中国主導の産業5G国際標準がIECで正式公開 製造業DXに追い風
中国主導の産業5G国際標準が国際電気標準会議(IEC)から正式に公開されました。製造業など産業分野に特化した世界初の5G国際標準であり、各国の工場やプラントのデジタル化を左右しうる重要な動きです。
中国主導の産業5G国際標準とは
中国の国家市場監督管理総局(SAMR)は木曜日、産業向け5Gの世界初の国際標準がIECにより正式に発表されたと明らかにしました。この標準は中国とドイツが共同で提案し、米国、フランス、日本など複数の国の専門家が開発に参加した国際プロジェクトです。
これまで、産業用途に特化した5Gの国際標準は存在しておらず、今回の標準は産業5G分野の標準化の「空白」を埋めるものと位置づけられています。
標準がカバーする3つのポイント
今回の産業5G国際標準は、工場やプラントなどの産業環境で5Gネットワークをどう設計・運用・維持するかに焦点を当てています。主なポイントは次のとおりです。
- 基本アーキテクチャ(ネットワーク構成や各機能の役割)
- 運用メカニズム(通信品質の確保やトラフィック管理の仕組み)
- 保守管理(監視、故障対応、アップデートの方法など)
さらに、実際の産業現場を想定した具体的なユースケースが盛り込まれ、工場の自動化や遠隔監視、リモート保守といったシナリオで、5G技術をどのように適用するかが示されています。
標準は世界中のユーザー、ネットワーク設計者、機器メーカーに向けて共通の技術仕様を提供し、産業5G分野における「共通言語」として機能することが期待されています。
中国の5Gと産業インターネットの進展
今回の標準の背景には、中国の情報通信産業の急速な発展があります。近年、中国では5Gの産業利用が幅広い分野で進み、全国で2万件を超える「5G+産業インターネット」プロジェクトが立ち上がっているとされています。
こうした現場での豊富な実績と知見が、標準の設計やユースケースの整理にも生かされているとみられます。SAMRは、この標準の公開が5Gと産業の融合における重要な節目であり、製造業のデジタル変革に中国の知恵と解決策を提供するものだと強調しています。
国際協調としての意味
今回の標準は、中国とドイツの共同提案であり、米国、フランス、日本を含む複数の国の専門家が参加して策定されました。単一の国ではなく、複数の国・地域の利害関係者が関わることで、次のような効果が期待できます。
- 特定の国や企業に偏らない、中立性の高い仕様になりやすい
- 各国の産業現場のニーズを反映し、実践的な標準にできる
- 企業が国境を越えて設備やシステムを導入しやすくなる
産業5Gのような基盤技術では、一国だけが独自ルールを押し進めるよりも、国際標準を共有した方が導入コストを抑え、技術革新のスピードも上げやすくなります。今回の動きは、国際協調の一つのかたちとしても注目されます。
製造業DXと日本へのインパクト
産業5G国際標準は、世界の製造業のデジタル・トランスフォーメーション(DX)に直結するテーマです。工場のネットワーク設計や機器選定の際に、共通の基準が存在することで、企業は次のような判断をしやすくなります。
- 設備投資の長期的な互換性や拡張性を見通しやすい
- 複数拠点・複数国にまたがる工場ネットワークを統一しやすい
- サプライヤーやパートナーとの技術調整の負担を軽減できる
中国市場に生産拠点やパートナーを持つ日本企業にとっても、この標準は無関係ではありません。設備メーカーにとっては、新標準への対応が競争力の一部となり、ユーザー企業にとっては、どの程度この標準を前提としたネットワーク設計に切り替えていくかが検討ポイントになりそうです。
これからの論点:セキュリティと人材
産業5Gが普及するほど、サイバーセキュリティや運用人材の確保といった新たな課題も浮かび上がります。標準はアーキテクチャや運用の枠組みを示しますが、実際の現場では次のようなテーマが重要になります。
- 工場全体を見据えたネットワークセキュリティの設計
- 5Gと既存の有線ネットワークやWi-Fiとの役割分担
- 現場エンジニアが5Gネットワークを運用・保守できる体制づくり
2025年12月時点で、産業5Gはまだ発展途上の分野です。今回の国際標準の公開は、その発展を支える「土台づくり」の一歩と言えます。今後、産業ごとの詳細な標準や、AI・エッジコンピューティングとの連携ルールなど、議論すべきテーマはさらに広がっていくでしょう。
中国主導で生まれた今回の産業5G国際標準を、各国・各企業がどのように取り入れ、自国の産業戦略と結びつけていくのか。これから数年は、その動きを丁寧に追っていきたいタイミングです。
Reference(s):
China-led industrial 5G international standard officially released
cgtn.com








