中国の古典エクササイズ「八段錦」が若者に人気 ジムに代わる新しい健康習慣 video poster
古いけれど新しい?若い世代が選ぶ「八段錦」
中国の若い世代の間で、静かな健康ブームが広がっています。注目されているのは、最先端のジムでも最新のアウトドアスポーツでもなく、宋代から続くとされる伝統的なエクササイズ「八段錦」です。
これまでフィットネスといえば、ランニングマシンや筋力トレーニングが主流でしたが、近年は心身のバランスを重視する流れが強まり、やさしい動きで続けやすい八段錦に関心が集まっています。
八段錦とは何か:八つの動きが織りなす「錦」
八段錦という名前は、英語でEight Pieces of Brocade(八枚の錦)と訳されます。錦織物のように、美しく織り上げられた八つの動きが一連の流れをつくることから、この名が付いたとされています。
このエクササイズは、八つの決まった動作から成り立ちます。一つ一つの動きは穏やかで激しさはなく、呼吸とともにゆっくり行うのが特徴です。激しいジャンプや複雑な器具は必要なく、自宅の一室や公園の一角など、限られたスペースでも行うことができます。
八段錦は気功の一種とされ、定期的に行うことで、身体だけでなく心の状態を整えることを目指します。しばしば穏やかな音楽に合わせて行われ、高齢者から若者まで、幅広い世代が取り組みやすい低負荷の運動です。
約800年の歴史と現代のヘルスコンシャス
八段錦の起源は、宋代(960〜1279年)までさかのぼるとされています。約800年の歴史をもつこの健康法は、時代ごとに形を変えながら受け継がれてきました。
そしてここ数年、健康意識の高まりとともに、この伝統的なエクササイズが再び脚光を浴びています。デジタル機器に囲まれ、長時間のデスクワークやスマートフォン利用が当たり前になった若い世代にとって、道具を使わず、短時間でも心身を切り替えられる八段錦は、現代生活になじみやすい選択肢といえます。
第15回全国体育大会で「大規模気功パフォーマンス」に
八段錦は、国家レベルのスポーツイベントでも存在感を示しています。今年11月9日から21日にかけて行われた第15回全国体育大会では、伝統的な養生文化を紹介する「気功マスパフォーマンス」の一つとして取り入れられました。
大会全体は、健康的なライフスタイルを広め、全国的な運動参加を促すことを目的としており、その中で八段錦は、中国の伝統的な健康観を象徴するプログラムとして位置づけられています。若い世代の間での人気が、こうした公式イベントを通じてさらに可視化された形です。
長城を舞台にしたデモンストレーションも
メディアもこの動きを後押ししています。国際メディアCGTNは、社会体育指導員であり太極拳の伝承者でもある張冬媛(Zhang Dongyuan)さんを起用し、八段錦のデモンストレーション映像を制作しました。
撮影場所は、北京の居庸関長城の一角。映像では、八つの動作を一つひとつ丁寧に見せながら、視聴者が伝統的な中国の健康法を体験できるよう工夫されています。こうした映像コンテンツは、現地の人びとはもちろん、世界の視聴者にとっても八段錦を知る入り口になっています。
デジタル世代にとっての「続けやすさ」
若い世代が八段錦に惹かれる背景には、続けやすさがあります。必要なのは、少しの時間と動けるスペースだけです。仕事の合間に数分間行ったり、自宅でオンライン動画を見ながら一日の終わりに取り入れたりと、生活リズムに合わせやすいのが特徴です。
また、激しい運動が難しい人や、ジム通いにハードルを感じる人にとっても、自分のペースで行える八段錦は取り組みやすい選択肢です。無理なく続けられる習慣が、結果として心身のコンディションを整えることにもつながります。
日本の私たちにとってのヒント
伝統文化に根ざした健康法が、デジタル世代のライフスタイルと結びついている点は、日本にとっても示唆的です。忙しい毎日の中で、短時間でも体をゆっくり動かし、呼吸を整える時間を持つことは、多くの人にとって共通の課題といえます。
中国で広がる八段錦の人気は、「激しい運動だけが健康づくりではない」という発想の転換を映し出しているのかもしれません。静かな動きと集中した呼吸を通じて、自分の体と向き合う時間をどうつくるか──その問いは、国境を越えて私たち一人ひとりに投げかけられています。
Reference(s):
cgtn.com








