中国の医療AI戦略が加速 2030年までに診断支援をほぼ普及へ
中国が医療分野での人工知能(AI)活用を次の段階へ進めます。中国国家衛生健康委員会などが新たな文書を公表し、2027年と2030年を節目とする医療AIの具体的な導入目標を示しました。診断支援から感染症対策、予約や問診などの患者サービスまで、医療のほぼ全プロセスでAIの活用を広げる方針です。
中国当局が示した医療AI加速計画
火曜日に公表された文書によりますと、中国国家衛生健康委員会と他の4部門は、今後数年にわたって医療分野でのAI活用を推進しつつ、適切に規制する方針を打ち出しました。世界最大級の医療サービス体制を整えている中国は、すでに医療分野や患者サービスにおけるAI研究・応用で世界の最前線にあるとされています。
今回の文書は、その流れを一段と強化し、医療の現場にAIを本格的に組み込むためのロードマップとも言える内容になっています。
2027年までの目標:データとモデルの基盤づくり
まず2027年までに、中国の医療・ヘルスケア分野で次のような基盤を整備することが掲げられています。
- 医療・健康産業向けの高品質なデータセットの整備
- 医療データを安全かつ信頼性高く扱うためのデータインフラの構築
- 特定の疾患や医療領域に特化した大規模AIモデルの開発
- 個別の病気や診療分野に合わせた知能化アプリケーションの実用化
特に「高品質」「信頼できる」データ基盤を前面に出している点は、診断精度や安全性が求められる医療AIにとって不可欠な土台づくりを重視している表れと言えます。
2030年の姿:基層医療機関まで診断支援を普及
2030年までのより長期的な目標として、文書は医療現場でのAI導入の到達イメージを具体的に示しています。
- コミュニティクリニックや村の診療所などを含む基層医療機関で、知能化された診断・治療支援が基本的に普及した状態を実現
- 中国の三層構造の病院システムにおいて、二級以上の病院でAI技術を広く導入
- 画像診断を支援するAI(医用画像の知能診断)や、医師の判断を助ける臨床意思決定支援などの技術を本格活用
こうした目標が達成されれば、患者が地域の診療所を受診した段階から、高度な病院まで一貫してAIのサポートを受けられる医療体制に近づくことになります。
患者サービスもAIでシームレスに
AIの活用対象は診断・治療だけではありません。文書は、患者向けサービス全体へのAI導入も重視しています。
具体的には、医療機関が次のようなプロセスを通じて、統合された知能化サービスを提供する構想が示されています。
- 受診日時や医師をきめ細かく調整する精密な予約システム
- 症状に応じて適切な診療科や窓口へと案内するトリアージ(振り分け)
- 診察前に症状を整理し、医師の問診を支援するプレ診断
- 診察後のフォローアップや経過観察を支えるオンライン・サービス
これにより、患者の待ち時間の短縮や、医療スタッフの事務負担の軽減など、医療体験そのものの改善が期待されています。
イノベーション拠点と人材育成
文書は、世界レベルで競争力のある科学技術イノベーション拠点や、人材育成の基地を複数整備する方針にも触れています。医療AIを支える研究者やエンジニア、医療現場でAIを使いこなす人材を育成することで、長期的な技術力の底上げを図る狙いです。
加えて、医療分野における国家級のAIパイロット基地を設置し、高い付加価値を生む応用シナリオを創出することで、医療産業全体の質の高い発展を促すとしています。
感染症対策でのAI活用も強化
今回の方針には、感染症との闘いにおけるAIの活用も盛り込まれています。中国は、知能化された疫学調査システムを高度化し、感染症の予防・抑制に関する意思決定を、リアルタイムかつ精密に支える仕組みを構築する計画です。
これにより、感染状況の把握やクラスター(集団発生)の特定、対策の効果検証などを迅速に行える体制づくりが進むとみられます。
読み手にとってのポイント:何が変わりうるか
すでに医療AIで先行する中国が、データ基盤、診断支援、患者サービス、感染症対策までを一体で描いた今回の計画は、今後の医療の姿を考えるうえで示唆に富んでいます。
一方で、医療AIの活用が進むほど、次のような問いも重要になってきます。
- 医療データを扱ううえで、患者のプライバシーやセキュリティをどう守るのか
- AIが出した診断・提案と、医師の専門的判断との役割分担をどう設計するのか
- 医療の質や公平性を高める方向へAIを活用できるかどうか
中国の取り組みは、こうした課題に対する一つの大規模な実験の場にもなり得ます。医療とテクノロジーの関係が大きく変わろうとしている今、日本を含む各地の読者にとっても、自分が望む医療のかたちを考えるきっかけになりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








