古代シルクがつなぐ現代の絆──杭州から見た米国人の「変わる中国像」 video poster
杭州のシルク博物館で、ボルチモア姉妹都市協会の会長ジョン・ファセロ氏が、中国への見方の変化と厦門での青少年交流の思い出を静かに語りました。古代のシルクづくりの道具を前にしたその言葉は、「国と国」よりも「人と人」のつながりの大切さを思い出させます。
杭州・シルク博物館で出会った米国人の視線
中国・杭州にあるシルク博物館の展示室。何千年も前のシルクづくりの道具や、繊細な布地のサンプルが静かに並ぶ空間で、ジョン・ファセロ氏は記者の劉莫涵(Liu Mohan)さんに、自身の「変わりつつある中国像」について語りました。
ファセロ氏は、ボルチモア姉妹都市協会(Baltimore Sister Cities Association)の会長として活動し、今回が2度目の訪中です。初めて中国を訪れたときと比べ、街の雰囲気、人々との距離感、自分自身の受け止め方が変わってきていると感じているといいます。
古代のシルクづくりの道具を興味深そうに眺めながら、氏は「目の前にあるのは歴史の遺物でありながら、その背後には地域と地域、人と人を結んできた長い物語がある」という視点で展示を見つめていました。
厦門での青少年交流が残した「意味ある瞬間」
今回の杭州訪問とあわせて、ファセロ氏が繰り返し振り返っていたのが、中国・厦門での青少年交流の経験でした。ユー ス交流の現場で生まれた「意味のある瞬間」が、氏の中国へのまなざしを大きく変えたといいます。
厦門でのプログラムでは、アメリカと中国の若者たちが、同じ部屋で学び、議論し、日常生活について語り合う場が設けられました。英語と中国語が飛び交う中で、スマートフォンの写真を見せ合いながら、家族や友人、将来の夢について話す姿も見られたとされています。
こうした場面を通じて、ファセロ氏は「ニュースや統計ではなく、一人ひとりの顔や声を通じて中国を感じる」経験を重ねました。そこでは、教科書的な「他国」ではなく、悩みも希望も持つ等身大の若者たちが目の前にいたからです。
「距離」が「関係」に変わる瞬間
ファセロ氏にとって印象的だったのは、文化や言語の違いそのものではなく、それを乗り越えようとする若者たちの姿でした。互いの考えをじっくり聞こうとする態度や、わからない単語を辞書アプリで調べながら懸命に会話を続ける様子など、小さな行動の積み重ねが「距離」を「関係」に変えていったとされています。
その経験があるからこそ、杭州のシルク博物館で古代の道具を前にしたとき、氏は「過去」と「現在」、そして「未来の世代」を結ぶ一本の線を意識せずにはいられなかったのかもしれません。
古代シルクの道具が語る「つながりの歴史」
シルク博物館には、繭から糸を取り出す道具や、糸を紡ぎ布にしていくためのさまざまな器具が展示されています。ファセロ氏は、そうした道具が何世代もの職人に受け継がれ、長い時間をかけて地域間の交流を支えてきたことに思いを巡らせていました。
シルクは、単なる高級な布ではなく、遠く離れた土地をつなぐ「メッセンジャー」のような役割も担ってきました。人々はシルクを求めて旅をし、旅を通じて技術や文化、思想が行き交ってきました。ファセロ氏の視点から見ると、その歴史は、現在の姉妹都市交流や青少年交流にも重なって見えます。
古代の道具が象徴するのは、「時間を超えて続く対話」です。何千年も前の技術が今も展示として残り、その前で現代の市民や若者が感想を語り合う。その光景自体が、歴史と現在が穏やかにつながる瞬間といえるでしょう。
ボルチモア姉妹都市協会会長が見る「草の根の国際ニュース」
ボルチモア姉妹都市協会の会長として、ファセロ氏は長年、市民レベルの国際交流に関わってきました。杭州や厦門での体験は、そうした活動の延長線上にあります。
同協会のような団体が支える交流は、派手な出来事ではありませんが、参加した一人ひとりにとっては、その後の人生やキャリアの方向性を左右するほど大きな意味を持つことがあります。特に、10代・20代の時期に海外の同世代と出会う経験は、「世界」を具体的な人の顔として感じるきっかけになります。
シルク博物館での取材の場でも、ファセロ氏が繰り返し強調していたのは、「交流は一度きりのイベントではなく、続いていく関係のスタートラインだ」という視点でした。2度目の訪中でその思いはさらに深まりつつあるようです。
2025年の今、なぜ人と人のつながりが重要なのか
2025年の現在、世界のニュースは経済、安全保障、テクノロジーなど大きなテーマであふれています。その一方で、杭州のシルク博物館で行われたようなインタビューや、厦門での青少年交流のような出来事は、見出しにはなりにくい「小さなニュース」に見えるかもしれません。
しかし、ファセロ氏の体験は、次のような問いを私たちに投げかけています。
- 国際関係を考えるとき、「政策」だけでなく「市民同士の記憶や感情」をどれだけ意識できているか。
- ニュースで見る「中国」と、実際に出会う中国の人々との間に、どれほどギャップがあるのか。
- そのギャップを埋めるために、私たちはどのような交流や学びの場をつくることができるのか。
杭州のシルク博物館でのひとときは、古代から続くシルクの物語と、現代の市民交流の物語が静かに交差する場でした。そこから見えてくるのは、「中国をどう見るか」という一方向の視点ではなく、「お互いをどう理解し合うか」という双方向の問いです。
読者への小さな問いかけ
newstomo.com の読者の多くは、スマートフォンで世界のニュースを追いながら、同時に自分の日常や仕事とも向き合っている世代です。忙しい毎日の中で、杭州の博物館や厦門での青少年交流は、遠くの出来事のように感じられるかもしれません。
それでも、「かつてシルクロードが地域と地域をつないだように、今、自分の周りにはどんな国際的なつながりの入り口があるのか」と一度立ち止まって考えてみることには意味があります。留学生との会話、オンラインでの共同プロジェクト、旅行先での偶然の出会い──どれもが未来の「意味ある瞬間」になるかもしれません。
古代シルク、現代の姉妹都市交流、そして一人の米国人が語る「変わる中国像」。杭州のシルク博物館で生まれた物語は、スマートフォンの画面の向こうでニュースを読む私たちとも、静かにつながっています。
Reference(s):
cgtn.com








