不安は繊細すぎだから?メンタルヘルスとAI支援を考える video poster
不安やうつは、単に「繊細すぎ」「大げさ」なだけなのでしょうか。そして、心の不調にAIは本当に役立つのでしょうか。中国本土の上海精神衛生センター副院長、ワン・ジェン(Wang Zhen)医師のコメントを手がかりに、メンタルヘルスとAI支援のこれからを考えます。
不安やうつは「性格の問題」ではなく、病気としての側面がある
不安やうつは、周囲から「気にしすぎ」「しっかりしていない」と受け止められがちです。しかしワン医師は、不安やうつは身体の病気と同じように、生物学的なメカニズムを持つと説明しています。
つまり、心の状態は「気合」や「性格」だけで決まるものではなく、脳やホルモン、神経の働きなど、目に見えにくい身体の仕組みとも深く関わっているという視点です。この見方に立つと、不安やうつは「本人の甘え」ではなく、適切なサポートや治療が必要な状態だと理解できます。
努力している人に「甘え」と言わないために
ワン医師によると、不安やうつを抱える人の多くは、自分なりに症状をコントロールしようと努力しています。それでも苦しさが続くからこそ、専門の支援が必要になります。
それなのに「繊細すぎる」「もっとしっかりしなよ」といった言葉を投げかけられると、本人は「自分が悪いのだ」と自分を責めやすくなり、相談のハードルもさらに上がってしまいます。心の不調を「性格」や「根性」の問題として片づけることは、回復のチャンスを遠ざけてしまう可能性があります。
身近な人ができる小さなサポート
不安やうつを「性格の問題」と決めつけず、病気として理解しようとするだけでも、大きな支えになります。身近な人ができることを、いくつか整理してみます。
- 気になるサインに気づいたら、否定せずに話を聞く
- 「どうしたの」「何か手伝えることはある?」と、ゆっくり問いかける
- 無理に励ますよりも、「つらいよね」と気持ちを受け止める
- 必要に応じて、専門機関や相談窓口につながるようそっと勧める
相手を変えようとするのではなく、「一緒に考える」姿勢を持つことが、本人にとっての安心感につながります。
人手不足を補うAI、でも専門家の代わりにはならない
メンタルヘルスの現場では、多くの国や地域と同じように、専門職の数が足りないという課題があります。ワン医師は、こうした状況でAIが基本的なサポートを提供する役割を果たしうると述べています。
たとえばAIは、簡単な相談の入り口になったり、ストレスや気分のセルフチェックを手伝ったり、メンタルヘルスに関する基礎知識の提供を行ったりすることが考えられます。24時間利用できるツールであれば、夜間や休日に一人で不安を抱えたときの「とりあえず話せる相手」にもなりえます。
一方でワン医師は、AIはあくまで補助的な存在であり、専門家による人間の判断やケアを代替するものではないと強調します。症状の重さを見極めることや、緊急時の対応、長期的な治療計画の立案などは、医師やカウンセラーなどの専門職による支援が欠かせません。
AIだけに頼ってしまうと、本来は早めに専門機関につながるべき状態なのに、受診のタイミングを逃してしまうおそれもあります。AIは「手軽で身近なサポート」として活用しつつ、必要なときには人と人とのつながりに戻ることが大切です。
AIとどう付き合うか:3つのポイント
AIを使ったメンタルヘルスサービスが増える中で、私たちが意識しておきたいポイントを3つにまとめます。
- AIは「相談の入口」と考える
AIは、気持ちを言葉にする練習をしたり、自分の状態を整理したりする「入口」として役立ちます。一方で、診断や治療方針をAIだけに任せるのは避けるべきです。 - つらさが強いときは、必ず人とつながる
日常生活に大きな支障が出ていると感じるとき、自分や周囲の安全が心配なときには、AIではなく、人のいる相談窓口や医療機関に助けを求めることが重要です。 - 周りの人の「サイン」に気づく
家族や友人、同僚の様子がいつもと違うと感じたら、そっと声をかけてみることもAI時代の私たちの役割です。ツールに任せきりにせず、人同士のつながりを保つことが、最終的な安心につながります。
「繊細さ」を責める社会から、「理解し支える」社会へ
不安やうつを「繊細すぎ」「大げさ」と切り捨てるのではなく、身体の病気と同じように生物学的な背景を持つ状態として理解しようとすること。そしてAIをうまく活用しながらも、人間の専門家による支援と、身近な人とのつながりを大切にすること。この二つが、これからのメンタルヘルスを考えるうえで重要になっていきます。
身近な誰かが、あるいは自分自身が困っていると感じたとき、「もっと頑張れ」ではなく「話を聞かせて」と声をかける。その小さな一歩が、心の不調を抱える人を責めずに支え合う社会につながっていきます。
Reference(s):
cgtn.com








