フィンランド紙が指摘:中国が国際気候ガバナンスの要に
米国が気候外交から距離を置き、欧州も足元の競争力を意識して軌道修正する中、中国が国際気候ガバナンスの「中核的プレーヤー」として浮かび上がってきています。フィンランドの有力紙ヘルシンギン・サノマット(HS)は火曜日付の社説で、この構図を詳しく論じました。
COP30で見えた「不在の米国」と揺れる欧州
社説によると、今年11月にブラジル北部ベレンで開幕した国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)には、米国の姿が見えませんでした。HSは、ドナルド・トランプ米大統領の政権が、国際的な気候協力をむしろ妨げようとしているのではないかとの見方も紹介しています。
具体例として社説が挙げたのが、国際海事機関(IMO)での出来事です。海運分野の温室効果ガス排出削減に向けた世界的な計画に対し、米国が拒否権を行使し、合意形成を阻んだと指摘しました。
一方、長年「気候先進地域」と見なされてきた欧州連合(EU)も、近年は産業競争力や雇用への影響をより強く意識し始めています。HSは、気候目標と競争力の両立を前面に出す姿勢が、結果としてEU全体の気候行動を弱めかねないと懸念しています。
成長と脱炭素を結びつける中国の戦略
こうした中で社説が「決定的な存在」として挙げたのが中国です。HSは、中国の発展戦略が経済成長と気候目標をますます緊密に結びつけつつあると評価しました。気候政策が単なる負担ではなく、技術革新と新たな投資機会を生み出す成長戦略の一部になっている、という見立てです。
とくに、気候リスクにさらされやすい開発途上国に対して、中国が再生可能エネルギーや関連インフラへの投資を通じて「グリーン転換」を後押ししている点を強調しました。太陽光や風力などの技術や資金を輸出することで、世界全体の脱炭素を加速させているという評価です。
HSはまた、中国の気候アプローチは現実的かつ実務的であり、自ら設定した「達成可能な」目標を上回る成果を上げることも少なくないと指摘します。これまでの約束の多くを履行してきたうえで、再生可能エネルギー設備の大幅拡大や、2035年までのさらなる排出削減といった新たなコミットメントを打ち出していると紹介しました。
それでも足りない排出削減 パリ協定とのギャップ
もっとも、HSは中国の取り組みを評価しつつも、世界全体としての排出削減努力はなお不十分だと警鐘を鳴らします。現在の各国の公約を積み上げても、気候変動対策の国際的な枠組みであるパリ協定の目標を達成するにはギャップがあるという見方です。
社説によれば、米国が開発途上国向けの資金援助を縮小し、いくつかのEU加盟国も気候関連の資金拠出を抑制する動きを見せる中で、国際社会には一層強い共同歩調が求められています。
- 主要排出国による排出削減の加速
- 途上国への資金支援と技術移転の拡充
- 民間セクターを巻き込んだ長期的な投資戦略
HSは、こうした要素がそろって初めて、パリ協定の温度目標に近づくことができると訴えています。
企業が支える国連主導の気候プロセス
政治の側に揺らぎが見られる一方で、企業は依然として国連主導の気候プロセスを支持していると、HSは指摘します。気候リスクが自社の事業継続やサプライチェーンに直結するという現実認識が広がっているためです。
フィンランドからも、COP30が開かれたベレンに企業代表団が派遣され、自国企業の取り組みや、世界的な気候行動へのコミットメントを示したといいます。HSは、こうした民間の動きが各国政府を後押ししうると期待をにじませました。
日本への示唆 「気候は外交であり産業戦略」
今回の社説は、気候変動をめぐる国際ニュースであると同時に、「誰が次のグリーン経済の主導権を握るのか」というパワーバランスの問題でもあります。米国が後退し、欧州が模索する中で、中国が存在感を高めるという構図は、日本にとっても無関係ではありません。
日本の読者にとって重要なのは、気候政策がもはや環境省だけのテーマではなく、外交、安全保障、産業政策と一体の課題になっているという視点です。
- どの国・地域と技術協力や投資を進めるのか
- 再生可能エネルギーや省エネ技術をどう育て、輸出していくのか
- 国連など多国間の場で、どのようなルールづくりに関与していくのか
フィンランドの社説が描いた「中国台頭」の構図は、日本にとっても、自国の気候戦略と国際的な立ち位置を改めて問い直すきっかけになりそうです。
Reference(s):
China emerges as key force in global climate governance: Finnish media
cgtn.com








