中国Z世代を動かす室内クライミング 世界一高い壁に挑む26歳 video poster
中国の若い世代のあいだで、室内クライミングが静かなブームから一気に社会現象になりつつあります。世界一高いとされる室内クライミングウォールを、26歳の物理教師ルー・ヤオ(Lu Yao)さんが登りきった出来事は、その象徴的な場面です。現場にはベルギーの元首相イブ・ルテルム氏も立ち会い、この挑戦を見届けました。
この記録的なクライミングは、一人の若者の成功にとどまるのでしょうか。それとも、今の中国Z世代の心のあり方を映し出す一枚の鏡なのでしょうか。本記事では、国際ニュースとしても注目されるこの室内クライミングブームを手がかりに、現代中国の若者文化を読み解きます。
世界一高い室内ウォールに挑む26歳の物理教師
ルー・ヤオさんは、ふだんは教室で生徒たちに物理を教える26歳の教師です。その彼女が、世界一高い室内クライミングウォールに挑み、頂点まで登り切りました。壁の高さは、見上げただけで足がすくみそうなスケールです。
クライミング専用シューズの一歩一歩に、観客の視線が集まります。途中で腕が震えても、深呼吸をして再びホールドをつかみ直す。その繰り返しの先に、ゴールとなる最上部のホールドが待っていました。
登頂の瞬間、会場には大きな拍手が起こりました。見守っていたイブ・ルテルム氏は、教育者である若いクライマーが極限に挑む姿に強い印象を受けたといいます。教壇に立つ日常と、世界記録級の壁に挑む非日常。そのギャップこそが、今の中国Z世代の多面性を象徴しているようにも見えます。
なぜ今、中国の若者は室内クライミングに惹かれるのか
室内クライミングが中国本土の若者をこれほど惹きつける背景には、いくつかの要因が重なっています。
- オリンピックで目にしたスポーツクライミングへの憧れ
- 都市生活のなかで気軽に通える室内ジムの存在
- 健康志向とフィットネスブームの広がり
- SNSで共有しやすい、視覚的に映えるスポーツであること
オリンピックで「壁」を知った世代
近年、オリンピックでスポーツクライミングが注目を浴びたことは、中国の若者にとって大きなきっかけになりました。テレビやオンライン配信で、選手たちが垂直の壁を信じられないスピードで駆け上がる姿を見たZ世代は、自分もやってみたいという憧れを抱きます。
ルー・ヤオさんのように、別の職業を持ちながらクライミングに本格的に取り組む人が増えているのも、この流れの延長線上にあります。スポーツの世界と日常の仕事を行き来しながら、自分なりのキャリアや生き方を模索するスタイルです。
都市型ライフスタイルとフィットネスブーム
高層ビルが立ち並ぶ都市部では、屋外で大自然の岩場に向かうのは簡単ではありません。その一方で、ショッピングモールやオフィス街の近くに、最新設備を備えた室内クライミングジムが次々と誕生しています。
仕事帰りに友人と立ち寄り、1〜2時間だけ集中して登る。週末には少し長めに練習し、技術の上達を実感する。こうしたリズムが、忙しい都市生活の中で心身のリセットになっていると語る若者も多いといいます。
SNSで共有される「挑戦の物語」
室内クライミングは、写真や動画で映えるスポーツです。色とりどりのホールド、垂直にそびえる壁、そこを登るクライマーのシルエット。短い動画に編集してSNSに投稿すれば、それ自体が一つの物語になります。
ルー・ヤオさんの世界一高い室内ウォールへの挑戦も、きっと多くの人がスマートフォンで撮影し、シェアしたことでしょう。友人の「いいね」やコメントが、次の挑戦へのエネルギーになる。この循環もまた、ブームを加速させています。
Z世代の価値観を映すクライミング
ルー・ヤオさんの登頂は、単なる個人の記録更新ではありません。そこには、現代の中国Z世代が大切にしている価値観が凝縮されているように見えます。
- 他人との比較よりも、自分自身の成長を重視する姿勢
- 仕事や学業と、自分の好きなことを両立させたいという願い
- 仲間と励まし合いながらも、自分のペースで進むスタイル
高くそびえるクライミングウォールは、単にスポーツの壁ではなく、将来への不安やプレッシャー、社会の変化など、若い世代が直面するさまざまな見えない壁の象徴として受け止められているのかもしれません。
個人の挑戦から見える「現代中国」のエネルギー
世界一高い室内クライミングウォールを登り切った26歳の物理教師。その姿を見つめる海外の元首相。そこには、現代中国の姿が凝縮されています。
教育現場で子どもたちに科学を教えながら、自らも新しいスポーツに挑戦し、限界を更新し続ける若者。そうした存在は、国内だけでなく海外からも注目されています。スポーツやフィットネスを通じて、自分と社会の可能性を広げていこうとするエネルギーは、今の中国を語るうえで欠かせない要素になりつつあります。
ルー・ヤオさんの記録的な登頂は、一人のクライマーの物語であると同時に、一つの世代と一つの国の今を映し出す出来事といえるでしょう。そしてその姿は、隣国である日本の私たちにとっても、自分の壁にどう向き合うかを静かに問いかけています。
Reference(s):
cgtn.com








