中国が「シナリオ」実証で新技術育成 5G・AI・ロボットの5分野強化へ
中国政府は北京での記者会見で、実際の現場を活用した「シナリオ」型プロジェクトを通じて、新技術の育成と産業の高度化を進める方針を示しました。5GやAI、ロボットなど5分野を重点に、古い規制の見直しも進めるとしています。
現場で試す「シナリオ」型イノベーションとは
今回、中国政府が打ち出したキーワードが「シナリオ」です。これは、実際のイベントや都市、工場などのリアルな現場を、新技術の導入・検証の舞台として位置づける考え方です。
国家発展改革委員会のLi Chunlin副主任は、その具体例として現在開催中の第15回全国運動会を挙げました。開会式で使用された電力は、従来のディーゼル発電ではなく、「高信頼電力網+新型蓄電」と呼ばれる新しいソリューションで賄われたと説明しました。
これは、重要イベントの電源という社会的にリスクの高い場面において、新技術を適用する「シナリオ」です。安全性や安定性を確保しながら、同時に二酸化炭素排出の削減も図る取り組みとして位置づけられています。
5G・AI・ロボット…「シナリオ」育成の5つの重点分野
会見では、工業・情報化部(Ministry of Industry and Information Technology)が、シナリオ型で重点的に育成していく5つの分野を示しました。いずれも産業のデジタル化・スマート化を支える中核技術です。
1. 5Gプラス(5G+)応用
第一の柱は「5G+」応用です。5Gを活用したスマート工場の建設を進めるとともに、
- コンピュータビジョンによる品質検査
- 設備の遠隔操作・遠隔制御
といった統合ソリューションの普及を目指します。製造ラインの自動化や高度なデータ活用につながる分野であり、現場での「シナリオ」構築が重要になります。
2. AIプラス(AI+)による製造業の高度化
二つ目は「AI+」による製造業の全体最適化です。人工知能(AI)を、
- 研究開発(R&D)
- 生産プロセス
- 設備の保守・保全
といった製造のあらゆる段階に組み込む方針が示されました。単発の実証実験にとどまらず、工場全体やサプライチェーンを通じた「シナリオ」を設計していくことで、効率と品質の向上を狙います。
3. ロボットプラス(Robot+)の本格展開
三つ目は「Robot+」です。産業用ロボットだけでなく、人型ロボット(ヒューマノイド)の活用も視野に入れ、次のような複雑な環境への導入が優先されます。
- 工場の製造現場
- 鉱山など危険度の高い環境
- 災害対応などの緊急現場
人が作業するには負担やリスクが大きい領域で、新しいロボット技術を実際に稼働させる「シナリオ」を積み重ねていくことで、安全性や信頼性の検証が進むとみられます。
4. 産業インターネットプラス(Industrial Internet+)の高度化
四つ目は「Industrial Internet+」です。ここでは、
- 5Gと産業インターネットを組み合わせた「5G+産業インターネット」
- 主要な産業サプライチェーンとの連携強化
が掲げられました。設備やセンサーをネットワークでつなぎ、リアルタイムのデータを活用することで、工場や物流、エネルギーなど各分野で新しいビジネス「シナリオ」を生み出す狙いがあります。
5. 北斗プラス(BeiDou+)で交通・物流をスマート化
五つ目は「BeiDou+」応用です。中国独自の衛星測位システムである北斗(BeiDou)を、
- インテリジェント交通システム
- スマート物流
などに広く組み込む方針が示されました。衛星測位データをベースにした配送最適化や、自動運転を支えるインフラなど、社会全体の効率化につながる「シナリオ」が想定されています。
規制改革と制度面の「土台づくり」
今回の議論は、技術そのものだけでなく、制度やルールのあり方にも踏み込んでいます。中国政府は、企業のイノベーションを妨げているとみられる「時代遅れの規制」を見直し、更新していく考えを示しました。
Li Chunlin氏は、シナリオ型イノベーションを進めるには、「制度的な障壁を取り除く抜本的な改革が必要だ」と強調しました。具体的には、
- 新技術を現場で試しやすくするためのルール整備
- 資金・人材・データなどの資源配分の最適化
といった点が重視されています。技術実証のスピードと安全性、そして公正な競争環境をどう両立させるかが、今後の焦点となりそうです。
日本や世界にとっての意味合い
中国の「シナリオ」型イノベーションは、国内政策にとどまらず、国際ビジネスやサプライチェーンにも影響を与える可能性があります。5GやAI、ロボット、衛星測位といった基盤技術は、多くの国や地域の企業にとっても重要なテーマだからです。
日本企業にとっては、
- 中国市場での新しい実証プロジェクトへの参加
- 5Gや産業インターネットを活用した共同開発
- スマート物流やインテリジェント交通分野での連携
などが検討テーマとなり得ます。一方で、自社の強みや技術ポジションを見極めつつ、どの分野・どの「シナリオ」に関わるかを慎重に選ぶことも重要になります。
中国が進めるシナリオ型イノベーションは、実際の現場を起点に技術を磨き、産業構造をアップデートしていく試みです。日本を含む各国の企業や政策担当者にとっても、自国の産業戦略やデジタル政策を考えるうえで、一つの参考例となりそうです。
Reference(s):
China to use real-world 'scenarios' to help grow new technologies
cgtn.com








