中国の新五カ年計画案を専門家が解説 高品質発展と制度型開放は何を意味するか
来年スタートする中国の第15次五カ年計画(2026〜2030年)の骨格が、このほど中国共産党第20期中央委員会第4回総会で示されました。高品質の発展や科学技術の自立自強を掲げる新たな青写真は、なぜ「安定と自信のアンカー」と呼ばれているのでしょうか。
第15次五カ年計画案が「この一週間」で見えてきた
中国共産党第20期中央委員会は今週、第4回総会(第4回全体会議)で、来年から始まる第15次五カ年計画(2026〜2030年)の策定に向けた提言を採択しました。総会後に公表されたコミュニケ(公報)には、今後5年間の経済・社会発展の方向性が幅広く示されています。
中国は、世界第2の経済として「高品質な発展の大きな前進」「科学技術の自立自強の一層の強化」「新しい質の生産力の育成」「現代化された産業体系の構築」などを掲げています。こうした目標が、国内だけでなく世界経済にどのような影響を与えるのかに注目が集まっています。
2026〜2030年は「過去と未来をつなぐ要の5年」
人民大学国家発展・戦略研究院の研究員であり、新疆大学マルクス主義学院副院長でもあるXia Lu氏は、CGTNのインタビューで、第15次五カ年計画の戦略的位置づけを「中国の現代化プロセスが、過去と未来をつなぐ重要な段階に入る」と表現しました。
第14次五カ年計画期間(2021〜2025年)がまもなく終わる今、第15次五カ年計画期間(2026〜2030年)は、2035年までに社会主義の現代化を実現するという中長期目標に向けて、「基礎を固め、全面的な前進を図るための重要な時期」と位置づけられています。Xia氏は、これが「今後5年間の仕事の緊急性と決定的な意味合いを際立たせている」と指摘します。
「高品質な発展」と「発展と安全の統一」が中核原則に
今回の提言で最も大きな変化としてXia氏が挙げるのが、発展原則の再定義です。第15次五カ年計画では、これまで以上に「高品質な発展」が圧倒的な中核原則として位置づけられました。また、「発展と安全の統一」が、これまでにない戦略的な高さに引き上げられ、独立した基本原則として示された点も特徴的です。
高品質な発展とは、単に成長率の高さを追うのではなく、
- イノベーション力や生産性の向上
- 環境負荷の低減やグリーン転換
- 地域間・都市と農村のバランス
- 人々の生活の質の向上
といった質の側面を重視する方向性を指します。これに「安全保障」の視点を重ねることで、経済・社会の安定を守りながら長期的な成長を目指す構図が浮かび上がります。
産業政策のキーワードは「スマート・グリーン・一体化」
産業政策の面では、提言は「産業基盤の高度化」と「産業チェーンの現代化」を引き続き重視しつつ、「スマート・グリーン・一体化」の発展を打ち出しています。これは、デジタル技術と製造業など実体経済の融合を進めながら、環境に配慮した成長を目指す方向性を示したものです。
具体的には、
- 人工知能やビッグデータなどを活用したスマート製造の拡大
- 省エネ・再生可能エネルギー・循環型産業などグリーン分野への投資強化
- サプライチェーン全体の効率化と高度化を図る一体的な産業政策
などが想定されています。Xia氏は、こうした方針は「実体経済を一層強化していく中国の決意を示している」と分析しています。
モノからルールへ――「制度型開放」が目指すもの
開放政策についても、提言は新たな方向性を打ち出しています。キーワードは「制度レベルでの開放拡大」です。これは、これまで重視されてきた貨物や生産要素(資本や労働力など)の流れにとどまらず、国際的なルール・規則・基準との整合性を高めていくことを意味します。
日本など海外の企業や投資家にとっては、
- より透明で予見可能性の高いビジネス環境
- 知的財産やデータなど新たな分野を含むルールづくりへの参加機会
- サービス産業やデジタル分野などでの協力拡大の余地
といった形で影響が及ぶ可能性があります。開放の軸足が「モノ」から「制度・ルール」に広がることで、中国と世界の経済関係の質的な変化が進むかどうかが焦点となります。
「中国経済」だけでなく「中国の人々の経済」にも注目
今回の提言で特に目を引く表現としてXia氏が挙げたのが、「中国経済」だけでなく「中国の人々の経済」を重視するという考え方です。これは、国内のマクロ経済指標だけでなく、中国の人々が世界各地で行う消費や投資、イノベーション活動なども含めて、より広い視野で発展を捉えようとする姿勢を示していると解釈できます。
中国の人々の経済活動が、アジアを含む世界の観光、デジタルサービス、スタートアップ投資などさまざまな分野と結びつく中で、その動きをどのように制度的に支え、世界との相互作用を深めていくのかが、今後の注目点となりそうです。
「必ず守るべき原則」としてのイノベーションと実体経済
中国社会科学院経済研究所のPeng Lei氏も、CGTNのインタビューで、第15次五カ年計画期の経済・社会発展の指導原則について見解を示しました。Peng氏は、それらの原則はこれまでの経験の蓄積であり、実践の理論的総括でもあるとした上で、「必ず守るべき」ものだと強調しています。
特に重視されているのが、
- イノベーション主導の発展戦略を堅持すること
- 実体経済を揺るがず強化し続けること
です。Peng氏は、これらが社会主義現代化の実現に向けて決定的な進展を遂げるうえでのカギになるとし、「その他の全ての任務は、この中核目標を守り支えるために設計されている」と述べています。
外部ショックに備える「リスクシナリオ」の発想
同時に、Peng氏は「極めて複雑で変化の激しい発展環境」を前提に、外部からの攪乱やショックをいかに排除し、防ぐかが重要な焦点になると指摘します。そのために必要なのは、
- 戦略的な落ち着きを保つこと
- 信頼感と自信を高めること
- 発展と安全の両方を確保すること
だといいます。さらに、さまざまなリスクシナリオをあらかじめ想定し、経済・社会の発展を確保・保障するための政策措置を体系的に講じていく必要があると強調しました。
こうした取り組みは、中国国内の安定だけでなく、世界経済全体にとっても「安定と自信のアンカー」として機能することが期待されているといえます。
世界とアジアにとっての意味――日本からどう向き合うか
今回示された第15次五カ年計画の青写真は、中国にとっては2035年の現代化目標に向けた重要なステップであると同時に、国際社会にとってもリスクと機会の両面を含む大きな変化の予告編でもあります。
日本を含むアジアや世界のパートナーにとっては、
- 高品質な発展とグリーン転換に向けた協力の余地
- 制度型開放の進展に伴うビジネス環境の変化をどう読み解くか
- 外部ショックへの備えを重視する中国の姿勢を、地域の安定にどうつなげるか
といった点が今後の考えるべきテーマになりそうです。
今後、第15次五カ年計画の内容がさらに具体化していくプロセスを追いながら、今回の提言と専門家たちの分析を手がかりに、「安定と自信のアンカー」としての中国の動きを、冷静に、しかし主体的に読み解いていくことが、国際ニュースをフォローする私たち一人ひとりに求められているのかもしれません。
Reference(s):
Experts on China's new five-year plan: Anchor of stability, confidence
cgtn.com








