中国とシンガポール、より公正な国際秩序へ協力強化 李強首相が表明
中国の李強国務院総理(以下、李強首相)は土曜日、シンガポールのローレンス・ウォン首相と会談し、習近平国家主席が提唱する一連のグローバルなイニシアチブをシンガポールと共に実行し、国際秩序をより公正で公平な方向へ発展させていく考えを強調しました。多国間の貿易体制に揺らぎが見られる中、中国とシンガポールがどのような役割を果たそうとしているのかが注目されています。
「より公正で公平な国際秩序」に向けた中国とシンガポールの連携
李強首相は会談で、習近平国家主席が打ち出してきた「主要なグローバル・イニシアチブ」をシンガポールと協力して実行し、国際秩序をより公正で公平な方向へ導きたいと述べました。具体的なイニシアチブの名称には触れていませんが、国際ルールづくりや開発、グローバル・ガバナンス(世界の統治枠組み)に関する幅広い構想が念頭にあるとみられます。
この発言の背景には、国際社会で「誰がルールをつくるのか」「そのルールは公平なのか」という議論が続いている現状があります。李強首相は、こうした議論に中国とシンガポールの協力という形で関与していく姿勢を示したと言えます。
多国間貿易体制の揺らぎと「保護主義」への懸念
李強首相は、現在の多国間貿易体制が「深刻な圧力」にさらされていると指摘しました。そのうえで、中国はシンガポールとともに、
- 国連などの国際枠組みでの意思疎通と協力を強化する
- 一方的な措置(ユニラテラリズム)や保護主義に反対する
- 自由貿易と経済のグローバル化を擁護する
と述べ、多国間主義を重視する立場を改めて表明しました。
関税や輸出規制、経済安全保障をめぐる議論が各国で続くなか、「保護主義」という言葉は国際ニュースで頻繁に登場します。今回の会談は、中国とシンガポールがこの流れにどう向き合うかを示したものとも言えます。
今年6月の首脳会談が示した「次のステージ」
李強首相は、今年6月に北京で行われた習近平国家主席とウォン首相の会談に触れ、この首脳会談が「両国関係の次の段階に向けた進路を示した」と評価しました。
そのうえで、中国はシンガポールと共に、
- 国交樹立の初心を守る
- 伝統的な友好関係を引き継ぎ、発展させる
- 政治的な相互信頼を強化する
- 実務的な協力を拡大し、近代化の取り組みを相互に支える
ことを目指すと述べました。両国の関係を「次のステージ」へ押し上げる意図がにじみます。
第20期党中央第4回全体会議と「第15次五カ年計画」
李強首相は、直前に閉幕した中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議(第4回総会)についても言及しました。この会議では、「第15次五カ年計画」を策定するための勧告が審議・採択されたと説明しています。
五カ年計画は、中国の今後数年にわたる経済・社会開発の大枠を示す重要な指針とされています。李強首相は、この勧告が「今後5年間とそれ以降の中国の発展に向けたトップレベルの設計と戦略的な計画」を提供すると述べ、中国の中長期的な方向性が整理されたことを強調しました。
そのうえで、中国はシンガポールとの「発展戦略のすり合わせ」を強化し、両国の協力をこの大きな計画の中に位置づけていく考えを示しました。
蘇州工業園区・天津エコシティなど既存プロジェクトの高度化へ
経済協力の具体的な分野として、李強首相は次のようなポイントを挙げました。
- 二国間の協力メカニズムを十分に活用する
- 二国間の貿易・投資の成長という良好な流れを維持する
- 蘇州工業園区や天津エコシティといった重要プロジェクトを「強化・拡大」する
- 第三国(第三の市場)での協力も積極的に模索する
蘇州工業園区や天津エコシティは、中国とシンガポールの協力を象徴するプロジェクトとして位置づけられています。今回の発言は、それらを単に維持するだけでなく、「質」と「規模」の両面で高めていこうとする姿勢を示した形です。
デジタル経済・グリーン経済・AI…新分野での連携
李強首相は、新しい産業分野での協力拡大にも言及しました。具体的には、
- デジタル経済
- グリーン経済
- 人工知能(AI)
- 新エネルギー
- バイオ医薬(バイオメディシン)
といった分野が挙げられています。これらはいずれも、今後の成長が期待される分野であり、国際競争も激しくなっている領域です。
また、中国はより多くのシンガポール企業の対中投資を歓迎するとともに、シンガポール側に対しても、中国企業のシンガポールでの活動を引き続き支援するよう期待を表明しました。双方向の投資とビジネスを通じて、経済関係をさらに厚くしていく狙いがうかがえます。
社会保障や雇用、文化交流まで 「人」中心の協力強化
経済だけでなく、「人」に焦点を当てた協力も今回の会談の重要なテーマになりました。李強首相は、
- 社会保障(社会福祉)
- 雇用促進
といった分野での経験交流を強化し、相互の学びを通じてより良い発展を目指す考えを示しました。
さらに、
- 文化
- 観光
- 教育
- メディア
- 若者交流
などの分野での協力を深めることで、相互理解と友好を一層高めていく方針も示しています。政治や経済に限らず、人と人との交流を重視する姿勢が強調された形です。
日本の読者にとっての意味
今回の中国とシンガポールの会談は、自由貿易や国際秩序、デジタル・グリーン経済といった、現在の国際社会の大きなテーマが詰まった内容になっています。
日本から見ると、
- アジアの主要な経済プレーヤーが、多国間主義や自由貿易をどのように位置づけているのか
- デジタル経済やAI、グリーン分野で、どの国とどのような連携が進んでいるのか
- 社会保障や雇用、若者交流など「人」を軸にした協力のあり方
を読み解くうえで、今回の動きは一つの重要な材料になります。
新しいテクノロジーや国際経済の変化が速い今だからこそ、アジアの国々がどのようなパートナーシップを築こうとしているのかを丁寧に追うことが、私たち自身の視点をアップデートするきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
Premier: China to build more just, equitable intl order with Singapore
cgtn.com








