莫高窟の壁画が消えた日 タイムスリップ物語が映す戻るということ video poster
卒業公演を目前に控えた若者が訪れた莫高窟で、一枚の壁画が忽然と姿を消します。過去へのタイムスリップのきっかけとなったその壁画は、どこへ行ってしまったのでしょうか。物語の断片から、現代と過去、そしてアートをつなぐテーマが浮かび上がってきます。
卒業公演前夜、消えた莫高窟の壁画
物語の現在パートで中心にいるのが、卒業公演を控えたZhao Muyunです。公演前夜、彼女は再び莫高窟を訪れ、かつて自分たちを時間の旅へと導いた壁画と向き合おうとします。
ところが、そこにあるはずだった壁画は、すでに消えていました。物語上、この消失は単なる怪奇現象ではなく、過去で起きている出来事と直結したサインとして描かれています。
時間をつなぐ壁画とタイムスリップ
この壁画は、現在と過去を結ぶ扉のような存在です。卒業公演前夜に壁画が消えているということは、過去の時間線でまだ重要な何かが完了していないということを示しているように読めます。
過去での犠牲と最後の一筆
一方、過去の世界では、Chen Xiが重大な決断を迫られています。彼女は壁画そのものと仲間であるShen Huanを守ろうとして重傷を負い、命の危機に直面します。
Chen Xiは残された力を振り絞り、Shen Huanに絵を描ききることを託します。未完成の壁画を最後まで描き上げてほしいという願いは、単なる作業の引き継ぎではなく、自分の命と引き換えに文化と仲間の未来を守ろうとする行為として描かれています。
そしてShen Huanが過去の世界で最後の一筆を置いた瞬間、現在の莫高窟では失われていた壁画が再び姿を現します。現在と過去、二つの時間が作品を介して重なり合う印象的な場面です。
戻るチャンスと壁画への犠牲が語るもの
英語の章タイトルにもあるA chance to return, a sacrifice for the muralという言葉どおり、この物語は戻ることと犠牲という二つのテーマを軸にしています。ここには、次のようなメッセージを読み取ることができます。
- 文化財は、単に保存される対象ではなく、誰かの時間と命、覚悟によって支えられてきたという視点
- 作品を最後まで描き切ることは、自分の物語に責任を持つことでもあるという問いかけ
- 今を生きる人と過去の人が、一つの作品を通じて協働しているというイメージ
消えた壁画が復活する条件が、過去の世界での完成であるという設定は、アートが時間を超えて更新され続ける営みであることを象徴的に示しています。
2025年の私たちと消えた壁画の物語
2025年の今、私たちはデジタル技術によって、画像や動画を簡単に保存し、共有できるようになりました。それでも、文化や記憶がいつの間にか薄れてしまう感覚を覚える人は少なくないのではないでしょうか。
莫高窟の壁画が一度消え、過去での犠牲と最後の一筆によって戻ってくるという物語は、次のような問いを投げかけています。
- 自分が引き継いでいるものは何か。それを誰から受け取り、誰に渡していくのか
- 途中で投げ出さず、描き切るべき自分自身の壁画とは何か
- 時間や距離を超えて誰かとつながる体験を、私たちはどうつくり出せるのか
卒業公演を控えた若者と、過去の画工たちの物語は、国や時代を越えて、多くの人に共通する感覚をそっと照らしてくれます。日々のニュースの合間に、こうしたストーリーを手がかりに、自分にとっての戻る場所や守りたいものについて考えてみるきっかけになりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








