growth
cgtn.com








