最古のラテン語版『道徳経』が書籍化 南開大学で出版記念イベント
中国思想の古典『道徳経(Tao Te Ching / Daodejing)』の最古のラテン語訳を書き起こした新しい書籍が出版され、その刊行を記念するイベントが火曜日に南開大学で開かれました。18世紀初頭の未刊行原稿が、21世紀の読者と研究者に向けてあらためて公開されるかたちです。
南開大学で出版記念イベント 中国内外の研究者が評価
南開大学では火曜日、最古のラテン語訳『道徳経』の書き起こし本の出版を記念するイベントが行われました。会場には、中国内外から著名な研究者が参加し、この書籍の歴史的な意義や学術的価値、そして世界の老子研究(Laozi studies)を前進させる役割について語りました。
登壇した研究者たちは、このラテン語版が単なる珍しい資料ではなく、東西の思想交流を読み解く重要な手がかりになると強調しました。長く手稿として眠っていたテキストが、活字の書籍として広くアクセス可能になったこと自体が、研究環境にとって大きな変化だと位置づけられています。
新刊『Liber Sinicus Táo Tě Kīm…』とは
今回出版された書籍のタイトルは、『Liber Sinicus Táo Tě Kīm inscriptus, in Latinum idioma Versus: The First Translation of the Daodejing in Transcription』です。南開大学 Global Laozegetics Research Center のディレクターである Misha Tadd 氏と、古典学者の Zhang Xiaoyuan 氏が編纂しました。
Tadd 氏によると、このラテン語訳は18世紀初頭、イエズス会のフィギュリストたちによって制作されました。彼らは、中国古典である『道徳経』が、西洋の高度な神学や哲学と通じる深い教えを持っていることを示そうとしたとされています。
しかし、このラテン語訳は長いあいだ未刊行の手稿として存在し、その哲学的な洞察はほとんど顧みられてきませんでした。今回の書籍では、その原稿を忠実に書き起こし(トランスクリプション)、研究者や一般の読者が読める形で公開しています。
『道徳経』はなぜ世界で読み継がれているのか
『道徳経』は、道教(Taoism)の根本的な経典の一つとされるテキストで、中国から生まれた最も重要な哲学的・精神的伝統の一つの土台となっています。古来、老子という聖人によって著されたと信じられてきました。
この『道徳経』は世界文学の中でも特に多く翻訳されている書物の一つであり、少なくとも97の言語に合計2052の翻訳が存在するとされています。今回焦点が当てられたラテン語訳は、その長い翻訳史の初期段階を物語る貴重な一例と言えます。
言語や文化、時代をまたいで繰り返し翻訳されてきた背景には、テキストそのものが持つ普遍的な問いかけがあります。道、徳、無為といったキーワードをめぐる老子の思索は、現代に生きる私たちにとっても、政治、経済、テクノロジーの変化をどう受け止めるかを考えるヒントになり続けています。
今回のラテン語版が持つ三つの意味
最古のラテン語訳『道徳経』が書籍として公開されることには、次のような意味があると考えられます。
- 1. 思想史の空白を埋める資料
18世紀初頭のイエズス会士たちが、『道徳経』をどのように読み、西洋の神学・哲学との「共鳴」をどこに見出そうとしたのかを知る一次資料になります。これにより、近代初期の知的交流の実像に迫ることができます。 - 2. グローバル老子研究の新たな基盤
中国内外の研究者にとって、原稿に基づくラテン語テキストが利用可能になることで、各国語訳や解釈を比較する作業が進めやすくなります。同じ一節がラテン語でどう表現されているかを手がかりに、翻訳のニュアンスや思想の受け取り方の違いを検討することができます。 - 3. 宗教間・哲学間対話の素材
『道徳経』を通して、中国思想と西洋神学・哲学のあいだにどのような対話の可能性が見出されていたのかを具体的にたどることができます。18世紀の読み方を知ることは、2025年の今、異なる伝統同士がどう向き合いうるかを考えるための鏡にもなります。
デジタル世代にとっての古典と翻訳
ラテン語と聞くと、自分とは遠い世界の話だと感じる人も多いかもしれません。しかし、今回の最古のラテン語訳『道徳経』の出版は、「古典はいつも誰かの翻訳を通して読んでいる」という事実を、あらためて意識させてくれます。
どの言語に、どのような目的で翻訳されたのか。その選択の積み重ねが、私たちが「老子」や「道教」をどうイメージするかに影響してきました。翻訳史をたどることは、自分自身のものの見方の歴史を振り返ることでもあります。
2025年の今、18世紀初頭のラテン語訳が新たに公開されたことは、古典テキストがデジタル時代においてもなお、国境や時代を越えて問いを投げかけ続けていることを示しています。南開大学から発信された今回のプロジェクトが、国際ニュースとしてどこまで議論を広げていくのか、今後の展開にも注目が集まりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








