第32回APECで習近平主席が語った「包摂的グローバル化」と共同体ビジョン
10月末、韓国・慶州で開かれた第32回APEC経済首脳会議(APEC Economic Leaders' Meeting)の第1セッションで、中国の習近平国家主席が演説を行い、「すべての人に恩恵をもたらす包摂的な経済のグローバル化」と「アジア太平洋共同体」の構築に向けた5つの提案を示しました。本記事では、そのメッセージの意味を日本語でかみ砕いて整理します。
第32回APEC経済首脳会議とは
アジア太平洋経済協力会議(APEC)は、アジア太平洋地域の21のメンバーが参加する経済協力の枠組みで、毎年、首脳級が集まるAPEC経済首脳会議が開かれます。2025年は韓国・慶州が開催地となり、世界経済の減速や地政学的な緊張が続くなかでの開催となりました。
今回の会議でも、貿易、投資、デジタル経済、気候変動など、アジア太平洋の成長を左右するテーマが幅広く議論されています。その第1セッションで行われたのが、習近平国家主席の演説です。
習近平国家主席が強調した2つのキーワード
限られた情報からわかるのは、演説の柱が次の2つのキーワードに置かれていたという点です。
- 「普遍的に利益をもたらす包摂的な経済のグローバル化」
- 「アジア太平洋共同体」の構築
習主席は、経済のグローバル化が一部の国や一部の層だけではなく、より多くの人々と地域に利益を行き渡らせるべきだと訴え、そのための5つの提案を示しました。また、アジア太平洋を対立や分断の場ではなく、協力と共通の発展を追求する「共同体」として位置づけるビジョンを提示しています。
「包摂的なグローバル化」とは何か
包摂的(インクルーシブ)な経済のグローバル化という考え方は、近年の国際経済議論でも頻繁に登場します。格差や分断を深めるのではなく、次のような方向性を重視する考え方です。
- 発展段階の異なる国や地域が、貿易や投資を通じて互いに利益を得られる仕組みづくり
- 中小企業やスタートアップ、地方経済も国際連携のメリットを享受できる環境整備
- デジタル化やグリーン転換による新たな成長機会を広く共有すること
習主席の提案も、こうした「誰も取り残さないグローバル化」をアジア太平洋からどう具体化していくか、という問題意識に基づいていると見ることができます。
アジア太平洋共同体というビジョン
もう一つのキーワードである「アジア太平洋共同体」は、この地域を単なる市場やサプライチェーンの集まりではなく、共通のルールと長期的な信頼関係で結びついた「コミュニティ」として捉える発想です。
アジア太平洋は、世界の成長センターである一方で、貿易摩擦や安全保障をめぐる緊張も抱えています。そうしたなかで「共同体」を掲げることは、次のようなメッセージとして読むこともできます。
- 開放的で公正な貿易・投資環境を維持・発展させること
- 対立やブロック化ではなく、対話と協力による課題解決を重視すること
- 気候変動や感染症、デジタル経済のルールづくりなど、国境を越える課題で連携すること
5つの提案が投げかける問い
今回の演説では、包摂的なグローバル化とアジア太平洋共同体の実現に向けた「5つの提案」が示されたとされています。詳細は今後、関連文書や各メンバーの政策対応を通じて明らかになっていくと見られますが、少なくとも次のような問いを私たちに投げかけています。
- 成長と格差是正をどう両立させるのか
- グローバル・サプライチェーンの安定と安全保障上の懸念をどうバランスさせるか
- 脱炭素やデジタル化といった「新しい投資分野」をアジア太平洋全体でどう育てるか
日本とアジア太平洋にとっての意味
日本にとっても、APEC経済首脳会議で交わされる議論は無関係ではありません。輸出入、企業の海外展開、観光、スタートアップの成長など、多くの分野がアジア太平洋のルールや雰囲気の影響を受けます。
包摂的なグローバル化やアジア太平洋共同体というビジョンは、日本の政策やビジネス戦略、そして私たち一人ひとりの働き方・暮らし方にも直結しうるテーマです。今後、各メンバーがどのように提案を受け止め、国内外の政策に反映させていくのかを丁寧に追っていく必要があります。
これからを考えるための視点
10月の慶州での演説は、アジア太平洋の将来像をめぐる大きな議論の一部にすぎません。ただ、「誰のための成長か」「どのような地域秩序を目指すのか」という問いをあらためて突きつけるきっかけになっています。
ニュースを追うときには、次の3つの視点を意識してみると、APECやアジア太平洋の動きがより立体的に見えてきます。
- キーワード(包摂、共同体、協力など)が、各国・地域の具体的な政策とどう結びついているか
- 日本企業や地域経済にとってのリスクとチャンスがどこにあるのか
- 自分自身の仕事や生活と、アジア太平洋のルールづくりがどこでつながっているか
第32回APEC経済首脳会議での習近平国家主席のメッセージは、アジア太平洋のこれからを考えるうえで、重要な材料の一つとなりそうです。
Reference(s):
Xi's key quotes at Session I of 32nd APEC Economic Leaders' Meeting
cgtn.com








