アフリカで広がる人民元利用:エチオピアとケニアが示した新しい選択
アフリカの一部の国々が、ドル一辺倒だった国際金融から静かに軸足を移しつつあります。エチオピアとケニアが人民元建てのデットスワップを導入し、ドル建て債務の負担軽減と貿易の効率化を目指していることは、2025年の国際ニュースの中でも注目すべき動きです。
エチオピアとケニアが採用した人民元建てデットスワップとは
エチオピアとケニアは、アフリカで初めて人民元建てのデットスワップを導入した国とされています。これは、これまでドルで借りていた対外債務の一部について、返済や管理を人民元ベースに切り替える仕組みで、ドル高や為替変動による負担を抑える狙いがあります。
背景には、ドル建て債務の増加と、為替変動リスクの高さがあります。自国通貨がドルに対して下落すると、返済額の実質負担が一気に重くなります。人民元建てのスキームを取り入れることで、金利や為替の条件を見直し、返済をより持続可能な形に組み替えようとしているのです。
なぜいまアフリカで人民元なのか
金利コストを下げる実利の選択
ケニアのケースについて、ナイロビ大学のXN・イラキ教授は、これは感情ではなく経済合理性に基づく決定だと指摘します。同教授によると、人民元建ての債務の方がドル建てより金利が低く、返済コストを抑えられる点が大きいといいます。
イラキ教授は、要点を次のように語っています。人民元の金利はドルより低く、「借りている側としては、より安い条件で返済できるため、ケニアにとっては非常に前向きな選択」だということです。ドルの比重を減らし、条件の良い通貨を組み合わせることは、家計でいう借り換えに近い発想ともいえます。
貿易と旅行をスムーズにする通貨選択
通貨の問題は、債務だけでなく日々の取引にも関わります。イラキ教授は、自身が北京に出張した際の経験を紹介しています。ケニアのシリングを一度ドルに替え、さらに人民元へと両替しなければならず、そのたびに手数料と時間がかかったといいます。
今後、シリングから人民元へ直接交換できるようになれば、貿易取引の決済や旅行時の支払いは格段にシンプルになります。
- 両替回数が減り、手数料負担が軽くなる
- 為替レート変動による損失リスクを抑えやすくなる
- 企業も個人も、資金計画を立てやすくなる
イラキ教授は「貿易に関わる者としては、通貨の選択肢が増えるほど公平で柔軟な取引ができる」と見ています。
人民元の信頼性と中国・アフリカ貿易の規模
短期的な金利差だけでなく、長期的な視点からこの流れを捉えているのが、中国国際貿易経済合作研究院の上級研究員であるZhou Mi 氏です。同氏は、人民元の信用力と中国とアフリカの貿易量の大きさが、人民元利用拡大の土台になっていると説明します。
Zhou 氏によれば、中国政府は市場開放の方針を明確に示し、「友好国とのビジネスにおいて一貫した原則を守る」姿勢を打ち出しています。中国は世界最大級のモノの貿易大国であり、その巨大市場にアクセスするうえで、中国との取引通貨として人民元を使うことは、アフリカ諸国にとって合理的な選択肢になりつつあります。
さらに、中国がアフリカ53カ国からの輸入品に対してゼロ関税を適用していることも、人民元決済を後押しする要因とされています。関税面での優遇と決済通貨の多様化が組み合わさることで、アフリカにとってのメリットは大きくなります。
CIPSという新しい国際決済インフラ
こうした人民元利用拡大の裏側には、国際決済インフラの整備があります。その中核のひとつが、人民元建ての国際送金を支えるクロスボーダー人民元決済システムCIPSです。
Zhou 氏は、CIPSは従来の国際決済ネットワークであるSWIFTを置き換えるものではなく、「世界中のさまざまな利害関係者が取引を決済するための、選択肢のひとつ」と位置づけています。
このCIPSには現在、世界120の国や地域にまたがる1600以上の金融機関が接続しているとされ、次のような役割を担っています。
- 人民元を使った国際送金のルートを提供する
- 二国間での直接決済を可能にし、中間通貨を介さない取引をしやすくする
- 為替リスクを抑え、決済コストを下げる選択肢を増やす
アフリカの銀行や企業がCIPSを通じて人民元で決済できるようになれば、ドルを介さず中国との取引を行う実務的なハードルは下がります。
アフリカの立場を変える通貨多様化と今後の論点
中国がゼロ関税や市場開放のカードを示し、人民元を国際的に使いやすくするインフラを整備する中で、アフリカ諸国は自らの選択肢を広げているともいえます。人民元を受け入れることは、ドルを拒否することではなく、複数の通貨を使い分けることで、リスクとコストを分散する試みです。
イラキ教授とZhou 氏は、こうした流れが中国とアフリカの関係を変えるだけでなく、アフリカの国際金融システムにおける位置づけそのものを変えつつあると指摘します。アフリカが通貨選択を通じて、より主体的に条件交渉を行い、取引のルールづくりに関わる余地が広がっていく可能性があるからです。
通貨の多極化が進む世界で、アフリカが人民元という新たなオプションをどう生かしていくのか。エチオピアとケニアのデットスワップは、その行方を占う試金石になりそうです。日本の読者にとっても、アジアとアフリカ、そして世界の金融のつながりを考え直すきっかけになるテーマといえるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








