中国の医療は今後5年でどう変わる?深圳発・AIヘルスケア最前線
2025年のいま、中国の深圳では手術ロボットやAI問診などの先端技術がすでに日常の医療に入り込みつつあります。こうした現場の変化は、今後5年の中国の医療の姿を映すヒントになります。
深圳の手術室で見える「ロボット手術」の現在
中国南部の都市・深圳の病院の手術室では、ロボットが傷口を縫合したり腫瘍を取り除いたりする光景が現実のものになっています。これは、中国の医療の現在と近未来を象徴する場面です。
深圳・龍崗区中心医院の泌尿器科主任である鄧望東氏は、手術ロボットの利点を次のように説明します。
「ロボットに搭載された内視鏡は、術者の視野を10倍に拡大し、鮮明で精密な3D画像を提供してくれます。機械のアームは人間の手首のように柔軟に動き、狭いスペースでも操作が可能です。全体の効率は3倍以上に高まっています」と話します。
高度なロボット手術が広がることで、複雑な手術をこなせる病院が増え、患者が遠方の大病院まで移動しなくても高度な治療を受けられる可能性が高まります。
診療の入口もAIに スマホでの「賢いトリアージ」
この病院では、AIの活用は手術室だけにとどまりません。患者はスマートフォンを使い、チャットボットに症状を入力することで、どの診療科を受診すべきかを自動で案内してもらうことができます。いわば、AIによる「賢いトリアージ(優先度判断)」です。
こうした仕組みによって、患者は受付窓口で長く待たされることなく、自分に合った診療科へスムーズに案内されます。医師や看護師にとっても、問診や案内にかかる時間が減り、本来の診療により多くのリソースを割くことができるようになります。
深圳市内では現在、診断や治療のさまざまなプロセスで450を超えるAIアプリケーションが活用されているとされ、都市全体で医療のデジタル化が一気に進んでいます。
伝統医療もアップデート AIお灸ロボットの登場
技術革新の波は、伝統的な中国医学にも及んでいます。深圳では、AIを搭載した灸(きゅう)治療用のロボットが導入されています。
このロボットは、患者の体のツボの位置を正確に見つけ出し、安定した温度で灸の技術を再現します。熟練の施術者の技をアルゴリズムに落とし込み、ばらつきの少ない施術を提供することを目指しています。
伝統医療と先端テクノロジーの組み合わせは、これまで経験や勘に頼る部分が大きかった領域に、標準化やデータに基づく改善の余地をもたらします。
地域医療を支えるAI 「人手不足」をどう補うか
AIやロボット導入の背景には、現場の切実な課題があります。深圳宝安中医医院グループに所属する宝文社区健康サービスセンターの李深清主任は、こう語ります。
このコミュニティヘルスセンターは、4万8千人の住民を対象としていますが、「AIロボットの導入によって、限られた医療資源という問題の解決に役立ち、サービスの質と効率の向上につながっている」と述べています。
中国の大都市では人口の増加や高齢化により、医師や看護師の負担が大きくなりがちです。AIが問診や検査の一部を担うことで、医療スタッフはより高度な判断や患者とのコミュニケーションに集中できるようになります。
今後5年で見えてくる中国医療の姿
こうした深圳の事例からは、2025年から2030年ごろにかけて、中国の医療が次のような方向に進む可能性が見えてきます。
- ロボット支援手術がより一般的になり、複雑な手術のハードルが下がる
- スマホを使ったAIトリアージが普及し、患者の受診フローが最適化される
- 伝統的な中国医学とAI・ロボット技術の融合が進み、新たな治療モデルが生まれる
- コミュニティレベルの医療機関でもAIが導入され、都市部の地域医療が底上げされる
特に、地域医療の現場でAIやロボットが導入されれば、医師や看護師が不足しがちなエリアでも、一定水準の医療サービスを維持しやすくなると考えられます。
私たちが考えたい3つの視点
中国の医療で進むAI活用は、今後のアジアや世界の医療にも影響を与えうる動きです。深圳の事例を踏まえて、次の3つのポイントを意識しておくと、今後のニュースも追いやすくなります。
- 人とAIの役割分担:AIができることが増える一方で、患者との対話や最終的な判断など、人間の医療者にしかできない部分をどう位置づけるかが問われます。
- データと信頼:スマホやロボットを通じて集まる医療データを、患者のプライバシーに配慮しながらどう活用するかは重要なテーマです。
- 都市と地域の格差:深圳のような大都市で生まれたモデルを、どのように他の地域へ広げていくのか。技術の普及の仕方によって、医療格差が縮まるのか、広がるのかが変わってきます。
深圳で進むAI医療の取り組みは、中国の医療がこれから5年でどのように変わっていくのかを考えるうえで、ひとつの「先行モデル」として注目されます。今後も、現場からどのような成果と課題が報告されるのかを追いかけていきたいところです。
Reference(s):
What to expect in China's healthcare over the next five years
cgtn.com








