中国のVR企業が1万社超え 世界VR産業大会が映す産業エコシステム
中国で仮想現実(VR)産業の拡大が加速しています。2024年末時点でVR関連企業が1万社を超えたことが、2025年に中国・南昌で開かれた世界VR産業大会(WCVRI)で明らかになりました。本稿では、この数字が意味するものと、中国VR産業の特徴を整理します。
VR企業1万社超えが示すもの
世界VR産業大会の会場となったのは、東部・江西省の省都である南昌です。大会の場で、中国の工業・情報化部の総工程師(チーフエンジニア)である謝少鋒(シエ・シャオフォン)氏が、中国のVR企業数が2024年末までに1万社を超えたと明らかにしました。
1万社という規模は、単に企業数が増えたというだけでなく、VRが特定の業界向けのニッチ技術から、幅広い産業で使われる基盤技術へと変化しつつあることを物語っています。
「自立型」産業システムと多様なアプリケーション
謝氏によると、中国のVR産業はすでに「自立した産業システム」と「多様で統合されたアプリケーションエコシステム」、そして「比較的完成した産業エコロジー」を築いているといいます。
ここでいう自立した産業システムとは、以下のような構造を指すと考えられます。
- ヘッドセットやゴーグルなどのVR端末の設計・製造
- 映像処理や空間認識などの基盤ソフトウェアの開発
- ゲーム、教育、産業トレーニングなどのコンテンツ制作
- クラウドやネットワークを含むサービス基盤の構築
こうした要素を国内で一体的に揃えることで、技術開発から製品化、サービス提供まで、国内で完結できる体制を整えつつあることがうかがえます。
核心技術と標準化で進む競争力強化
謝氏は、核心技術のブレークスルーや標準の整備、技術統合の面で「積極的な成果」が得られているとも述べました。
近年、中国では仮想デジタルヒューマン(バーチャルな人物キャラクター)やVR端末機器といった重要分野で、30を超える国家標準を策定し、国際標準づくりも約10件を主導してきました。
標準化が進むことで、次のような効果が期待できます。
- 機器やソフトの互換性が高まり、ユーザーの使い勝手が向上する
- 安全性や品質の基準が明確になり、企業間の信頼が高まる
- 共通のルールに基づくことで、新規参入企業もビジネスを組み立てやすくなる
特に国際標準に関わることは、今後の世界市場での発言力や、他国・他地域との協力関係にも影響を与える可能性があります。
南昌で6回開催される世界VR産業大会
世界VR産業大会(WCVRI)は、江西省政府が主催し、これまでに6回開催されています。いずれも南昌で開かれており、同市がVR関連産業のハブとして存在感を高めていることがうかがえます。
大会では企業の展示や技術発表に加え、投資の呼び込みも行われています。今回の大会に関連しては、新たなテクノロジー投資として5億3,000万ドル(約数百億円)規模の資金が生まれたと報じられており、VRを軸にした新たな産業クラスター形成への期待がにじみます。
日本の読者にとっての3つのポイント
中国のVR企業が1万社を超えたというニュースは、日本の読者にとってもいくつかの示唆を与えます。ポイントを3つに整理します。
1. 「産業エコシステム」をどうつくるか
ハードからソフト、コンテンツ、標準化までを一体で進めるアプローチは、他のデジタル分野にも通じます。日本でも、個別のプロジェクトだけでなく、産業全体のエコシステムをどう設計するかが問われています。
2. 標準づくりへの参加が競争力になる
VR端末や仮想デジタルヒューマンのような分野では、どのような標準が主流になるかで市場の構図が変わります。日本の企業や研究者にとっても、国際標準づくりの場への関与は、単なる技術議論ではなく、事業戦略の一部といえるでしょう。
3. VRは「日常のインフラ」になる可能性
企業数の増加や標準化の進展は、VRがゲームやエンタメだけでなく、教育、医療、製造、都市計画など、多様な分野の「日常的なインフラ」として使われる未来を示唆しています。日本でも、どの分野でVRを活用するのか、具体的なユースケースを描くことが重要になりそうです。
「数」と「ルール」から読むVR産業の現在地
2024年末時点で1万社を超えた中国のVR企業、そして30を超える国家標準と複数の国際標準——。今回の世界VR産業大会で示されたこれらの数字は、VRが次の成長段階に入りつつあることを示しています。
今後、各国・各地域がどのようにVRの産業基盤とルールづくりを進めていくのか。その動きは、私たちの仕事や学び、娯楽のスタイルを静かに変えていくかもしれません。
Reference(s):
China's over 10,000 VR companies signal scale of virtual reality boom
cgtn.com








