中国のカーボン市場がCOP30で注目 排出量取引の経験を各国と共有
ベレンのCOP30で、中国のカーボン市場に熱い視線
2025年現在、ブラジル・ベレンで開かれている国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)で、中国の全国カーボン市場の経験が国際社会から大きな関心を集めています。会場内の中国パビリオンで開かれたサイドイベント「中国カーボン市場の質の高い発展と経験共有」では、中国の取り組みが詳しく紹介されました。
カーボンプライシングや排出量取引制度の行方をめぐる国際ニュースとして、押さえておきたい動きです。
登壇したのは、中国の生態環境分野を担当する李高副大臣です。李氏は、中国が全国規模の排出量取引制度(Emissions Trading System:ETS)を整備してきた過程を振り返り、その中で得られた「3つの学び」を整理して共有しました。
中国ETSの「3つの学び」
1.国情に合った市場設計
李氏がまず強調したのは、「国の実情に合った市場づくり」です。中国では、エネルギー構造、産業構成、地域ごとの発展段階が多様であるため、一律に海外モデルをなぞるのではなく、自国の状況に合わせて制度設計を進めてきたと説明しました。
例えば、対象とする業種や企業の範囲、排出枠の配分方法、監督・報告のルールなどを段階的に整備しながら、市場の安定性と企業の受容性を両立させることを重視してきたとしています。
2.デジタル技術によるデータ品質の向上
2つ目のポイントは、「データの質と管理能力を高めるための技術活用」です。排出量取引制度では、企業の排出量データが正確でなければ市場の信頼性が揺らぎます。中国では、デジタルプラットフォームやオンライン報告システムなどの技術を活用し、排出データの収集・検証・管理プロセスを高度化していると説明しました。
こうした基盤整備は、市場の透明性を高めるだけでなく、将来的な制度拡大や国際連携の前提条件にもなります。
3.国際協力と市場の相互認証
3つ目は、「国際協力の深化と市場の相互認証」です。李氏は、カーボン市場は一国だけで完結するものではなく、各国が経験を共有し、相互に学び合うことで、世界全体の排出削減コストを抑えつつ、低炭素投資を広げられると指摘しました。
そのうえで、中国として、他の国や国際機関との協力を深め、市場ルールや基準の整合性を高めていく姿勢を示しました。
2024年以降の拡大 取引量は7億トン超に
李氏は、中国の排出量取引制度がここ数年で大きく拡大している点も具体的な数字を示して紹介しました。2024年以降、中国のETSは、これまでの発電部門に加えて、鉄鋼、セメント、アルミニウムといった素材産業にも対象を広げています。
その結果、2025年10月末までの累計取引量は7億7,000万トンを超えるカーボン排出枠に達し、取引額は約518億元(約73億ドル)に上りました。単なる「実験的な市場」ではなく、実体を伴った大規模な市場として機能していることがうかがえます。
自主的排出削減市場も急成長
政府が制度として運営するETSに加えて、中国では自主的な排出削減クレジットの市場も急速に成長しているといいます。企業や地域が自発的に実施した排出削減や森林保全などのプロジェクトを「クレジット」として認証し、売買できる仕組みです。
李氏は、この自主的市場が、省エネ・再生可能エネルギー・自然由来の吸収源といった低炭素技術の普及を後押しするとともに、生態系サービスや環境保全の取り組みを「経済的価値」に変える役割を果たしつつあると説明しました。
世界銀行とEUが評価 「安定的に拡大するモデル」
このサイドイベントでは、各国政府や国際機関の代表も、それぞれのカーボン市場の経験を共有しました。その中で、中国の取り組みに対する評価の声も相次ぎました。
世界銀行の気候変動担当グローバルディレクターであるヴァレリー・ヒッキー氏は、中国のETSを「安定的に拡大しているモデル」と位置づけたうえで、各国が経験を持ち寄ることで、カーボン市場をより効率的かつ包摂的な仕組みにしていくべきだと呼びかけました。
欧州委員会気候総局で国際問題と気候資金を担当するダイアナ・アコンシア氏も、中国が排出量取引制度を強化していることを歓迎すると述べました。そのうえで、欧州連合(EU)が中国と炭素価格付けでの協力をさらに深める用意があること、そして他の途上国が効果的な制度を構築できるよう支援していきたい考えを示しました。
日本と世界への示唆 「データ」「段階的拡大」「協力」の三点
今回の議論は、日本を含む各国にとっても示唆に富む内容です。特に重要なのは、次の3点だと言えます。
- 国情に合わせ、対象業種やルールを段階的に拡大していくこと
- 信頼できる排出データを確保するためのデジタル基盤への投資
- 市場の相互運用性を見据えた国際協力とルール整合
カーボン市場は、単なる環境政策ではなく、産業構造や投資の流れを変える「経済政策」の側面も持ちます。COP30で共有された中国の経験と、世界銀行やEUからの評価は、今後の国際的なカーボン市場づくりに向けた一つの参考モデルとして注目されそうです。
Reference(s):
China's carbon market development draws global attention at COP30
cgtn.com








