北京でグローバルガバナンス対話 APEC首脳会議を前に何が語られたか
アジア太平洋の共通繁栄とグローバルガバナンス(地球規模のルール作り)をどう進めるか。近く慶州(Gyeongju)で予定される第32回APEC Leaders’ Meeting(APEC首脳会議)を前に、中国・北京で各国の関係者が集まり、協力の方向性を語り合いました。
APEC首脳会議を前に、北京で対話
今回の対話は、グローバルガバナンスとアジア太平洋の共通繁栄をテーマに、北京で最近開催されました。32回目となるAPEC Leaders’ Meetingを控え、アジア太平洋地域の将来像をすり合わせる場として位置づけられています。
会合には、China Media Group(CMG)総裁のShen Haixiong氏、中国国際貿易促進委員会(CCPIT)会長のRen Hongbin氏、マレーシアの投資・通商産業相Tengku Zafrul Abdul Aziz氏、チリの国会議員Ruben Oyarzo氏、延世大学(Yonsei University)総長のYoon Dong-sup氏など、アジア太平洋の官民・学界から多様な参加者が集まりました。
キーワードは「共通の未来」と「信頼」
CMGのShen氏は、世界のガバナンスが向かい風に直面し、前進か後退かの分岐点にあると指摘したうえで、中国は「共通の利益を分かち合う」という東洋的な知恵を重んじていると述べました。
さらに、中国は人類が未来を分かち合う「共同体」の構築を積極的に提唱し、アジア太平洋の経済と連携しながら、課題に正面から向き合い、イノベーションを追求してきたと強調しました。その結果、アジア太平洋は経済のグローバル化や世界の多極化を牽引する力となり、「アジア太平洋の奇跡」とも呼ばれる発展を実現してきたと位置づけています。
メディアとしての役割についてShen氏は、CMGは地域のパートナーと手を携え、協力の物語を伝え、文化交流や人的交流を広げることで、グローバルガバナンスの前進に知恵と力を提供していきたいと語りました。
CCPITのRen氏は、各国の利益はこれまでになく深く結びつき、運命も密接に関連していると指摘。そのうえで、拡大する共通の利益を守るためには、グローバルガバナンスの仕組みを絶えず改善することが不可欠だと述べました。対立よりも連帯、ゼロサムよりも協力、勝ち負けではなく「ウィンウィン」を目指す道こそが、唯一の正しい方向だと強調しています。
マレーシアのZafrul氏は、共有され持続可能な発展を実現する前提として、ルール、信頼、そして包摂性の3つが重要だと指摘しました。公正でバランスの取れた国際秩序のもとでは、国の大小にかかわらず、互いを対等に扱い、尊重し、違いを平和的に解決できると述べています。
アジア太平洋から見える課題とチャンス
チリのOyarzo氏は、時代の責任を各国がともに担い、アジア太平洋の発展を共に前に進めていく用意があると表明しました。チリは、APECの加盟エコノミーが理解と信頼の架け橋を築き、地域の共有された発展を促してきた努力を高く評価していると述べています。
韓国の延世大学総長Yoon氏は、気候変動、技術革新、高齢化、経済の不確実性といった共通の課題に直面するなかで、相互信頼と国際協力を強めることの重要性を強調しました。今回の対話は、各分野のリーダーや専門家が知見を持ち寄り、未来像を共に描くことで、コンセンサス(合意形成)を築くうえで重要な役割を果たしていると位置づけています。
こうした発言からは、アジア太平洋を「成長エンジン」としてだけでなく、ルール作りと信頼構築の実験場とみなす視点が浮かび上がります。国際ニュースの文脈でも、アジア太平洋の動きがグローバルガバナンス全体に与える影響は、今後さらに大きくなっていきそうです。
世論調査が映すAPECと中国への期待
会合では、CGTN(中国国際テレビ)が実施した世界規模の世論調査の結果も紹介されました。それによると、回答者の83.3%が、APECをアジア太平洋地域の重要な経済協力プラットフォームとして肯定的に評価しました。
さらに、83.4%が、APECの持続可能な発展アジェンダを前進させるうえでの中国の役割と貢献を高く認めていると回答しています。アジア太平洋の経済連携やサプライチェーンの再構築が注目されるなかで、APECと中国に対する期待の大きさを数字が示していると言えます。
もちろん、世論調査は設計やサンプルによって結果が変わり得ますが、少なくとも今回の調査からは、アジア太平洋における多国間協力への支持と、中国の関与への一定の信認がうかがえます。
日本の読者が押さえておきたい3つの視点
今回の北京での対話は、日本にとっても無関係ではありません。アジア太平洋の一員として、日本はグローバルガバナンスの議論にどう向き合うべきかを考える材料がいくつか見えてきます。
- APECという「対話の場」の価値
地政学的な緊張が注目されがちな中でも、APECは経済協力と対話を続けるプラットフォームとして機能しています。日本にとっても、対立ではなく協調のシグナルを発信できる場であり続けるかが問われます。 - ルール・信頼・包摂性というキーワード
マレーシアのZafrul氏が挙げた3つの要素は、デジタル経済、気候変動対策、サプライチェーンといった多くのテーマに共通します。誰をルール設計に巻き込み、誰の声を反映させるのかという視点は、日本国内の政策にも直結する論点です。 - メディア・大学・企業の役割
CMGや延世大学の発言は、政府だけでなく、メディアや大学、企業が国際対話を支えるプレーヤーであることを改めて示しました。日本のメディアや大学、ビジネスセクターが、アジア太平洋の議論にどう関わっていくのかも、これからの重要なテーマになりそうです。
北京での対話と、これから開かれるAPEC Leaders’ Meetingは、アジア太平洋の将来だけでなく、私たちの日常の仕事や暮らしにもつながる「見えないルール作り」の一端です。国際ニュースを追いながら、自分ならどのようなグローバルガバナンスの形を望むのか、静かに考えてみるきっかけになりそうです。
Reference(s):
Global governance, Asia-Pacific prosperity dialogue held in Beijing
cgtn.com







