熱帯サンゴ礁島の植生回復で新戦略 中国科学院チームが土壌微生物を解明
熱帯サンゴ礁島の植生回復に中国の研究チームが新提案
熱帯サンゴ礁島のもろい生態系で、どのように植生を回復し長期的に維持していくか。この難題に対し、中国科学院・華南植物園の研究チームが土壌微生物の協調的な働きを解き明かし、植生の最適化につながる新たな戦略を提案しました。研究成果は、学術誌 Soil Ecology Letters に掲載されています。
熱帯サンゴ礁島はなぜ回復が難しいのか
研究チームによると、熱帯サンゴ礁島の生態系は、相対的に孤立した閉鎖的な環境にあり、生活条件が厳しいのが特徴です。高温や強い日射、高い塩分濃度、季節的な干ばつが頻繁に起こるほか、生物多様性が低く、生態系の構造も単純で、自らバランスを取り戻す力が弱いため、非常に不安定だとされています。
こうした条件のもとで、人の手で植えた人工植生は長持ちしにくく、時間がたつと劣化しやすいことが課題でした。生態系の機能を高めようとしても、植生が定着しなければ持続的な回復は望めません。
人工植生がもたらす変化と限界
今回の研究では、人工的に導入された植生が、土壌の状態や栄養分の利用可能性を大きく改善することが示されました。一方で、回復の初期段階では、次のような指標が自然植生の水準にまだ大きく届いていないことも明らかになりました。
- 土壌の肥沃度
- 微生物バイオマス(微生物の量)
- 酵素活性
- 生物多様性
つまり、見た目には緑が回復していても、土の中の生態系はまだ十分に機能しておらず、人工植生だけでは生態系全体の回復には時間がかかることが示された形です。
土壌微生物のチームプレーがカギ
研究チームは、植生回復の過程で土壌微生物どうしが協調しながら役割を分担していることを突き止めました。回復の段階によって、主役となる微生物のグループも変化していきます。
初期段階を支える土壌菌類
植生回復の初期には、菌類が中心的な役割を果たします。菌類は干ばつや高い塩分濃度に強く、分解しにくい有機物を効率的に分解できるためです。これにより、植物が根を張りやすい環境が整えられ、土壌中の微生物ネットワークを安定させるうえでも重要な役割を担います。
長期安定を担う土壌細菌
回復が進んだ段階では、主役は細菌に移ります。細菌は炭素、窒素、リンといった主要な元素を素早く循環させることで、生態系の長期的な機能と安定性を支える存在となります。研究チームは、細菌が生態系の持続的な回復に向けた主力として働いていると位置づけています。
炭素とリンの不足がボトルネックに
さらに、人工植生と自然植生のどちらの土壌でも、微生物の活動が炭素とリンという二つの栄養素によって制約を受けていることが分かりました。熱帯サンゴ礁島では、そもそもの土壌の栄養供給が不十分であり、それが微生物の働きと生態系回復の効率を大きく制限するボトルネックになっているという指摘です。
提案された植生最適化戦略と今後
こうした知見に基づき、研究チームは熱帯サンゴ礁島での植生導入に向けた、より的を絞った最適化戦略を提案しました。土壌中の微生物が働きやすい条件を整えることや、炭素とリンの制約を踏まえた植生設計を行うこと、さらに植生回復の進行に合わせて菌類と細菌それぞれの役割を引き出す管理が重要だとしています。
あわせて、異なる回復モデルの持続可能性を評価するための長期モニタリングを行い、熱帯サンゴ礁島における生態系回復の技術枠組みを継続的に改善していく必要性も提言しました。これにより、島の生態安全保障を支えるとともに、世界各地の脆弱な生態系の回復に科学的な支援を提供できると期待されています。
見えない土の中から始まる生態系回復
今回の研究は、植生回復というと植える植物の種類や本数に目が向きがちな中で、土壌微生物という目に見えない存在の重要性をあらためて浮き彫りにしました。熱帯サンゴ礁島のような繊細な環境で生態系の回復を考えるとき、地表に見える景観だけでなく、土の中の生態系をどう整えていくかが問われていると言えます。
研究チームが示した知見と戦略は、熱帯サンゴ礁島の保全だけでなく、世界の島しょ地域や脆弱な生態系での議論にも広く活用されていきそうです。
Reference(s):
New strategy proposed to optimize vegetation on tropical coral islands
cgtn.com








