国際ニュース:中国の第42次南極観測隊が出発 氷床下の湖で深層掘削へ
中国の第42次南極観測隊が上海を出港し、南極氷床下の湖での深層掘削など大規模な科学ミッションに向かっています。国際ニュースとしても、気候変動と生命の起源を探る重要な一歩です。
中国の第42次南極観測隊が出発
中国の関係機関によると、第42次南極観測隊は土曜日に上海を出港しました。今回の観測には、中国本土の80以上の機関から集まった500人超のメンバーが参加し、タイ、チリ、ポルトガルのほか、香港やマカオの特別行政区など10以上の国と地域の研究者も合流します。
観測隊は2026年5月までに任務を終え、中国へ帰国する計画です。およそ一年半にわたり、南極大陸内陸や沿岸で多様な観測・実験が行われる見込みです。
氷床下の湖で初の深層掘削へ
今回の目玉は、南極内陸の分厚い氷床の下にある湖(氷床下湖)での科学掘削です。観測隊長であり主任科学者の魏富海氏によると、中国が南極内陸の湖で本格的な掘削実験を行うのは初めてです。
氷床下湖は、高圧・低温・暗闇・栄養が乏しいといった極限環境でありながら、独自の生態系を育み、氷床の歴史や気候変動の痕跡を保存しているとされています。このため、堆積物の成り立ちや生命の進化を理解するうえで、世界の研究者が注目してきました。
観測隊は、中国が独自に開発した温水掘削装置と熱融解型ドリルを用いて、厚さ3,000メートルを超える氷をクリーンに掘り進み、氷や水、堆積物の試料を採取する計画です。外部からの汚染をできるだけ避けることで、湖の環境そのものに近い情報を得ることが狙いです。
秦嶺基地:グリーン電力で動く新拠点
中国の秦嶺基地は2024年2月7日に運用を開始した、比較的新しい南極観測拠点です。今回の観測では、この基地の高度なエネルギー・運用システムをさらに整備します。
建設時には、風力、太陽光、水素、蓄電を組み合わせたハイブリッド型の再生可能エネルギーシステムが初めて導入されました。これにより、年間100トン以上の化石燃料使用が削減されているとされ、極地観測における環境負荷の低減にもつながっています。
極夜で風も日射もない時間帯でも、基地は蓄えたグリーン電力だけで約2時間半運営できる設計です。過酷な環境でどこまで安定運用できるかは、今後の極地や遠隔地でのエネルギーインフラを考えるうえでも重要な実証になります。
さらに、秦嶺基地の倉庫では、極地ロボットとAI(人工知能)を組み合わせたスマート管理システムの導入が進められています。無人で物資の入出庫や棚卸しを行い、物流効率を約40%高めることを目指しています。
雪上車やけん引用装置など新技術の実証
今回の南極観測では、厳しい環境での運用を見据えた新技術の実証も行われます。中核となる機材には、中国が独自に開発・製造したSnow Leopard 6×6車輪式車両や、高出力の完全油圧式けん引用装置THT550などが含まれています。
これらの車両や装置は、氷床上での長距離移動や重機材の輸送を支える存在です。南極という極限環境で性能を検証することで、今後の観測活動の安全性と効率性の向上が期待されます。
「海洋強国」と国際協力という二つの軸
中国北極・南極事務局の龍巍副局長は、南極を理解し、保護し、平和的に活用する能力を高めることは、中国が海洋分野での力を高めるうえで欠かせないと説明しています。同時に、南極研究を通じて人類の未来を共有する共同体づくりに貢献したいという立場も示しました。
今回の観測隊に複数の国と地域から研究者が参加していることは、南極が特定の国のものではなく、人類全体の科学的財産として位置づけられていることをあらためて示しています。
私たちにとっての意味:3つの視点
日本にいる私たちにとっても、この国際ニュースは決して遠い世界の話ではありません。今回の南極観測がもたらす可能性を、次の3つの視点から見てみることができます。
- 気候変動の理解:氷床や氷床下湖の堆積物の分析は、過去の気温変動や降水パターン、海面上昇の履歴を読み解く手がかりになります。将来の気候リスクを評価するうえで重要なデータとなり得ます。
- 生命の境界を探る研究:高圧・低温・暗闇といった極限環境でどのような生命が生きられるのかを調べることは、地球上の生命の多様性を理解するだけでなく、地球外生命の可能性を考える際のヒントにもなります。
- グリーン技術とロボティクスの実証:秦嶺基地での再生可能エネルギーシステムやロボット・AIの活用は、災害時や遠隔地でのエネルギー供給・物流のあり方を考えるうえでも応用が期待されます。
観測隊はこれから2026年5月まで南極での活動を続ける予定です。氷床下湖の掘削や秦嶺基地での実証実験の進展は、今後も国際ニュースとして注目されそうです。
Reference(s):
China kicks off 42nd Antarctic expedition with new drilling equipment
cgtn.com








