中国・広東省で世界最大フルイオン加速器HIAF試運転完了 2025年末に初実験へ
【国際ニュース】中国南部・広東省で建設が進む世界最大のフルイオン加速器「高強度重イオン加速器施設(HIAF)」が、今週、ビーム試運転のコミッショニング(調整運転)を完了しました。年内にも初の科学実験を予定するこの大型施設は、核物理学や宇宙、エネルギー研究の新たな基盤になりそうです。
広東省・惠州の国家級プロジェクト「HIAF」とは
HIAFは、中国科学院近代物理研究所(IMP)が主導する国家レベルの科学技術インフラで、中国南部の広東省惠州市に建設されています。IMPによると、HIAFは「世界最大のフルイオン加速器」と位置づけられており、重イオンと呼ばれる重い原子のイオンを高エネルギーで加速・衝突させることで、原子核の極限状態を探ることを目指します。
建設工事は2018年12月に始まりました。これまでに導入された大型装置は6,000点を超え、構成部品は約500万個、配管の総延長は100万メートルを超えるとされています。その規模だけを見ても、HIAFが非常に複雑で大規模な国際級の研究施設であることがわかります。
デジタルツインで工期を大幅短縮
IMPの説明によると、研究チームは「デジタルツイン」と呼ばれる新しい工学モデルを全面的に導入しました。デジタルツインは、現実の設備を仮想空間に忠実に再現し、設計や組み立て、運転条件を事前にシミュレーションできる技術です。
このモデルを用いた結果、HIAFの設置期間は通常2〜3年かかるところ、約8カ月にまで短縮されたといいます。複雑な大型加速器を短期間で立ち上げられた背景には、デジタル技術に支えられた精密な工程管理があったといえそうです。
2025年末までに初の科学実験へ
今回完了したのは、ビームを実際に流して性能や安定性を確認する「ビーム試運転」の段階です。IMPは今後もビーム性能の評価試験を続け、2025年末までにHIAFで初の科学実験を行う計画だとしています。その後、正式な技術検収を経て、本格稼働を目指す流れです。
2025年12月現在、この「年末までに初実験」というタイムラインはHIAFプロジェクトの大きな節目となっています。
世界最高レベルの重イオンビームと質量測定
HIAFが本格的に稼働すると、世界最高レベルのパルス強度を持つ重イオンビームを提供できるとされています。また、多機能型の高精度な核質量分析装置(核質量スペクトロメーター)を備えることで、原子核の質量や構造をこれまで以上に正確に測定できると期待されています。
こうした性能を背景に、HIAFは次のような幅広い研究分野の基盤施設として位置づけられています。
- 原子核の安定性の限界や新しい核種の探索
- 星の内部や超新星爆発など、核反応が関わる宇宙物理プロセスの解明
- 将来の核エネルギー技術の高度化・安全性向上に向けた基礎研究
- 医療、材料、宇宙線模擬実験など、多分野への応用研究
施設・データ・人材を共有する国際プラットフォームに
IMPによると、HIAFは単なる国内向けの加速器ではなく、施設やサービス、データ、人材を共有する「開かれたプラットフォーム」として運用する方針です。世界各地の研究者や研究チームに門戸を開き、関連分野の共同研究の拠点になることを目指しています。
大型加速器は一国だけで完結するのではなく、国際的な共同利用によって科学的成果を最大化していく傾向があります。HIAFも、原子核・宇宙・エネルギーといった基幹分野で、世界の研究ネットワークをつなぐハブの一つになっていく可能性があります。
日本の読者にとっての意味
日本でも、加速器を用いた物質・生命・宇宙の研究は重要な柱となっています。中国南部のHIAFのような大型施設が新たに動き出すことは、アジア全体の研究環境の厚みが増すことを意味します。
国際ニュースとしての視点に加えて、「どのような基礎研究のインフラが世界で整いつつあるのか」を知ることは、自国の科学技術政策やキャリアの選択を考えるうえでもヒントになります。HIAFの本格稼働とそこで生まれる成果が、今後どのように国際社会に共有されていくのか、引き続き注目したい動きです。
Reference(s):
cgtn.com







