APECがAIを成長の柱に 中国で進む産業・グリーン分野の活用
APEC(アジア太平洋経済協力)が、人工知能(AI)とデジタル化を「持続可能な成長の柱」と位置づける一方で、中国では産業や電力・環境分野でAIの実装が進んでいます。2025年12月現在、アジアの経済と社会は、AIをどう使いこなすかという新しい問いに直面しています。
APECが掲げる「AIとデジタル化で成長を」
韓国・仁川で開かれた一連の閣僚会合を経て、今年8月に「2025年APECデジタル・AI担当相声明」が公表されました。この国際ニュースは、AIとデジタル化を軸にしたアジア太平洋地域の成長戦略を示すものとして注目されています。
人間中心・バランス重視のAIルール
声明は、AIを経済成長のエンジンとしながらも、「人間中心」で「バランスの取れた」アプローチを取るべきだと強調しています。効率性やレジリエンス(回復力)を高める一方で、安全性や信頼性に関するリスクに慎重に向き合う姿勢です。
- 人間の尊厳や権利を尊重する、人間中心のAIの推進
- 安全性・信頼性・説明可能性などのリスクへの対応
- 効率性や復元力を高めることで、持続可能な成長を後押し
AIをどう設計し、どう使うかは技術の問題だけでなく、社会の価値観の問題でもある――そんなメッセージがにじみます。
財政・金融政策も「AI前提」に
APECの財務相と構造改革担当相による合同会合でも、AIは重要なテーマとなりました。特に「AI駆動のデジタル金融」は、金融アクセスを広げる鍵と位置づけられています。
- AIを使ったデジタル金融サービスで、中小企業や個人の資金アクセスを拡大
- 売上データや取引履歴などを活用する「代替的な信用評価」による融資
- 高齢化など人口構造の変化を補う成長エンジンとして、AIへの財政資源の重点配分
人口減少が進むアジアの多くの国・地域にとって、「人手に頼らない成長」をどう設計するかは共通課題です。APECがAIとデジタル化を軸に議論を進めていることは、日本の読者にとっても無関係ではありません。
中国で本格化する「AI+インダストリアル・インターネット」
こうした地域的な枠組みと並行して、中国では産業現場でのAI活用が加速しています。特に注目されているのが、「AI+インダストリアル・インターネット」と呼ばれる取り組みです。
江蘇省徐州に拠点を置くXCMG Hanyunの総経理であるZhang Qiliang氏は、人民郵電報(People's Posts and Telecommunications News)の取材に対し、「2025年は『AI+インダストリアル・インターネット』の本格実装の元年になる」と述べています。
巨大AIモデル×現場ノウハウの融合
この戦略の中心にあるのは、大規模なAIモデルと産業現場のノウハウを組み合わせ、工場や建設現場に散らばる膨大なデータを整理・活用していくことです。
- センサーや機械から集まる膨大なデータをAIが処理
- 画像、音、ログなど形式がそろっていない非構造化データにも対応
- 建設機械などでの故障検知の精度向上と、保守コストの削減につなげる
Zhang氏は、工場や現場に蓄積されたデータを「休眠資産」から「流れる価値」に変えることが核心だとしています。これは、これまで活かしきれていなかったデータを、新たな利益や効率向上につながる「流動資産」に変えていく発想だと言えます。
スマートグリッドと脱炭素を支えるAI
中国では、AIは産業だけでなく、グリーンエネルギーやカーボンニュートラル(脱炭素)の分野でも重要な役割を担い始めています。Science and Technology Dailyの報道は、その具体像を伝えています。
再エネを安定して電力網へ
再生可能エネルギーは、天候や時間帯によって発電量が変動するため、電力網の安定運用が難しいという課題があります。AIは、膨大なデータを処理しながら、需要(負荷)と再エネの出力を高精度に予測することで、スマートグリッド(賢い電力網)の安定性向上に貢献しています。
- 電力需要と再エネ出力の高精度な予測
- その予測に基づいた送電・配電の最適化
- 風力・太陽光といったグリーン電力の柔軟な統合
こうしたAIの活用は、停電リスクを抑えながら再エネ比率を高めるうえで不可欠となりつつあります。
排出監視の精度向上と「真の削減」の可視化
さらに、AIは二酸化炭素などの排出監視にも使われています。大量のデータを解析することで、短時間で排出量の多い施設を特定したり、削減努力の実態を検証したりすることが可能になります。
- 大気観測データや工場データを組み合わせた排出量の推計
- 短時間での「大量排出源(スーパーエミッター)」の特定
- 削減プロジェクトの効果検証を通じた、信頼性の高い脱炭素の推進
環境対策の「見える化」が進めば、企業や自治体の取り組みへの信頼も高まり、より持続可能な未来づくりにつながっていきます。
日本・アジアの読者にとっての意味
APECが掲げるAI戦略と、中国で進むAIの実装は、日本を含むアジアの読者に何を示しているのでしょうか。国際ニュースとしての距離感だけでなく、自分ごととして捉える視点が問われます。
- ビジネス:製造業やエネルギー関連企業にとって、現場データとAIをどう組み合わせるかが競争力の源泉になりつつあります。
- 個人:AIを活用したデジタル金融は、起業や副業、個人の資産形成の可能性を広げるかもしれません。
- 政策:人間中心でリスクに配慮したAIルールづくりを、各国・地域がどうすり合わせていくかが、今後の焦点となります。
2025年12月現在、APECはAIとデジタル化を通じて持続可能な成長の道筋を探り、中国では産業とグリーン分野でのAI活用が進んでいます。私たち一人ひとりも、仕事や生活のなかでAIとどう付き合うのか、自分なりの視点を持つことがますます重要になっていきそうです。
Reference(s):
cgtn.com








