元ベルギー首相も注目 蘇州発「蘇超」草の根サッカーの熱狂とは video poster
元ベルギー首相イヴ・レテルム氏が約20年ぶりに中国・蘇州を再訪し、いま同市で急成長する草の根サッカーリーグ「蘇超(Suchao)」に注目しています。国際政治の舞台から少し距離を置き、なぜ一つのアマチュアリーグが都市全体を巻き込む熱狂を生んでいるのかを探ろうとしているのです。
20年ぶりの蘇州で、元首相が見ようとしているもの
レテルム氏が初めて蘇州を訪れたのは、およそ20年前のことです。当時は首相としての公式訪問でしたが、今回の旅の目的はまったく異なります。焦点は外交や経済協力ではなく、蘇州から生まれた草の根サッカーリーグ「蘇超」の台頭です。
レテルム氏は、ヨーロッパでも広く親しまれているサッカーが、中国の都市生活の中でどのように根づきつつあるのか、その現場を知ろうとしています。なぜアマチュアリーグがこれほどまでに人々の心をつかんだのか。その背景を理解することは、国際ニュースや都市文化を考えるうえでも示唆に富んでいます。
「蘇超」とは何か――江蘇フットボールシティリーグ
「蘇超」は、正式名称を「江蘇フットボールシティリーグ」とするアマチュアサッカー大会で、蘇州を拠点に展開されています。プロ選手ではなく、会社員や学生、自営業者など、日常の仕事や学業をしながらプレーする選手たちが主役です。
特徴的なのは、リーグが都市全体の「共通の話題」になっている点です。
- 週末や夜間に行われる試合が、市民の娯楽や交流の場になっている
- 地域ごとのチームが競い合い、地元意識や一体感を育てている
- SNSや動画配信を通じて、試合のハイライトや選手の素顔が広く共有されている
こうした要素が重なり、「観る側」と「プレーする側」が近い距離で交わる新しい都市スポーツ文化として、蘇州の人々に受け入れられていると見ることができます。
アマチュアなのになぜ盛り上がる? 3つの視点
国際ニュースとしても注目されるこの「蘇超」の盛り上がりには、少なくとも三つのポイントがありそうです。
1. 身近さが生む「応援したくなる距離感」
「隣の部署の同僚が出ている」「子どもの同級生がスタメンだ」――そんな身近さが、観客とピッチをつないでいます。スター選手ではなく、生活者としての選手たちだからこそ、観る側は自分を重ね合わせやすくなります。
この「自分ごと化」は、プロリーグとは別の意味で強い愛着を生み、スタジアムやグラウンドに足を運ぶ動機になっていると考えられます。
2. 都市ブランドとしてのサッカー
蘇州は伝統文化や水郷の景観で知られますが、近年はテクノロジーやサービス産業の発展も進んでいます。そうした中で、「蘇超」は都市の新しい顔として語られるようになっています。
市民が誇れるリーグがあることは、
- 都市の魅力を象徴するストーリーになる
- 外から訪れる人にとっての「話題のきっかけ」になる
- 世代や職業を超えた共通のコミュニティづくりにつながる
といった効果を生みます。レテルム氏のような海外の要人が注目すること自体、そのブランド力を物語っているとも言えるでしょう。
3. デジタル発信が熱狂を拡散
スマートフォンでの撮影やライブ配信、ショート動画の投稿など、デジタル技術は「蘇超」の広がりに欠かせない要素になっています。スタジアムに行けない人も、SNSでハイライトやゴールシーンをすぐに追いかけることができます。
選手の紹介動画や、試合前後の舞台裏を伝えるコンテンツが増えることで、リーグへの親近感はさらに高まります。こうしたオンラインとオフラインの往復が、熱狂を持続させる下支えになっていると考えられます。
元首相が読み解こうとする「サッカーの力」
レテルム氏の今回の訪問の中心には、「なぜ一つの草の根リーグが、都市の空気まで変えるほどの力を持ち得るのか」という問いがあります。欧州のサッカー文化をよく知る立場から、蘇州の現場を見つめることで、次のような点に関心を寄せていると考えられます。
- サッカーが市民同士の信頼やつながりをどう強めているのか
- 国境を越えたスポーツ文化の共有が、相互理解にどう貢献し得るのか
- 政治や外交の枠を離れた「人と人の交流」の場として、スポーツがどんな役割を持てるのか
こうした視点は、単にサッカーの話題にとどまらず、国際ニュースや都市政策、ソフトパワー(文化的影響力)のあり方を考える手がかりにもなります。
広がる中国のサッカー熱と、その背景
「蘇超」のような草の根リーグの盛り上がりは、2025年現在、中国で高まりつつあるサッカーへの関心の一端を映し出していると見ることができます。プロリーグや代表チームだけでなく、日常の生活空間の中でサッカーを楽しむ人が増えていることが、都市ごとのリーグの発展につながっていると考えられます。
健康志向の高まりや、チームスポーツを通じたコミュニケーションのニーズ、そして国際的なスポーツ文化への関心など、複数の要因が重なり合って、サッカーを取り巻く環境は変化しています。「蘇超」は、その変化が可視化された一つの象徴的な事例だと言えるでしょう。
日本への示唆――ローカルリーグの可能性
日本にも、Jリーグをはじめとするプロサッカーや地域リーグ、学生リーグが存在しますが、蘇州の「蘇超」は、ローカルリーグの新しい可能性を考える材料になります。日本の読者にとっても、次のような問いかけが浮かび上がります。
- 自分の暮らす街に、誰もが気軽に応援できる「身近なリーグ」はあるか
- SNSや動画配信をもっと活用すれば、地域スポーツの魅力はどう変わるか
- スポーツを通じて、世代や国籍を超えたつながりをどう築いていけるか
単なる勝ち負けを超えて、「誰と、どこで、どう楽しむスポーツなのか」を考えることは、日本のローカルスポーツをアップデートするヒントにもなりそうです。
「読みやすいのに考えさせられる」ニュースとして
元ベルギー首相の再訪という国際ニュースの側面と、「蘇超」という草の根サッカーリーグの物語は、一見別々の話のようでいて、共通して「人と社会をどうつなぐか」というテーマを含んでいます。
スポーツを通じて都市が変わるとき、そこにはいつも、市民一人ひとりの小さな選択と参加があります。蘇州発のサッカー熱をきっかけに、自分の周りの地域スポーツやコミュニティのあり方を見つめ直してみるのも良いかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com







