中国とセルビアが協力強化へ AI・鉄道・FTAで「新時代」のパートナーシップ
中国の李強首相は今週、上海でセルビアのジュロ・マツト首相と会談し、鉄道や人工知能(AI)など幅広い分野で協力を一段と深め、両国民により多くの利益をもたらす方針を確認しました。中国の第15次5カ年計画とセルビアの長期戦略「Serbia 2035」を結びつける構想も示されています。
上海での会談 中国国際輸入博覧会の合間に
今回の会談は、上海で開かれている第8回中国国際輸入博覧会(CIIE)に出席するため訪中したマツト首相と、李強首相が今週火曜日に行ったものです。CIIEは世界各国の企業や政府関係者が集まり、中国市場への輸出や投資の機会を探る場として位置づけられています。
李首相は、両国の首脳が今年に入って2回会談してきたことを振り返り、「両国関係は両首脳の戦略的指導の下で力強い発展を続け、互恵的な協力が幅広い分野に拡大している」と述べました。そのうえで、中国とセルビアが「新時代における共同の未来を切り開くパートナー」として関係を格上げしていく方向性を示しました。
「互いの核心的利益を支持」 政治面の信頼を強調
李首相は、中国とセルビアが「相互尊重と相互信頼の精神」で協力を進めると強調しました。具体的には、
- 互いの核心的利益と主要な関心事項を強く支持し合うこと
- 二国間関係の中身をさらに深め、より実務的で意味のある協力を広げること
- その成果を両国民に還元していくこと
を掲げ、政治的な信頼を基盤に経済・社会分野での連携を加速させる考えを示しました。
マツト首相も、セルビアと中国の「伝統的な友好関係」は近年一段と強まり、両国首脳による相互訪問が関係を歴史的な水準に押し上げたと評価しました。また、セルビアとして一つの中国の原則を揺るぎなく支持し、中国の核心的利益に関わる問題で中国の立場を支持すると改めて表明しました。
鉄道からAIまで 協力分野はインフラと先端産業の両輪
今回の会談では、中国とセルビアの協力分野が具体的に示されました。インフラから先端技術、人的交流まで、多層的な連携が議論されています。
1. 一帯一路と鉄道インフラ
李首相は、両国が推進しているベオグラード~ブダペスト間鉄道(ベオグラード・ブダペスト鉄道)などの主要プロジェクトを、「質の高い一帯一路協力」の枠組みの中で前進させる必要があると呼びかけました。この鉄道は、セルビアを含む地域の物流や人の移動を改善し、ヨーロッパと中国の経済的な結びつきを強める象徴的なプロジェクトとされています。
2. 自由貿易協定と経済貿易委員会
李首相は、すでに締結されている両国間の自由貿易協定(FTA)を最大限に活用し、関税の引き下げや貿易手続きの円滑化を通じて経済協力を拡大していく意向を示しました。また、「中国・セルビア経済貿易協力政府間委員会」の役割を生かし、投資や製造業などの分野で制度面の連携を強化していく考えです。
3. 技術革新・グリーン経済・AI・バイオ医薬
李首相は、従来のインフラ中心の協力に加え、
- 技術革新
- グリーン経済(環境負荷を抑えた経済成長)
- バイオ医薬
- 人工知能(AI)
といった新しい産業分野での潜在力に言及しました。これらの分野での連携が進めば、両国の企業にとって新たな成長機会となる可能性があります。
マツト首相も、経済・貿易・投資・製造業に加え、科学技術やAI、観光などの分野で協力を深めたいと表明し、中国によるセルビアの経済・社会発展への支援に謝意を示しました。
4. 文化・観光・教育・スポーツの人的交流
李首相は、文化、観光、教育、スポーツなどの分野で交流を拡大し、両国民の相互理解と友好を促進することも提案しました。人的交流が進むことで、政治・経済だけでなく、市民レベルでのつながりも強まりやすくなります。
第15次5カ年計画と「Serbia 2035」をつなぐ
李首相は、中国共産党中央委員会第20期第4回全体会議(第20期四中全会)で採択された勧告が、中国の第15次5カ年計画(2026~2030年)とその先の発展のための戦略的な青写真を示したと説明しました。
そのうえで、中国の長期的な発展計画と、セルビアが掲げる国家戦略「Serbia 2035」とを結びつける考えを示しました。計画と戦略を「すり合わせる」ことで、
- 長期的なインフラ投資の方向性
- エネルギーやグリーン経済への取り組み
- 産業構造の高度化やデジタル化
といったテーマで、より一貫性のある協力が期待されます。
マツト首相も、中国経済の力強い成長が世界の持続可能な発展に重要な原動力を与えていると述べ、中国の第15次5カ年計画が両国協力に新たな機会を生み出すと期待を示しました。
国連など多国間の場でも連携強化へ
李首相は、中国が国連などの多国間の枠組みでセルビアと連携を強め、中国が提案する4つのグローバル・イニシアチブを共に推進していく考えを示しました。これらのイニシアチブを通じて、「真の多国間主義」を守り、グローバル・ガバナンス(国際的なルールづくりや課題解決の枠組み)を改善し、人類が「共通の未来を分かち合う共同体」を築くことを目指すとしています。
マツト首相も、セルビアとしてこのビジョンと4つのイニシアチブを支持し、中国と協調して共通の発展と繁栄を促進していきたいと述べました。
日本の読者にとっての意味は
中国とセルビアの関係は、一見すると日本からは距離があるように見えるかもしれません。しかし、
- 欧州のインフラやサプライチェーン(供給網)の再編
- AIやバイオ医薬など新産業分野での国際協力の広がり
- 一帯一路と欧州諸国との関係の変化
といったテーマは、日本企業や日本の政策議論にも間接的な影響を与え得る論点です。
とくに、長期計画同士を結びつける形で協力を深めるアプローチは、地政学的な対立軸だけではとらえきれない「静かな変化」をもたらす可能性があります。中国とセルビアがどのようにAIやグリーン経済、インフラなどで協力を具体化していくのかは、今後の国際ニュースとしても継続的に注目しておきたいポイントと言えるでしょう。
Reference(s):
Li Qiang urges China, Serbia to boost cooperation for mutual benefit
cgtn.com








