中国の人中心スマートシティと世界都市デー2025
2025年の世界都市デーでは、テーマとして「人を中心としたスマートシティ」が掲げられ、急速に進む都市のデジタル化をいかに住民の暮らしに結びつけるかが改めて注目されました。中国が進めてきたスマートシティの取り組みは、このテーマを具体的に考えるヒントを与えてくれます。
世界都市デーと「人を中心としたスマートシティ」
世界都市デーは毎年10月31日に設けられ、都市化がもたらす課題と可能性に世界の関心を集める国際的な取り組みです。2025年のテーマである「人を中心としたスマートシティ」は、デジタル技術が単に最新であるだけでなく、住民のニーズにどう応えるのか、公共サービスをどう良くするのかに焦点を当てています。
中国の経験を見ると、スマートシティは技術の競争というより、デジタル基盤とガバナンスを組み合わせて、より安全で効率的で住みやすい都市をつくる試みとして位置づけられています。
国家レベルで進むスマートシティ戦略
中国では、第14次五カ年計画(2021〜2025年)の中で、スマートシティとデジタル経済が国家戦略として明確に位置づけられています。この計画では次のような方向性が示されています。
- デジタル経済の加速
- 情報ネットワークインフラの拡大
- 国家ビッグデータセンター・システムの整備
これに並行して、住宅・都市農村建設部は「新型スマートシティ」の概念を打ち出し、評価指標の整備や、都市情報モデリング(CIM)と呼ばれるデジタル基盤の統合を推進してきました。CIMは都市のインフラや施設の情報を一元的に管理するためのプラットフォームで、都市計画や運営の高度化を支える基礎となります。
都市レベルの実践:北京・杭州・深圳のケース
北京:都市運営センターとスマート医療
北京では、交通、電力や水道といったライフライン、災害・事故対応など、都市運営に関わるリアルタイムデータを統合した「城市運行管理センター(City Operation Management Center)」が構築されています。北京市当局によれば、このプラットフォームによって、交通のきめ細かな制御、緊急時の迅速な対応、公共サービスの連携が可能になっているとされています。
医療分野では、統一された電子カルテや人工知能(AI)を用いた診断支援の導入が進められており、住民がよりスムーズに医療サービスへアクセスできる環境づくりに貢献しています。また、北京大興国際空港のような地域ではスマートエネルギー網が導入され、エネルギー利用の効率化と炭素排出の削減が図られています。
杭州:AIが支える「City Brain」
杭州では、民間の技術セクターが中心となって開発した「City Brain」プラットフォームが、都市運営の中枢として機能しています。AIとリアルタイムデータを用いて、交通流の最適化、緊急対応、さまざまな都市サービスの運営が行われており、渋滞の緩和や行政サービスの手続き簡素化などにつながっているとされています。
こうした取り組みは、単に信号制御や監視カメラの高度化にとどまらず、住民が移動しやすく、行政サービスにアクセスしやすい都市環境をつくることを目指したものといえます。
深圳:スマートシティの実証フィールド
深圳は、モノのインターネット(IoT)、クラウド型インフラ、産業向けアプリケーションを組み合わせたスマートシティの実証フィールドとして位置づけられてきました。各種のセンサーやネットワークを通じて集められたデータが、産業や都市サービスの高度化に生かされているとする研究もあります。
北京、杭州、深圳といった都市の事例は、国家レベルの方針が、現場レベルで具体的なサービスやインフラとして形になっていることを示しています。
一帯一路と国際標準:世界に広がるスマートシティ協力
国際的には、中国は一帯一路の枠組みの下で、スマートシティ関連の技術やプラットフォームを各国・地域へ展開してきました。中国企業は海外のスマートシティ案件にも積極的に関わり、技術標準や相互運用性(インターオペラビリティ)の向上を目指しています。
また、中国が主導または関与する標準化の動きは、世界のスマートシティ議題や、その基盤となるデータ・ガバナンスの枠組みに影響を与えています。どのような形式でデータを集め、共有し、保護するのかといったルールづくりは、今後の都市づくりを左右する重要なテーマです。
技術から人へ:包摂的な都市をどう描くか
世界都市デーが示すように、焦点は「どんな技術を導入するか」から「その技術が住民の暮らしにどう役立つか」へ移りつつあります。中国のスマートシティの経験は、デジタルインフラとガバナンスを組み合わせて、イノベーションと包摂性の両立を図ろうとする試みとして捉えることができます。
北京の電子カルテやAI診断支援、杭州のCity Brain、深圳のIoT実証などは、いずれも都市の課題に対して、データと技術で解決策を模索する具体例です。その根底には、住民がより安全で便利な都市生活を送れるようにするという、人を中心とした視点があります。
今後、世界の各都市がスマートシティを進めるうえで問われるのは、次のような点かもしれません。
- デジタルインフラの整備を、住民サービスの質の向上とどう結びつけるか
- データ活用とプライバシー保護のバランスをどう取るか
- 技術へのアクセス格差をどう縮め、誰一人取り残さない都市づくりを実現するか
世界都市デーをきっかけに、中国のスマートシティの経験を一つの参照点としながら、自分たちの暮らす都市にどのようなデジタルサービスやルールが必要なのかを考えてみることが求められています。
Reference(s):
China's experience and global vision for people-centered smart cities
cgtn.com








