文学は死なない イタリア国際文学賞受賞の中国作家Zhao Lihongが語る video poster
デジタル時代でも「文学は死なない」
デジタル化が加速する2025年、スクリーンが紙の本よりも身近になった今も、「文学は決して死なない」と語る作家がいます。中国の作家で詩人のZhao Lihong(ジャオ・リーホン)氏です。
Zhao氏は2025年、イタリアの権威ある文学賞であるPremio Montale Fuori di Casaの国際部門(International Section)を受賞しました。急速に進むテクノロジーの変化の中で、文学の未来をどう見ているのでしょうか。
数字があふれる世界で、物語はどこへ行くのか
今の社会では、数字やデータが物語よりも速く、そして広く拡散されます。ニュースもSNSも、短く消費される「情報」が中心で、時間のかかる読書や創作は後回しになりがちです。
その結果、画面は紙よりも重視され、作家の声はテクノロジーの進歩にかき消されているように見えることもあります。しかし、Zhao氏はその前提そのものに疑問を投げかけます。
「人間の本性がある限り、文学は死なない」
Zhao氏は、「人間の本性が存在する限り、美と真理へのあこがれが続く限り、文学は死なない」と強調します。ここで語られているのは、出版の形態やメディアの話ではなく、人間そのものへの信頼です。
彼にとって文学とは、単なる娯楽でも、過去の文化遺産でもありません。人が自分の内面を探り、他者とつながるための、ごく基本的な行為だと考えられています。
変わるのは「伝え方」、変わらないのは「本質」
Zhao氏は、新しいテクノロジーが物語の伝え方や届け方を変えることは認めつつも、それが文学の本質を損なうことはないと見ています。言葉の器が紙から画面へ、さらには音声や映像へと広がっても、核となる部分は変わらないという見方です。
彼が考える文学の「本質」は、次のようなものです。
- 考えを表現すること
- 感情を分かち合うこと
- 言葉を通じて人と人の心をつなぐこと
媒体がどれだけ進化しても、この3つの役割が続く限り、文学は生き続けるというメッセージが読み取れます。
社会の進歩とともに進化する文学
Zhao氏にとって、文学は時代に取り残されるものではなく、社会の進歩とともに進化し続ける存在です。社会が変われば、人々の悩みや喜びも変わり、それに応じて語られる物語のテーマも変わっていきます。
一方で、孤独、愛、恐れ、希望といった根源的な感情は、時代が変わっても人間から消えることはありません。だからこそ、文学は常に「今」を映しながらも、どこか普遍的な響きを持ち続けるといえます。
スマホ時代の読者への静かな問いかけ
Zhao氏の言葉は、スマートフォンでニュースや動画を見ている私たちにも、静かに問いかけているように感じられます。それは「テクノロジーが進んだからこそ、どんな言葉を読み、どんな物語を共有したいのか」という問いです。
忙しい日常の中でも、物語を読む時間を少しだけ取り戻すこと。SNSで流れてきた短いフレーズに心を動かされたとき、その背景にある物語に思いを巡らせてみること。そうした小さな行為も、文学を生かし続ける力の一部になるのかもしれません。
「文学はここにとどまる」
数字が世界を埋め尽くしていくように見える2025年ですが、Zhao氏は「文学はここにとどまる」と信じています。その根拠は、人間の本性と、言葉によって誰かとつながろうとする私たちの欲求です。
デジタルの波にのみ込まれそうなときこそ、ゆっくりとした読書や、一つの詩、一篇の短い物語が、思考を立ち止まらせてくれます。文学は、過去の遺産であると同時に、これからの社会を考えるための「現在進行形の道具」でもあるのだと、あらためて気づかされます。
Reference(s):
cgtn.com







