中国の有人宇宙船「神舟21号」打ち上げ成功 マウス実験で長期滞在に挑む video poster
2025年10月31日に打ち上げられた中国の有人宇宙船「神舟21号」が、宇宙ステーションへのドッキングと乗組員の長期滞在ミッションに乗り出しました。国際ニュースとしても注目されるこの有人宇宙飛行は、宇宙でのマウス飼育実験などを通じて、人類の長期宇宙滞在の可能性を探る重要な一歩となります。
神舟21号が打ち上げ成功 中国の有人宇宙計画は新段階へ
中国有人宇宙工程弁公室(China Manned Space Agency)は、神舟21号の打ち上げ成功を正式に発表しました。宇宙船は中国北西部にある酒泉衛星発射センターから、長征2号Fロケットに載せられて2025年10月31日23時44分に打ち上げられました。
打ち上げから約10分後、神舟21号はロケットから分離し、予定された軌道に入ったとされています。乗組員3人の状態は良好で、宇宙船は自律制御による「快速ランデブー方式」で中国の宇宙ステーションに接近し、天和コアモジュール前方ポートへのドッキングに成功しました。
このミッションは、中国の宇宙ステーション計画における「応用・発展段階」で6回目の有人飛行であり、中国全体の有人宇宙計画としては37回目、長征ロケット・シリーズとしては604回目の飛行ミッションにあたります。宇宙ステーションの建設フェーズを終え、本格的な運用と科学利用へと重心が移っていることがうかがえます。
3人乗組員の役割と宇宙での任務
神舟21号には3人の宇宙飛行士が搭乗しています。いずれも中国の有人宇宙計画で重要な役割を担うメンバーです。
- Zhang Lu 氏:宇宙船パイロット兼ミッション司令官
- Wu Fei 氏:フライトエンジニア(技術・システム運用担当)
- Zhang Hongzhang 氏:ペイロード(実験装置)スペシャリスト
3人は宇宙ステーションへ移動したのち、約半年間にわたり共同生活をしながら、科学実験や設備の保守作業、船外活動など、多岐にわたる任務をこなします。
6人態勢での引き継ぎ 宇宙での「交代劇」
神舟21号は、宇宙ステーションに先に滞在している神舟20号の乗組員と合流し、一時的に6人態勢での運用を行います。両ミッションの乗組員が約5日間、同じステーション内で生活しながら、システム運用や実験プロジェクトの引き継ぎを進めます。
このような「重なり期間」を設けることで、地上との調整だけでは難しい細かなノウハウや、日々の運用のコツを直接伝えることができます。国際宇宙ステーションでも行われてきた方法であり、中国の宇宙ステーションでも、長期安定運用に向けた重要なステップといえます。
半年間のミッション マウス4匹の飼育実験に注目
今回の神舟21号ミッションで特に注目されているのが、宇宙空間でのマウス飼育実験です。乗組員は軌道上で4匹のマウスを育てる計画で、中国としては初めての本格的な小動物長期飼育実験となります。
この実験の目的は、長期間の微小重力環境が哺乳類の生命維持や健康、さらに生殖機能にどのような影響を与えるのかを調べることです。人類が将来、月や火星などで長期滞在することを考える上で、「宇宙で健康に暮らし、次の世代を残せるのか」という問いは避けて通れません。そのため、マウスというモデル生物から得られる知見は、長期有人探査の基盤づくりに直結します。
あわせて、宇宙ステーション内の生命維持システムに関する新技術の検証も行われます。限られた資源で空気や水、食料を循環させる技術は、宇宙だけでなく地上の環境・エネルギー問題にも応用可能な分野です。
船外活動とデブリ対策 「安全に長く滞在する」ための仕事
神舟21号の乗組員は、科学実験に加えて、宇宙ステーションの安全運用を支える作業も担います。予定されている主な任務は次の通りです。
- 船外活動(スペースウォーク)の実施
- 宇宙ゴミからステーションを守るための防護装置の設置
- モジュール内部・外部機器の試運転や保守・点検
近年、地球周回軌道の宇宙ゴミ(スペースデブリ)は増加傾向にあり、宇宙ステーションへの衝突リスクも課題となっています。デブリ防護装置の整備や位置調整のための運用は、「長く、安全に」宇宙に滞在する時代に欠かせない仕事です。
中国の宇宙ステーション計画の中での位置づけ
中国の宇宙ステーション計画は、建設フェーズから応用・発展段階へと移行したとされています。神舟21号のミッションは、この「運用フェーズ」の日常化を象徴するものです。
ポイントを整理すると、次のような位置づけになります。
- 応用・発展段階での6回目の有人飛行
- 中国の有人宇宙計画全体で37回目の飛行ミッション
- 長征ロケット・シリーズとして604回目の打ち上げ
回数を重ねることで、有人飛行やドッキング、長期滞在が「特別なイベント」から「計画的に繰り返される運用」に変わりつつあることがわかります。宇宙ステーションを長期にわたり活用し続ける体制づくりが進んでいると言えるでしょう。
日本の読者が押さえておきたいポイント
日本からこのニュースを見るとき、単に「打ち上げ成功」という事実以上に、いくつか注目すべき視点があります。
- 長期有人滞在の時代:半年単位で人が滞在し、交代し続ける宇宙ステーション運用は、宇宙空間を「一時的な探検」から「継続利用の場」に変えつつあります。
- ライフサイエンスの前進:マウス飼育実験は、人間の健康や生殖にかかわるデータをもたらし、将来の月・火星探査構想の現実味を高める可能性があります。
- 技術とルールの両立:デブリ対策や長期運用技術の進展は、今後の国際的な宇宙ルールづくりや協力のあり方にも影響しうるテーマです。
宇宙開発は各国がしのぎを削る分野である一方で、災害監視や通信、気候観測など、私たちの日常生活を支える「インフラ」でもあります。中国の有人宇宙計画の進展は、アジア、そして世界全体の宇宙利用の姿を考える上で、無視できない要素になりつつあります。
まとめ 神舟21号が示す「長期滞在」時代の現実味
- 2025年10月31日、中国の有人宇宙船「神舟21号」が長征2号Fロケットで打ち上げられた
- 宇宙船は天和コアモジュール前方ポートにドッキングし、乗組員3人が半年間の滞在ミッションを開始
- 中国として初の本格的なマウス4匹の宇宙飼育実験を実施し、長期的な人間の生存・生殖の可能性を探る
- 船外活動やデブリ防護装置の設置、ステーション内部・外部機器の保守・点検など、安全な長期運用に向けた作業も担当
- 有人宇宙計画通算37回目、長征ロケット通算604回目のミッションとして、宇宙ステーションの本格運用フェーズを象徴する飛行となっている
半年にわたる神舟21号のミッションは、今後の宇宙探査や国際協力のあり方に静かな変化をもたらすかもしれません。アジア発の宇宙開発の動きが、人類全体の宇宙利用の未来にどうつながっていくのか。これからの続報にも注目していきたいところです。
Reference(s):
China's Shenzhou-21 crewed space mission makes successful launch
cgtn.com








