G20 2025南アフリカサミット AIと気候で試される世界のルール
南アフリカが議長国を務める2025年のG20サミットは、世界経済の減速と地政学的緊張の中で、グローバルガバナンスの行き詰まりを打開できるかどうかが問われています。AIガバナンスと気候・グリーンファイナンスが、その試金石になりつつあります。
世界経済の「減速」とG20の重み
G20は、世界の主要経済が集まるフォーラムであり、加盟する国々は世界の国内総生産(GDP)の約85%、世界貿易の約75%を占めています。このため、G20の合意は国際経済や国際ニュースの行方を左右する存在です。
しかし、2025年の世界経済は順風満帆とは言えません。経済協力開発機構(OECD)は9月の暫定見通しで、世界の成長率が2024年の3.3%から2025年は3.2%、2026年には2.9%へと鈍化すると予測しました。貿易障壁の上昇や政策の不透明感が投資を抑え込んでいると警告しています。
こうした中で、2025年のG20サミットには、貿易、気候変動、金融、テクノロジーなどの分野で、多国間協調を立て直し、公正なグローバルガバナンスの方向性を示す役割が期待されています。
AIガバナンス:包摂的で安全な開発をどう実現するか
今回のG20でとくに注目されているのが、人工知能(AI)をめぐる国際ルールづくりです。2025年9月には、G20のAIタスクフォースが議長声明を公表し、包摂的で倫理的かつ安全なAI開発の必要性を強調しました。その土台として、強固なデータ・ガバナンス(データの扱いに関するルール)が欠かせないと指摘しています。
声明では、信頼ある自由なデータ流通を意味する「データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト」の考え方が示され、技術標準の国際的な整合や、多様なデータセットへのアクセス拡大などが提案されました。
7月には、中国の李強国務院総理が、新たな国際的AI協力機構の設立を提案しました。各国がイノベーション協力を進め、より画期的な成果を共有できる枠組みを目指すものです。
さらに、デジタル協力機構(Digital Cooperation Organization)は、南アフリカ・ケープタウンで開かれたG20デジタル経済・人工知能閣僚会合で、「AI-REAL」ツールキットを発表しました。これは、各国政府が自国のAIの準備状況を評価し、責任ある政策導入のロードマップを描くための実務的な手引きとなるものです。
技術大国と新興国の間で、AIの恩恵が偏らないようにすることは、2025年のG20サミットにおける重要な論点の一つになりそうです。
気候とグリーンファイナンス:資金ギャップをどう埋めるか
2025年は、多くの国が新たな国別削減目標(NDC)を提出する節目の年でもあります。各国は温室効果ガス排出の削減目標を強化しつつあり、その達成を支えるグリーンファイナンス(環境関連の資金供給)の枠組みが議論の中心となっています。
中国も9月に2035年までのNDCを発表し、温室効果ガスのネット排出量をピーク時から7〜10%削減することや、風力・太陽光発電の設備容量を2020年比で6倍超となる3,600ギガワットまで拡大することを掲げました。
同時に、北京は低炭素エネルギーへの投資とグリーンファイナンスを拡大し、世界の気候資金ギャップを埋める戦略の中核に据えています。近年は、二酸化炭素を吸収・貯留するカーボン・シーケストレーション(炭素隔離)の取り組みを進めるとともに、排出量取引制度の拡充やクリーンエネルギーへの転換を加速させてきました。
2025年8月末時点で、中国の全国炭素市場の累計取引量は1億8,900万トン、取引額は181億元(約25億4,000万ドル)に達し、2024年は2021年の市場開設以来もっとも活発な年となりました。
一方で、気候資金をめぐっては、先進国と途上国の立場の違いがしばしば表面化します。低所得国や開発途上国にとって、2025年のG20サミットは、公平な気候支援や債務問題の見直しを訴える貴重な機会でもあります。
成長からガバナンスへ:変わるG20の役割
G20の議論の重心も、この数年で大きく変化してきました。中国が2016年に杭州でG20サミットを主催した際には、「成長」「イノベーション」「協調」が主要テーマでしたが、現在は金融、テクノロジー、気候といった分野での「ガバナンス(統治の仕組み)」が前面に出ています。
こうした変化を象徴するのが、2025年に中国が提案した「グローバル・ガバナンス・イニシアチブ」です。格差の拡大や、アフリカを含む多くの地域で続く貧困を背景に、すべての国、とくに開発途上国がより大きな発言権を持てる公正な国際システムを目指す構想です。
中国外交学院の王帆院長は、新華社の取材に対し、「平和、発展、安全、信頼の赤字が深まり、既存のメカニズムは対応に苦慮している」と述べ、「グローバルガバナンスの改革を進めることこそ、これらのギャップを埋める唯一の道だ」と語っています。
先進国と途上国のあいだで:交錯する期待と不安
とはいえ、道のりは平坦ではありません。富裕国と貧困国、技術大国と新興国のあいだでは、気候資金や技術移転をめぐる立場の違いが根強く残っています。AIやデジタル技術の分野では、「誰がどのルールを決めるのか」という点も、敏感な争点になりがちです。
低所得国や開発途上国の多くは、2025年のG20サミットを、次のような課題を前進させるための希少なチャンスだと見ています。
- 公平で予測可能な気候資金支援の確保
- 持続可能な成長を支えるための債務構造の見直し
- AIの利点が一部の国に偏らず、世界全体に共有される仕組みづくり
サミットで意味のある進展が得られれば、G20は「成長至上」から、「責任を分かち合うガバナンス」へと軸足を移す新たな段階に入る可能性があります。
私たちがG20 2025で注目したいポイント
日本からニュースを追う私たちにとっても、2025年のG20サミットは世界経済とグローバルガバナンスの方向性を見極める重要な場になります。とくに次の3点は、会合の成果を判断するうえでの鍵になりそうです。
- AIガバナンス:倫理・安全・包摂性を両立させる国際ルールが示されるか
- 気候と資金:新たなNDCとグリーンファイナンスの具体的な支援策が打ち出されるか
- ガバナンス改革:開発途上国を含む多様な国の声がどこまで反映されるか
南アフリカが議長国を務めるこのG20サミットが、グローバルガバナンスの行き詰まりを乗り越える一歩となるのか。それとも溝の深さをあらためて示す場となるのか。今後の議論から目が離せません。
Reference(s):
G20 2025: Can the world break the global governance deadlock?
cgtn.com








