中国国際輸入博覧会、アフリカ成長のゲートウェイに ゼロ関税とMSMEの躍進
今年開かれた第8回中国国際輸入博覧会(CIIE)は、展示面積と出展企業数の両方で過去最多を更新し、155の国と地域から4,000社超が集まりました。なかでも存在感を増したのがアフリカです。17のアフリカ諸国が国家パビリオンに参加し、企業数も前年から約8割増えました。16年連続でアフリカ最大の貿易相手となっている中国は、市場アクセスの拡大やゼロ関税措置を通じて、アフリカの成長とイノベーションの新たな入り口をつくろうとしています。
アフリカ・パビリオンは何を伝えたか
中国国際輸入博覧会は、各国が自国の産品や投資機会をアピールする国際見本市です。2025年の第8回では、アフリカ・パビリオンが特に活気にあふれたエリアとなりました。
ジンバブエ貿易促進機関ZimTradeのクライアントアドバイザー、クパカワイシェ・ミジ氏は、アフリカ各国のパビリオンについて、アフリカの創造性や柔軟さ、イノベーションを体現する「鮮やかなショーケース」だと表現します。農産物から高級飲料やワイン、エッセンシャルオイル、加工食品、さらには他分野への投資案件まで、多彩な展示が並びました。
ジンバブエ:多様な輸出品と企業が集結
ジンバブエは、自国パビリオンの下で15社が出展し、さらに15社ほどが非出展ながら会場を訪れ、ビジネス機会を探りました。ミジ氏によると、出展企業は次のような商品を前面に押し出しています。
- 自然の風味を生かしたお茶
- レザー製品
- 工芸品などのマルチカルチャー色の強いプレミアム製品
こうした品目は、ジンバブエが輸出の多角化を進めていることの表れでもあります。同氏は、CIIEはジンバブエにとって「信頼できる輸出国としてのブランド力を高め、中国からの投資を呼び込み、長年のパートナーである中国との貿易関係をさらに深める場」だと位置づけています。
ルワンダ:コーヒー・紅茶・蜂蜜で中国市場に挑戦
ルワンダ開発庁の最高投資責任者(CIO)、ミシェル・ウムルンギ氏は、会場の雰囲気を「とても活気がある」と語ります。ルワンダからは約12社が参加し、主に次のような商品を展示しました。
- コーヒー
- 紅茶
- 蜂蜜
同氏によれば、中国の消費者はこれらの味を好んでいる様子がうかがえ、中国市場での足場づくりに手応えを感じているといいます。目標は、CIIEをきっかけに対中貿易をさらに拡大していくことです。
ナミビア:MSMEが主役のパビリオン
ナミビア農産物委員会のシニア貿易アドバイザー、マリア・イマニュエル氏は、CIIEを「中国とアフリカが相互理解を深め、ウィンウィンの協力を実現する機会」ととらえています。
国家パビリオンは、ナミビアを含むアフリカ諸国にとって、自国のイメージを紹介し、貿易や投資のチャンスを探る重要な場です。特に今回は、マイクロ・中小・中堅企業(MSME)が主役となり、自社製品を展示し、ネットワークを広げ、中国という世界有数の巨大市場にアクセスするきっかけを得ています。
ナミビアとジンバブエの対中貿易:数字で見る関係
ナミビア:農水産物で対中黒字
イマニュエル氏によると、ナミビアと中国の貿易関係は年々拡大しており、中国はナミビアにとって主要な貿易相手の一つです。2024年には、中国との貿易で黒字を記録しました。
両国は2018年に貿易オペレーション協定を結び、2019年には牛肉の対中輸出を開始。これにより、ナミビア産牛肉の販路が広がり、農業分野での貿易関係が強まりました。現在では年間約600トン規模の牛肉が中国向けに出荷されているといいます。さらに、ロブスターを中心とした水産物も輸出されています。
現在は、テーブルグレープ(生食用ぶどう)、柑橘類、ブルーベリーといった高付加価値の園芸作物についても対中輸出の協定を最終調整中で、農業・水産分野の取引拡大が見込まれています。
ジンバブエ:ブルーベリーと投資で存在感
ジンバブエにとっても、CIIEは中国市場でのプレゼンスを高める重要な舞台です。2025年9月には、エマーソン・ムナンガグワ大統領の中国訪問にあわせて、ブルーベリーの対中輸出に関するプロトコルが署名されました。
ミジ氏は「今回のCIIEでジンバブエ産ブルーベリーを披露したかった」と語る一方で、プロトコル署名から日が浅いため、現在はジンバブエ側と中国側が輸出に向けた実務的な準備を進めている段階だと説明します。次回のCIIEでは、いよいよジンバブエ産ブルーベリーが並ぶことへの期待が高まっています。
ブルーベリーは、ジンバブエが世界の園芸市場で存在感を増している品目の一つです。輸出額は約5,700万ドルに達し、過去5年間で年平均約38%という高い成長率を記録しています。ミジ氏は「ブルーベリー産業の機会を探すなら、ジンバブエは注目すべき場所だ」と強調します。
投資面でも中国の存在感は大きく、ジンバブエ投資開発庁によれば、2024年に承認された対外投資のうち、6割以上を中国企業が占めました。中国はジンバブエ最大の投資国であり、貿易面でも第3位のパートナーとなっています。
ゼロ関税と特設セクションが変えるゲームのルール
