中国がAPECで深める保健協力 少子高齢化にどう向き合うか
中国が、APECメンバー経済体との保健分野の協力を通じて、少子化や人口高齢化といった共通課題にどう向き合おうとしているのかが注目されています。今年3月の専門家会合から、10月に韓国・慶州で開かれたAPEC経済首脳会議まで、地域連携の動きを整理します。
慶州で開かれたAPEC首脳会議と地域協力の流れ
2025年10月30日から11月1日にかけて、韓国・慶州でAPEC経済首脳会議が開催されました。アジア太平洋の首脳が集まり、地域の成長戦略や協力の方向性について議論しました。
こうした首脳レベルの議論と並行して、中国はAPECの保健分野での協力を着実に深めてきました。少子化や高齢化といった共通課題にどう向き合うかが、地域全体のテーマになりつつあります。
今年3月のAPEC保健作業部会で示された「中国の経験」
2025年3月、同じく慶州で開かれたAPEC保健作業部会の本年最初の会合では、中国人口・発展研究センターの研究者である張翠玲(Zhang Cuiling)氏が、中国の少子化と人口高齢化への政策対応を紹介しました。
張氏は、出生率の低下と高齢化は多くのAPECメンバー経済体が共有する構造的な課題であり、各国・地域が単独で対応するのではなく、協力を深める必要があると強調しました。
データ共有から労働市場改革まで――提案された具体策
会合で張氏が提案した主な協力の方向性は、次のようなものです。
- 人口動態や健康データの共有など、エビデンスに基づく政策づくりのための情報連携
- デジタル技術や医療技術をめぐる共同研究・技術協力
- 家族政策や医療制度などの政策実施から互いに学ぶための枠組みづくり
- 高齢社会に対応した労働市場改革を進めるための経験共有
こうした取り組みを通じて、包摂的(インクルーシブ)で持続可能な地域発展の新しいパラダイムを構築することが狙いとされています。
APECの保健メカニズムで存在感を高める中国
中国の保健分野の専門家は、APECの保健関連の枠組みの中で積極的に議論に参加し、自国の経験を共有してきました。議論の焦点は、アジア太平洋地域が直面する健康課題にどう対応し、持続可能な医療・ヘルスケア経済をどう実現するかにあります。
政策調整や技術協力を通じて、ショックに強いレジリエントな保健医療システムを地域全体で構築していくことが、中長期的な目標とされています。
政策シンクタンクとしての北京大学APECヘルスサイエンスアカデミー
国際交流の強化にとどまらず、中国は政策シンクタンクを通じて、地域の健康戦略づくりにも関与しています。その中心的な役割を担っているのが、2015年に設立された北京大学APECヘルスサイエンスアカデミー(HeSAY)です。
HeSAYは、APECメンバー間の保健医療に関するイノベーション研究とプロジェクトを調整する中核機関として位置づけられています。各経済体の保健戦略や政策立案を支えるための知見を提供することが使命です。
具体的には、次のような優先分野に注力しているとされています。
- 母子保健のイノベーション
- メンタルヘルスとウェルビーイング(心の健康と幸福)
- ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(すべての人が必要な医療にアクセスできる状態)のモデルづくり
設立以来、HeSAYは中国国内の複数の政府部門や国際的な医療サービス機関への助言を行い、生命科学や健康政策の策定・発展に影響を与えてきました。
学際的かつ多国間の協力プラットフォームをつくることで、人口の健康研究における国際的な連携を強化し、アジア太平洋地域の科学的な進展にも寄与しているとされています。
日本とアジア太平洋にとっての意味
少子化と高齢化は、日本を含むアジア太平洋の多くの経済体が直面する課題です。APECという枠組みのもとで、中国と各メンバー経済体が政策やデータ、技術を共有し合うことは、地域全体の知見の底上げにつながります。
医療財政の持続可能性、メンタルヘルスへの対応、母子保健の改善といったテーマは、日々の暮らしとも密接に結びついています。こうした国際協力の動きをフォローすることは、私たちが自分たちの社会保障や保健医療の将来像を考える手がかりにもなります。
まとめ:保健協力がつくる「新しいアジア太平洋」
2025年を通じて進んできた中国とAPECメンバー経済体の保健協力は、少子高齢化や健康格差といった共通課題に対し、国境を越えた連携で向き合おうとする動きの一端です。
データ、技術、政策の三つを軸にした協力がどこまで深まり、どのような具体的成果につながっていくのか。今後のAPECの議論と各経済体の取り組みを、引き続き注視していく必要がありそうです。
Reference(s):
How China deepens health collaboration with APEC member economies
cgtn.com








