中国AI「六小龍」、2025 World Internet Conferenceで初の共同対話 video poster
中国の人工知能(AI)産業が、世界のイノベーションをリードする存在であることをあらためて示しました。2025年のWorld Internet Conferenceで、中国のトップテック企業6社が「AIの六小龍」として初めて共同の対話に臨み、最先端技術とAIの課題について意見を交わしたためです。
中国AI「六小龍」とは?
今回「AIの六小龍」として名前が挙がったのは、Unitree、BrainCo、GroupCore、DEEP Robotics、Game Science、DeepSeekの6社です。ロボット工学、脳コンピュータ・インターフェース、空間知能、ゲーム、オープンソースの汎用人工知能(AGI)など、AIの異なるフロンティアをそれぞれ代表しています。
それぞれの企業が見せたAI最前線
屋外ロボットで存在感:UnitreeとDEEP Robotics
UnitreeとDEEP Roboticsは、屋外環境での活動を想定したロボット技術を披露しました。悪路や屋外施設など、これまでロボットが苦手としてきた環境でも安定して動作できる「頑丈さ」と「自律性」が特徴とされています。
この分野の進展は、物流、警備、インフラ点検、災害対応など、現実社会のさまざまな現場での活用につながる可能性があります。中国のロボット企業がこうした領域で存在感を高めていることは、国際的な産業競争の構図にも影響を与えそうです。
脳波で動く義手:BrainCoのブレインテック
BrainCoは、思考で操作できる義手などの「思考制御義肢」を前面に打ち出しました。脳の信号を読み取って装置を動かす脳コンピュータ・インターフェース(BCI)の技術を応用したものです。
日常生活の動作をサポートするだけでなく、リハビリテーションや医療の現場で、身体機能の回復を助けるツールとしての応用も期待されています。これまでSF作品の中のイメージだった技術が、現実のプロダクトとして形になりつつあることを示したと言えます。
空間知能システム:GroupCoreが目指す「環境を理解するAI」
GroupCoreは、空間知能システムをテーマに掲げました。これは、建物や街など三次元空間の構造をAIが理解し、地図化したり、移動経路を最適化したりする技術です。
自動運転、スマートシティ、拡張現実(AR)など、多くの応用分野で「空間をどう認識するか」は重要な課題になっています。GroupCoreの取り組みは、ロボットやデジタルサービスが現実世界とより自然に結びつくための基盤づくりと位置づけることができます。
ゲームから世界へ:「Black Myth: Wukong」が示す文化的インパクト
Game Scienceは、ゲームタイトル『Black Myth: Wukong』を通じて、AIとデジタルコンテンツの組み合わせが持つ文化的影響力を示しました。このゲームは、世界的な注目を集める作品として取り上げられ、中国発のゲームスタジオがグローバル市場に与えるインパクトの一例とされています。
AI技術は、グラフィック表現やキャラクターの動き、ゲームバランスの調整など、制作プロセスのあらゆる部分に入り込みつつあります。ゲームという身近なコンテンツを通じて、AIが私たちの「体験」をどう変えていくのかを考えさせる事例です。
オープンソースAGI:DeepSeekの汎用AI戦略
DeepSeekは、オープンソースの汎用人工知能(AGI)に向けた取り組みを紹介しました。特定のタスクだけでなく、幅広い課題に対応できる「汎用性」を持つAIを、オープンな形で開発していくという方向性です。
このアプローチは、国境を越えた研究協力や、スタートアップ・研究機関・開発者コミュニティによる共同開発を加速させる可能性があります。一方で、誰もが強力なAIにアクセスできる時代をどう設計するのかという、新しい議論も生み出しそうです。
対話で浮かび上がった3つの課題
今回の共同対話では、技術の華やかな側面だけでなく、AIが直面する現実的な課題も率直に議論されました。キーワードとして挙がったのが次の3点です。
1. データボトルネック
AIの性能は大量のデータに大きく依存しますが、その一方で、質の高いデータを十分に集めることはますます難しくなっています。プライバシー保護や安全性への配慮も不可欠です。
六小龍の企業は、それぞれの分野でデータの不足や偏りと向き合いながら、より効率的なデータ活用の方法を模索しているとされています。ロボットやBCI、ゲーム、AGIなど、どの分野でも「良いデータ」をどう確保するかが共通課題になっています。
2. 技術的な壁と実装までの距離
屋外ロボットや思考制御義手、AGIなどは、どれも非常に高度な技術を要します。研究室レベルのデモから、社会に広く普及する製品・サービスへと移行するまでには、多くの技術的・制度的ハードルがあります。
今回の議論では、こうした「最後の1マイル」をどう乗り越えるかがテーマになりました。試作品から実運用へ移行するプロセスでの安全性、信頼性、コストの問題などが、今後の焦点になると考えられます。
3. 雇用と仕事のあり方に与える影響
参加者は、AIが雇用や働き方に与える影響についても言及しました。ロボットによる自動化や、AGIによる高度な業務の代替が進めば、既存の仕事の一部は確実に変化します。
一方で、新しい職種や産業が生まれる可能性もあります。重要なのは、「どの仕事がなくなるのか」だけでなく、「どんな仕事を生み出していけるのか」を同時に考えることだといえます。六小龍の対話は、その問いを投げかける場にもなりました。
なぜ国際ニュースとして重要なのか
今回の動きが国際ニュースとして注目される理由は、単に中国の企業の話だからではありません。AIの進化とその社会実装は、国や地域を問わず、世界中の人々の生活や仕事に直結するテーマだからです。
- ロボットやBCIは、医療・介護・災害対応など、人命に関わる領域を大きく変える可能性がある
- 空間知能やゲームは、都市の設計やエンターテインメントを通じて、日常の体験を変える
- オープンソースAGIは、研究・産業・教育のあり方に長期的な影響を与える
2025年の時点で、中国のAI企業がこうした分野で連携しながら議論を深めていることは、今後のAIガバナンス(AIをどう運用・管理していくか)や国際協調の議論にも関わってきます。
これからのAIとどう付き合うか
AIの六小龍が見せたのは、「技術の眩しさ」と「社会への問いかけ」が同時に進んでいる現状です。ニュースを読む私たちにとっても、次のような問いが投げかけられています。
- ロボットやAGIに任せたい仕事はどこまでで、自分たちが担い続けたい仕事はどこなのか
- 医療・福祉の現場で、BCIやロボットをどう受け入れていくのか
- オープンソースの強力なAIを、誰がどうルールづくりしていくべきなのか
2025年の今、中国のAI企業が示したビジョンは、こうした問いを世界に投げかける出発点の一つです。どの技術や視点に最も可能性を感じるか、一度立ち止まって考えてみることが、AI時代を主体的に生きるための第一歩になりそうです。
Reference(s):
Chinas 'Six Little Dragons of AI' hold their first group dialogue
cgtn.com








