WWFトップが語る:中国、COP30で「自然と気候」統合のカギに video poster
ブラジル・ベレンで2025年12月8日(現地時間)に開幕した国連気候変動会議(COP30)で、中国が「自然と気候」を一体で進める国際議論のカギを握る存在として改めて注目されています。世界自然保護基金(WWF)国際事務局長キルステン・シュイト氏は、開幕前のインタビューで中国の役割と生物多様性保全への貢献を評価しました。
COP30が開幕 気候変動対策を国際優先課題の中心へ
第30回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP30)は、気候変動との闘いを国際社会の最優先課題の中心に据え直すことを目的に、ベレンで開幕しました。アマゾンに近い開催地で、気候と自然(生態系)をどう一体的に守るかが、大きなテーマになっています。
WWFシュイト氏「自然と気候は切り離せない」
WWFインターナショナルのキルステン・シュイト事務局長は、気候変動と自然保護を別々の課題として扱うやり方を見直すべきだと強調しました。
シュイト氏は次のように指摘します。
- これまで気候と自然は別々に議論されがちだったが、実際には深く結びついていること
- 自然や生物多様性の保全は、温室効果ガスの削減(緩和)にとって重要であるだけでなく、社会が気候変動に適応するためにも欠かせないこと
その背景にあるのが「自然に基づく解決策」という考え方です。森林や湿地、海洋などの生態系を守り、賢く活用することで、排出削減と災害リスクの軽減、地域の暮らしの安定を同時に実現しようとするアプローチです。
中国の「二つの山」理念が示すヒント
シュイト氏が特に注目したのが、中国が掲げる「二つの山」理念です。これは「緑水青山は金山銀山」という考え方で、きれいな水と豊かな山(自然環境)は、経済的価値に匹敵する、あるいはそれ以上の資産だという発想を示しています。
同氏は、「経済発展をいかに環境破壊なしに進めるか」という世界共通の課題に、この理念が正面から答えようとしていると評価しました。保護区の整備や種の回復、気候変動の緩和策など、中国の取り組みから他地域も学ぶことができるとしています。
中国が示す「成長と保全」の両立モデル
シュイト氏は、中国で進む「成長と自然保全の両立」の具体例として、次のような取り組みを挙げました。
- ジャイアントパンダの個体数回復に向けた保護と生息地の整備
- トラの個体群を守るための長期的な保全プログラム
- 陸上と海洋の保護区を拡充し、生態系ネットワークを強化する取り組み
これらは、経済成長を続けながらも、生物多様性を損なわない形で発展していくモデルの一例だと評価されています。
NDCとエネルギー転換での役割
中国は2025年9月、国連総会に自国の新たな「国別削減目標(NDC)」を提出し、長期的な気候行動へのコミットメントを示しました。この動きは、真剣な国家的取り組みの表れとして歓迎されています。
シュイト氏は、世界のエネルギー構造が変化しつつあり、再生可能エネルギーが初めて石炭を上回る重要な転換点を迎えつつあると指摘。その中で、中国が技術、投資、導入規模の面で重要な役割を果たしていると述べました。
COP15からCOP30へ 中国の生物多様性レガシー
中国は2022年に生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)の議長国を務め、世界の生物多様性分野で存在感を高めました。
その際、中国は「昆明・モントリオール生物多様性枠組」のとりまとめに中心的な役割を果たし、新たな「グローバル・バイオダイバーシティ・ファンド(世界生物多様性基金)」の創設にも貢献しました。この基金に対して、中国は最初の拠出国となっています。
シュイト氏は、2030年までに世界の陸地と海域の30%を保護することを目指す「30 by 30」目標に向けた中国の努力を高く評価し、COP30でも自然と気候を結びつける議論をリードし続けることへの期待を示しました。
「30 by 30」目標とCOP30の視点
「30 by 30」目標は、単に保護区の面積を増やすだけではありません。質の高い保全や先住の地域社会・住民の権利、持続可能な利用など、複合的な要素が問われます。COP30では、気候変動対策と同時に、こうした生物多様性の課題も議論の柱となっています。
今後の焦点となるのは、次のような点です。
- 気候と自然の枠組みをどう統合し、各国の政策に落とし込むか
- 生物多様性基金などを通じた資金支援の具体化
- 目標を実際の保全行動や地域の暮らしの改善につなげる仕組み作り
日本の読者にとっての意味
日本の読者にとっても、COP30と中国の動きは決して遠い世界の話ではありません。サプライチェーンやエネルギー、安全保障など、多くの分野で気候と自然は日本の経済・社会と直結しています。
特に次のような観点は、日本から見ても重要になりそうです。
- アジアにおける気候・エネルギー協力の方向性
- 企業の脱炭素と「自然関連リスク」への対応
- 生物多様性保全とライフスタイル・消費行動の変化
中国が進める自然保護と経済発展の両立の試みは、日本企業や自治体にとっても、政策設計やビジネス戦略を考えるうえでの一つの参照点となり得ます。
静かながら大きな転換点としてのCOP30
COP30は、排出量の数字だけを競う会議から、「自然と気候」を一体で捉え直す転換点になりつつあります。中国がこれまで積み重ねてきた生物多様性分野での経験や、「二つの山」理念に象徴される開発哲学は、そうした議論に具体的な厚みを与えています。
会議の最終的な合意文言だけでなく、自然と気候をどう結びつけるのかという視点から、COP30の議論の行方を追うことが、これからの国際ニュースを読み解くうえでの重要なポイントになりそうです。
Reference(s):
WWF chief: China paves the way for COP30's nature-climate action
cgtn.com








