第12回烏鎮演劇祭、世界の舞台人が集う水郷の11日間
2025年10月16日から26日まで、中国浙江省の水郷の町・烏鎮で第12回烏鎮演劇祭が開かれました。11日間の会期中、数十万規模の観劇ファンが訪れ、国際色豊かな舞台芸術を楽しみました。
水郷の古い町が「世界の劇場」に
烏鎮演劇祭は、水路と石畳の町並みが残る歴史ある水郷・烏鎮を舞台にした国際演劇祭です。今年の第12回は、町全体がステージとなり、劇場の中だけでなく屋外空間までを使った多彩な公演とイベントが展開されました。
会期は10月16日から26日までの11日間。期間中、数多くの観客が烏鎮を訪れ、日中はワークショップや対話イベント、夜は演劇公演やカーニバルというリズムで、町は一日中パフォーマンスの熱気に包まれました。
テーマは「fu yao」──生命力とともに舞い上がる
今年の烏鎮演劇祭のテーマは「fu yao」。英語では「swirling up(渦を巻いて舞い上がる)」「rising with vitality(生命力とともに上昇する)」と説明されています。
渦を巻きながら上昇していくイメージは、次々と新しい表現が生まれる演劇のエネルギーや、若い世代の創造性の立ち上がりを象徴しているようにも受け取れます。テーマに沿う形で、会場では挑戦的な作品から観客参加型の企画まで、多様な「上昇する力」が示されました。
10の国と地域から25作品 新人18組が競うコンペも
今回の烏鎮演劇祭は、そのラインナップの国際性も特徴的でした。公式プログラムとして、10の国と地域から25本の招待作品が上演されたほか、新人アーティストによる「Emerging Theater Artists' Competition(新人演劇人コンペティション)」には18作品がエントリーしました。
会期中に行われた主な企画は、次のようなものです。
- 10の国と地域から招かれた25本の招待公演
- 若手クリエーター18組が参加した新人コンペティション
- 演出家や俳優らによる公開対話(ダイアローグ)
- 演技・演出・劇作などを学ぶワークショップ
- 台本の朗読会やリーディングセッション
- 屋外カーニバルやストリートパフォーマンス
観客にとっては、公演を観るだけでなく、アーティストの思考に触れたり、創作のプロセスをのぞいたりできる場にもなっていました。
若手クリエーターの「実験場」として
烏鎮演劇祭は、若い世代の演劇人にとって重要な舞台でもあります。新人コンペティションは、 emerging(台頭しつつある)という名の通り、まだ広く知られていないアーティストが作品を発表し、国際的な観客や批評家と出会う機会になっています。
今年も、演劇の形式や上演空間の使い方、観客との距離感に挑戦する作品が並び、烏鎮という古い町と、最前線の表現が出会う場が立ち上がりました。
話題作「Anthropolis–Marathon」──ギリシャ神話で東西をつなぐ
今回の公演ラインナップの中でも注目を集めたのが、ドイツの劇場・ドイチェス・シャウシュピールハウス・ハンブルクによる「Anthropolis–Marathon」です。
この作品は、5つのギリシャ神話を織り交ぜながら構成された舞台で、人間社会や都市、時間の流れについて多層的に問いかけるものとなっています。古典神話を題材としながらも、現代の観客にとって切実なテーマを投げかける構成が特徴です。
西洋の神話世界を出発点にしつつ、烏鎮という東アジアの水郷で上演されたことで、東洋と西洋の演劇伝統が出会い、対話する場にもなりました。この作品への関心の高まりは、烏鎮演劇祭そのものが、東西の文化交流のハブとして機能しつつあることを示していると言えます。
2013年の誕生から、世界の若手が集うダイナミックな場へ
烏鎮演劇祭が始まったのは2013年です。それから十数年のあいだに、同フェスティバルは、世界各地の若手演劇人が創造性を発揮し、互いに学び合うダイナミックなプラットフォームへと成長してきました。
古い町並みを背景に、多言語・多文化の作品が一堂に会することで、烏鎮は「世界の物語が交差する場所」となっています。今年の第12回も、その流れを引き継ぎつつ、新しい才能や出会いを生み出す場となりました。
なぜ今、烏鎮演劇祭に注目するのか
国際ニュースとして烏鎮演劇祭を眺めると、いくつかのポイントが見えてきます。
- 国際的な創作と交流の場:10の国と地域から作品が集まり、言語や文化の違いを越えた対話が生まれていること。
- 若手の躍進:新人コンペティションなどを通じて、次の世代の演劇人が世界に向けて作品を発信していること。
- 地域とアートの共鳴:水郷という固有の風景と、現代的な舞台芸術が組み合わさることで、新しい観劇体験が生まれていること。
スマートフォンで世界中のニュースや動画に触れられる今だからこそ、ひとつの小さな町に多様な物語が集まり、リアルな場で共有されるという現象は、改めて注目に値します。
2025年の第12回烏鎮演劇祭は、「fu yao」というテーマのもと、創造性が渦を巻きながら上昇していく様子を、具体的な作品と出会いを通じて見せてくれました。今後も、この水郷の町からどのような物語と対話が生まれていくのか、注視していきたいところです。
Reference(s):
cgtn.com