今回のCIIEでは、後発開発途上国向け製品の特設ゾーンと、アフリカ製品セクションの拡充が行われました。これにより、アフリカ企業はゼロ関税の優遇措置を活用しやすくなり、中国市場へのアクセスが大きく広がっています。
アフリカにとっての「ゲームチェンジャー」
イマニュエル氏は、中国によるアフリカ製品へのゼロ関税措置を「アフリカだけでなく世界の貿易構造にとってのゲームチェンジャー」だと評価します。
アフリカでは、域内貿易を拡大するための枠組みとして、アフリカ大陸自由貿易協定(AfCFTA)が動き始めています。同氏は、アフリカが域内だけでなく、中国のような世界市場とも連携し、AfCFTAと整合的に貿易を拡大していくことが重要だと指摘します。
ゼロ関税の意義として、次の点が挙げられています。
- アフリカの企業が必要な原材料や部材をより安く調達できるようになり、製品の価格競争力が高まる
- 付加価値を付けた製品づくりへの投資を後押しし、製造業の振興につながる
- モノだけでなく、サービス貿易への参加も促し、中小企業のグローバルな市場参加を広げる
世界的に貿易構造が変化するなかで、巨大な中国市場に関税ゼロでアクセスできることは、アフリカ企業にとって即座に競争優位をもたらすと同氏は見ています。
ジンバブエ:品質基準への対応が鍵
ミジ氏も、ゼロ関税政策はジンバブエの輸出企業にとって「非常に歓迎すべき取り組み」だと語ります。関税負担が軽くなることで、ジンバブエ産品をより競争力のある価格で中国市場に紹介できるようになるためです。
一方で、中国市場は品質やパッケージングの基準が高く、これに対応する企業側の準備も欠かせません。ZimTradeは、企業がこうした基準を満たせるよう支援しつつ、CIIEの場でバイヤーやディストリビューター、パートナー候補とネットワークを広げ、高品質な製品づくりと市場開拓を同時に進めています。
ルワンダ:信頼と開放性が後押し
ウムルンギ氏は、中国によるアフリカ諸国へのゼロ関税政策が、ルワンダ産品の競争力を高め、輸出企業のコスト負担を軽減すると評価します。すでに対中輸出は増加傾向にあり、この流れが今後も続くとの見方を示しました。
同氏は、こうした政策を通じて、中国企業が自国市場をアフリカに対して開き、信頼を示している点にも注目します。第8回CIIEのテーマとされる「New Era, Shared Future」を念頭に、アフリカと中国が共に繁栄する未来像が共有されつつあると語りました。
資源から付加価値へ、モノからサービスへ
ジンバブエ:資源と加工で「win-win」の関係へ
ミジ氏は、ジンバブエと中国の関係を「特に説得力のある事例」と表現します。中国から見れば、ジンバブエは豊富な農産物や鉱物資源を持つ成長市場であり、付加価値加工の可能性も高い国です。これは今回のCIIEのテーマとも重なります。
資源の輸出にとどまらず、現地での加工やサプライチェーン強化を通じて、より多くの雇用と付加価値を国内に残せるかどうかがカギになります。その意味で、中国市場は「製品の行き先」であると同時に「技術パートナー」「投資家」としても重要な役割を担っています。
アフリカ全体:モノだけでなくサービスも
イマニュエル氏は、アフリカ大陸全体を見渡すと、域内貿易の議論をしていても、依然として原材料の取引が中心になりがちだと指摘します。今後は、次のような転換が必要だといいます。
- 原材料だけでなく、付加価値の高い加工品を増やす
- イノベーションや技術、人材への投資を優先し、生産性を高める
- モノの貿易だけでなく、観光などサービス貿易にも戦略的に取り組む
同氏は特に観光を、アフリカと中国の間で大きな可能性を秘めた分野として挙げます。世界の貿易がサービスにより強くシフトするなか、アフリカもモノとサービスの両方でバランスよく貿易を拡大していくべきだと訴えています。
「共有する未来」に向けて:CIIEが映す次の一歩
第8回中国国際輸入博覧会で見えてきたのは、単なる輸入見本市を超えた、アフリカと中国の関係の変化です。
- 参加するアフリカ諸国と企業が増え、産品も一層多様化した
- ゼロ関税や特設セクションなどの制度が、中小企業の参入障壁を下げつつある
- 原材料中心の貿易から、付加価値製品やサービスへと軸足を移そうとする動きが始まっている
一方で、中国市場の高い品質基準にどう対応するか、付加価値をどこまで国内で生み出せるか、といった課題も浮かび上がっています。CIIEは、こうした課題と可能性を同時に映し出す「鏡」のような存在だとも言えます。
アフリカ各国の官民は、このプラットフォームを通じて、自らの強みを言語化し、製品やサービスとして形にし、国際市場でどう位置づけるかを試されています。ゼロ関税や巨大市場というチャンスを、どこまで持続的な成長につなげられるのか。その答えをつくるのは、CIIEのブースに立つ中小企業や現場のプレーヤーたちにほかなりません。
中国とアフリカが掲げる「共有する未来」がどのような姿になるのか。CIIEは、その輪郭を少しずつ具体的にしていく場となりつつあります。
Reference(s):
CIIE: Africa's gateway to growth, innovation and opportunity
cgtn.com








