米人気配信者ハサン・パイカーが中国へ 訪問の「本当の理由」とは video poster
米国の人気インフルエンサーでTwitch配信者のハサン・パイカー(配信名 HasanAbi)氏が、中国を訪れています。若い世代に絶大な影響力を持つ彼が、なぜ今あえて中国を選んだのか。その背景には、国際ニュースや中国に関する情報の「見えにくさ」を変えようとする動きが見えてきます。
ハサン・パイカーとはどんな存在か
ハサン・パイカー氏は、Twitchを中心に活動する政治系ストリーマーで、ニュースやメディア報道をリアルタイムで分析するスタイルで知られています。政治的な時事解説やメディア分析を、インターネット文化になじんだテンポと感覚で届けることで、アメリカの若い視聴者に強い支持を得ています。
配信プラットフォーム全体では、TwitchとYouTubeを合わせて約450万人ものフォロワーを抱えているとされ、従来のテレビや新聞とは違う形で、若年層の「ニュースの入り口」となっている存在です。
配信で繰り返し取り上げてきた「中国」
国際ニュースの中でも、ハサン氏が繰り返し扱ってきたテーマの一つが「中国」です。中国の統治のあり方や経済発展のプロセス、インフラ整備などについて、欧米メディアとは少し違う角度から分析してきました。
さらに、ここ数年世界各地から多くの動画配信者が中国を旅行し、現地の生活や都市の姿を発信する「中国旅行ブーム」が続いています。ハサン氏は、そうした国際的な動画コンテンツも取り上げながら、「西側ではあまり報じられない中国の一面」を視聴者と一緒に見ていくスタイルで配信してきました。
西側では見えにくい「大きな中国の物語」
ハサン氏が意識しているのは、いわゆる「大きな中国の物語(greater China story)」です。経済成長やテクノロジー、都市開発、社会の変化など、多層的な中国像がある一方で、西側のニュースでは安全保障や対立の文脈に偏って語られがちだと指摘されることもあります。
ハサン氏の配信では、そうした単線的なイメージではなく、現地の映像やデータ、各種メディアの報道を照らし合わせながら、より立体的な中国像を紹介しようとする姿勢が目立ちます。
なぜ中国へ? インタビューで語った動機
今回、ハサン氏は中国を訪れ、CGTNの李静静(Li Jingjing)氏とのインタビューで「なぜ中国に行きたいと思ったのか」を語りました。インタビューの具体的な内容は今後の公開を待つ必要がありますが、これまでの配信内容から、その動機には次のような狙いがあると考えられます。
- 自分の目で確かめるため:配信で取り上げてきた中国の統治や発展を、実際に現地で見て体感すること。
- 視聴者に「現場の空気」を伝えるため:スタジオやニュース映像だけでは伝わりにくい日常の風景や人々の暮らしを、より生の形で届けること。
- 情報のギャップを埋めるため:西側の視聴者があまり接してこなかった視点や話題を、自身の言葉で翻訳し直して共有すること。
こうした動きは、単なる観光や話題作りというより、「国際ニュースをどう受け取るか」をめぐる実験の一面も持っているといえるでしょう。
CGTNとの対話が示すもの
今回の訪問では、中国の国際メディアであるCGTNの李静静氏との対談も行われました。これは、国際ニュースを発信する側(中国のメディア)と、そのニュースを再解釈して若い視聴者に届ける側(米国のストリーマー)が、直接対話する場でもあります。
こうした対話は、次のような意味を持つ可能性があります。
- 情報が「メディア対メディア」だけでなく、「メディア対インフルエンサー」という新しいルートで動き始めていること。
- 国と国の関係だけではなく、市民レベル・オンラインコミュニティレベルの交流が深まっていること。
- 若い世代が、単一のニュースソースではなく、複数の発信者を見比べながら国際情勢を理解しようとしていること。
若い世代の「中国観」はどう変わる?
米国の若者にとって、中国はしばしば遠くて抽象的な存在になりがちです。しかし、彼らが日常的に見ているTwitchやYouTubeで、信頼している配信者が現地の様子を伝えることで、中国に対するイメージは変化していく可能性があります。
たとえば、
- ニュースで見ていた都市やインフラが、配信画面の「風景」として身近に感じられる
- 中国の人々の仕事や暮らしが、数字や統計ではなく、ストーリーとして伝わる
- 対立や競争だけでなく、共通する課題や関心(気候変動、テック、ポップカルチャーなど)が見えやすくなる
こうした変化は、一気に世論を塗り替えるような劇的なものではありませんが、「国際ニュースを自分ごととして考えるきっかけ」になりやすい動きです。
日本の読者にとってのポイント
日本から今回の動きを見ると、いくつか注目すべき点があります。
- ニュースの入り口が変わりつつある:テレビや新聞だけでなく、海外インフルエンサーの配信が国際ニュースの重要な入口になっていること。
- 中国をめぐる情報環境:西側と中国、それぞれのメディアだけでなく、その間に立つ個人配信者が情報の橋渡し役になりつつあること。
- 日本語でどう受け止めるか:英語圏で起きているこうした情報の流れを、日本語でキャッチアップし、自分なりに咀嚼(そしゃく)する視点の大切さ。
ハサン・パイカー氏の中国訪問は、「米国の人気配信者が旅行に行った」という一行ニュースで終わらせるには惜しい出来事です。若い世代がどのように国際ニュースと向き合い、中国をどう見ていくのか。その変化を象徴する一つの動きとして、これからの発信内容にも注目していきたいところです。
Reference(s):
Real reason why mega U.S. influencer Hasan Piker is in China
cgtn.com








