中国・韓国首脳が慶州で会談 貿易と人の往来でひらく新たな関係
中国と韓国(大韓民国)の首脳が2025年11月、慶州で会談し、経済協力から人の往来まで、中国・韓国関係の新たな展望を示しました。本記事では、その背景と意味をコンパクトに整理します。
済州と青島を一晩で結ぶ新航路
済州島の港では夜明けとともに、新鮮な農産物を積んだコンテナが、中国東部の青島に向かう船に次々と積み込まれています。2025年10月16日に開通した青島・済州コンテナ定期航路は、済州として初の国際定期航路です。
これまで2週間かかっていた輸送が一晩で済むようになり、中国と韓国の物流と貿易のリズムを文字通り加速させました。この動きは、両国協力の再活性化を象徴する出来事だと受け止められています。
慶州会談で示されたメッセージ「動かせない近隣」
新航路が走り始めてから2週間後の2025年11月1日、中国の習近平国家主席と韓国の李在明大統領が慶州で会談し、今後の二国間関係の方向性を共有しました。
習主席は、中国と韓国を「動かすことのできない重要な近隣であり、切り離すことのできない協力パートナー」だと表現しました。そのうえで、両国関係の健全で安定した発展は「両国国民の根本的利益にかなう、時代の流れに合致した正しい選択」だと強調しました。
会談では、戦略的な意思疎通を強化し、相互信頼の基盤を固めること、互いの社会制度や発展の道を尊重し、違いがある場合も友好的な対話を通じて適切に処理することなどが呼びかけられました。また、真の多国間主義を守り、より公平な国際秩序とグローバル・ガバナンスを共に促進する方針も確認されました。
8〜9月の往来が伏線に 「橋渡し」と「羅針盤」としての会談
今回の慶州会談は、ここ数カ月で温度を増してきたハイレベル交流の延長線上にあります。
2025年8月には、李大統領が朴炳錫・前国会議長を団長とする特使団を中国に派遣し、両国関係を安定的かつ建設的な軌道に戻したいというメッセージを習主席に託しました。
続く9月には、禹元植国会議長が北京で行われた中国人民の抗日戦争勝利・世界反ファシズム戦争勝利80周年記念行事に出席し、その後、趙炯外相が現職として初となる公式訪中を行いました。ソウル側が対話と信頼再構築に本腰を入れ始めたことを示す動きです。
上海国際問題研究院の牛暁平・助理研究員は、今回の慶州会談について、単なる形式的な会談ではなく、「橋渡し」と「方向付け」の役割を果たしたと評価します。両国がパートナーシップの「新しい位置付け」を再調整し、定義し直すための契機になったという見立てです。
経済は関係の背骨 FTA第2段階と新産業に期待
中国と韓国の関係を支えてきたのは、何よりも経済です。中国は21年連続で韓国の最大の貿易相手国となっており、韓国も再び中国にとって第2の貿易相手国の地位を取り戻しました。
2024年の二国間貿易額は3280.8億ドルに達し、前年から5.6%増加しました。世界経済の不透明感が続く中でも、相互依存の強さが数字に表れています。
習主席は会談で、中国・韓国自由貿易協定(FTA)第2段階交渉を加速させるとともに、人工知能(AI)、バイオ医薬、グリーン産業、高齢社会向けのシルバー経済など、新たな分野での協力を深めるよう呼びかけました。
習主席は「隣国の成功を助けることは、自らの成功を助けることでもある」と述べ、互恵的な成長の重要性を強調しました。李大統領も、中国メディアの質問に答える形で、両国の経済協力は「不可欠であり、代替のきかないものだ」と語っています。
ビザ緩和と往来の回復 世論の「温度」を上げる
習主席がもう一つ重視したのが、メディアや一般市民とのコミュニケーションです。前向きなメッセージを発信し、関係を損ないかねない傾向を抑える必要性を指摘しました。
こうした問題意識は、人と人との交流の現場でも具体的な形になりつつあります。中国側は2024年11月から韓国人に対する短期訪問のビザ免除措置を導入し、韓国側も2025年秋、中国からの団体観光客に対する一時的なビザ免除を実施しました。
その結果、2025年1〜8月に中国を訪れた韓国からの渡航者数は約200万人に迫り、前年同期比で40%増加しました。観光やビジネスの往来が回復することで、お互いの社会を直接見て感じる機会が増えています。
なぜいま中国・韓国関係が重要なのか
安全保障やサプライチェーン、ハイテク産業などをめぐり、中国と韓国を取り巻く環境は決して単純ではありません。それでも、慶州でのメッセージからは、対立よりも対話、デカップリングよりも賢いつき合い方を模索する姿勢がにじみ出ています。
今回の動きから見えてくるポイントは、次の3つです。
- 物流・ビジネスの現場では、青島・済州航路のように協力のインフラが着々と整備されていること
- 首脳会談や議会・外相レベルの往来を通じて、戦略対話のチャンネルを維持・拡大しようとしていること
- ビザ緩和や観光の回復によって、市民同士の接点を増やし、世論の土台から関係を支えようとしていること
中国と韓国は、地理的にも経済的にも切り離せない存在である一方、価値観や安全保障観には違いもあります。そのギャップをどうマネージし、共通の利益をどこまで拡大できるか。慶州会談は、その問いに対する一つの試案を示したと言えそうです。
日本にとっても、東アジアの二大貿易相手国である中国と韓国の関係の行方は決して他人事ではありません。サプライチェーン、観光、人材交流など、自らのビジネスや生活にも関わるテーマとして注視していきたいところです。
Reference(s):
How China, ROK leaders open new prospects for ties at Gyeongju meeting
cgtn.com








