核融合エネルギー実用化へ 中国が国際協力で果たす役割とは
国際原子力機関(IAEA)が2025年10月14〜18日に中国南西部の成都で開いた第30回核融合エネルギー会議(FEC 2025)で、中国の核融合エネルギー技術と国際協力の役割が改めて注目を集めました。
IAEAのラファエル・マリアーノ・グロッシ事務局長は、中国の貢献を評価し、同機関は中国核工業集団公司(CNNC)傘下の南西物理研究院(SWIP)を初の核融合エネルギー研究・訓練協力センター(Fusion Energy Research and Training Cooperation Center)に指定しました。ITER(国際熱核融合実験炉)や産業界での成果も相まって、中国は核融合の実用化に向けた世界的な取り組みの中で存在感を高めています。
成都で開かれたFEC 2025で示された評価
FEC 2025は、IAEAが主催する核融合エネルギー分野の主要な国際会議で、今年は中国南西部の都市・成都で開催されました。会議では、核融合エネルギー技術の最新動向とともに、国際協力の重要性が繰り返し強調されました。
グロッシ事務局長は、中国が世界の核融合エネルギー技術の発展に果たしている役割を称えました。SWIPの協力センター指定は、その象徴的な一歩だと受け止められています。
SWIPがIAEA初の協力センターに
IAEAは今回、CNNC傘下の研究機関であるSWIPを、核融合エネルギー研究・訓練協力センター第1号に位置付けました。IAEAの枠組みのもとで、研究者の育成や技術交流、共同研究のハブとなることが期待されています。
中国の研究機関や企業は、さまざまな核融合装置の開発を通じて、将来の核融合発電所で鍵となる物理・工学・燃料サイクルの課題に取り組んでいます。今回の指定は、そうした取り組みが国際的なネットワークの中でさらに強化されることを意味します。
ITERでの役割と産業界の成果
核融合の国際協力を語るうえで欠かせないのが、フランスを拠点とする国際熱核融合実験炉ITERです。ITERは世界最大級の国際科学プロジェクトで、中国を含む7つのメンバーが建設や運営に貢献しています。
ITER機構のピエトロ・バラバスキ事務局長は、SWIPの協力センター指定を歓迎し、中国がITERの他の参加メンバーと強固に協力していると指摘しました。中国はITER向けの重要部品の製造や納入、組み立てを担っており、国際プロジェクトの現場で存在感を示しています。
CNNC傘下の中国核電工程公司(CNPE)にある核融合工学技術センターの何旭霞センター長は、今年9月に安全生産が連続2,000日に達したと述べました。また品質面でも4年連続で顧客から最高評価の「優秀」を得ているとし、国際プロジェクトを支える安定した技術力を示しました。
研究から工学・商用化段階へ
中国原子力機構の黄平事務総長は、核融合エネルギーの現在地を次のように説明します。
黄事務総長は、核融合エネルギーが純粋な科学研究の段階から、工学的な実践や商業応用へと移行しつつあるとしたうえで、「この発展を促すには、国際社会の共同の努力が必要だ」と強調しました。
FEC 2025の議論や発言からは、個々の国や機関だけではなく、国境を越えた連携こそが大型プロジェクトの推進力になるという認識の共有がうかがえます。
100万度超プラズマと大型装置の節目
会議の場では、中国の研究者たちが最新の技術的進展も紹介しました。
- 中国科学院・プラズマ物理研究所の劉志宏研究員は、今年10月1日に自らの研究装置で重要なマイルストーンを達成したと報告しました。装置の中核となるデュワー基部が順調に主建屋に据え付けられ、今後の本格的な試験に向けた基盤が整ったとしています。
- CNNCの南西物理研究院で核融合科学部門を率いる鐘武瑜氏は、今年前半の実験でイオン温度と電子温度の両方が1億度を超えたと述べました。高温プラズマ制御の分野で、重要な一歩となる成果です。
こうした報告は、これまで理論や基礎研究が中心だった領域で、大型装置を用いた実験が着実に前に進んでいることを示しています。
次世代燃料「水素ーホウ素」への挑戦
燃料面での新たな挑戦も進んでいます。中国のエネルギー企業グループであるENNのエネルギー研究院を率いる劉民生院長は、水素ーホウ素燃料の活用に向けた取り組みについて説明しました。
劉院長によると、同研究院は従来主流とされる重水素・三重水素燃料に代わる選択肢として、水素ーホウ素燃料での核融合反応を目指しています。劉院長は「2029年か2030年までに、プラズマ全体で水素ーホウ素核融合反応が起こせるようにしたい」と述べ、数年スパンの明確な目標を掲げました。
異なる燃料サイクルの研究が進むことで、将来の核融合発電の設計や安全性、コスト構造にも多様な選択肢が生まれる可能性があります。
国際協力が開く核融合エネルギーの未来
FEC 2025で示されたメッセージを整理すると、次の三つのポイントが浮かび上がります。
- IAEAとITERといった国際枠組みのもとで、中国を含む各国・地域の研究機関が役割分担しながら開発を進めていること
- 研究は純粋な科学から工学・商業化のフェーズへ移行しつつあり、安全性と品質を確保しながら大型装置の建設と運転が進んでいること
- 燃料サイクルを含む多様なアプローチが試されており、その中で国際協力が知見の共有とリスク分散の鍵になっていること
核融合エネルギーの実用化がいつ、どの形で実現するかはまだ不透明ですが、成都での議論や各種の最新成果は、世界がこの分野で連携して歩みを進めている現状を映し出しています。国際ニュースとして今後も動向を追っていく価値のあるテーマと言えそうです。
Reference(s):
China collaborating in global drive to harness fusion energy
cgtn.com








