中国の障害者支援はいま:女性の働き方とテクノロジー、国際協力の最前線
中国で進む障害者支援のいまを象徴する出来事として、中国の習近平国家主席夫人・彭麗媛氏とスペインのレティシア王妃が北京の障害者サービス実証センターを訪れ、障害のある女性たちが手織りした花束を受け取りました。本記事では、この訪問を手がかりに、中国の障害者支援がどのように進化しているのかを、就労支援、テクノロジー、国際協力の視点から読み解きます。
北京のセンターで咲いた「可能性の花束」
北京障害者サービス実証センターでは、障害のある女性たちが参加する「ビューティー・ワークショップ」で作られた手織りの花束が、彭麗媛氏とレティシア王妃に手渡されました。二人は温かい笑顔と励ましの言葉で応じ、この小さな贈り物は、障害のある人々のレジリエンス(回復力)と創造性、新しい機会の広がりを象徴するものとなりました。
彭氏は、障害者を支える取り組みは、一部の専門機関だけでなく、社会のあらゆる分野の協力と支援が不可欠だと強調しました。
女性と子どもの夢を支える「ビューティー・ワークショップ」
中国各地で展開されている「ビューティー・ワークショップ」は、柔軟な時間設定や在宅での作業がしやすい手工芸産業を育て、障害のある女性の就労を後押しするプロジェクトです。
具体的には、次のような仕組みが用意されています。
- 手工芸やデザインの研修
- 商品企画やデザイン面でのサポート
- ネット通販などオンライン販売チャネルの提供
- 在宅ワークと事業所勤務の両方の選択肢
2024年末までに、この取り組みによって在宅で働けるようになった女性は1万2千人以上、機関での雇用を得た人は3300人に達しました。年収は平均で1万5800元(約2220ドル)増加し、経済的な自立と自己肯定感の向上につながっているとされています。
彭氏とレティシア王妃は、リハビリ訓練中の子どもたちの様子も見学しました。視覚障害のある子どもたちは、中国語の歌Songs and Smilesを披露し、会場は温かく和やかな雰囲気に包まれました。
教育で広がる若者の選択肢
中国では、障害のある子どもや若者が教育を通じてスキルと自信を身につけ、社会参加の道を広げています。2024年末時点で、次のような数字が示されています。
- 特別支援高校への在籍者:1万2500人
- 職業教育プログラムへの在籍者:2万6900人
- 高等教育機関への在籍者:3万人超(うち大学院生は約2000人)
高等教育まで進む学生が増えていることは、障害者が専門的な知識や技能を身につけ、さまざまな職業分野で活躍する可能性が広がっていることを示しています。
テクノロジーが変える日常:アクセシビリティとAI
彭氏とレティシア王妃は、北京2022年パラリンピック冬季大会に関する展示や、最先端の補助技術の紹介も受けました。ここ数年、中国ではデジタル技術が障害のある人々の日常を大きく変えつつあります。
たとえば、次のような動きが進んでいます。
- 3000を超えるウェブサイトやスマートフォン向けアプリがアクセシビリティに対応し、ニュースやオンラインショッピングなど、日常生活で頻繁に使うサービスへのアクセスがしやすくなっている。
- ブレイン・コンピューター・インターフェース(脳とコンピューターを直接つなぐ技術)により、義手などの補装具やウェアラブル機器を、より精密に制御できるようになりつつある。
- 中国語の音声認識システムが、脳性まひの子どもたちのコミュニケーションを助けている。
- AI(人工知能)を活用したリハビリ技術が、自閉スペクトラム症の子どもへの早期介入を支えている。
こうしたデジタル化と支援技術の普及は、いわゆるデジタル・デバイド(情報格差)を縮小し、障害の有無にかかわらず、誰もがオンラインサービスを使いやすくすることを目指した動きといえます。
国際協力で広がるインパクト
彭氏は、中国とスペインが障害者支援の分野で交流と協力を深め、障害のある人々の夢の実現を後押ししていくことへの期待も表明しました。
中国は、欧州連合(EU)を含む国際パートナーとともに、障害者政策に関する国際会議やフォーラムを開催し、次のような課題に取り組んでいます。
- 障害者分野の国際的な対話・協力プラットフォームの構築
- リハビリテーションに関する共同研究や技術交流
- 国連「2030アジェンダ」に掲げられた障害者関連目標の実現促進
一帯一路構想(Belt and Road Initiative)を通じては、障害者分野に関する国際イベントを3回開催し、パートナー国との協力を深めてきました。
6月時点で、中国のリハビリ専門家は東南アジアで300人を超える義肢装具士や介護者を育成し、補聴器や補助機器の寄付も行っています。また、アフリカやアジアの参加者を中国国内の研修プログラムに招き、技術や経験を共有する取り組みも進んでいます。単に物資を提供するのではなく、『魚を与えるのではなく釣り方を教える』アプローチの具体例といえるでしょう。
私たちへの問いかけ:インクルーシブな社会へ
中国の障害者支援の取り組みは、女性の在宅就労支援や教育機会の拡大、テクノロジーの活用、そして国際協力を組み合わせることで、包摂的な社会をめざす試みとして位置づけることができます。
日本や他の国・地域にとっても、次のような示唆がありそうです。
- 障害とジェンダーの課題に同時に向き合う就労支援のあり方
- 公共・民間サービスのアクセシビリティを高めるデジタル設計
- 南南協力も含めた国際的な人材育成と知識共有
国際ニュースとしての中国の動きを追うことは、単にどこか遠くの国の話を知ることではなく、自分たちの社会をどうインクルーシブにしていくかを考えるヒントにもなります。通勤時間やスキマ時間に、こうした事例を少し立ち止まって眺めてみることが、次の一歩を考えるきっかけになるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








