北京で国際AIガバナンス会議 安全とイノベーションを議論
急速に進化する人工知能(AI)をどう統治するかをめぐり、北京大学で国際円卓会議が開かれました。安全性とイノベーションを両立するためのAIガバナンス(AIのルールづくり)が、2025年の今、世界共通の課題となっています。
北京で開かれた国際ラウンドテーブル
最近、北京の北京大学(PKU)でAIガバナンスに関する国際ラウンドテーブルが開催され、中国と海外の研究者や産業界のリーダーが集まりました。会議では、急速に進むAI技術の発展がもたらす機会とリスクについて、多面的な議論が行われました。
開会あいさつで、北京大学人文社会科学学部副院長のWang Dong氏は、AIがかつてないスピードで産業・社会・国際秩序を変えつつあると指摘し、この時代を特徴づけるテーマの一つがAIガバナンスだと強調しました。安全を確保しつつイノベーションを促すには、大学、政策担当者、産業界の協力が不可欠だと訴えました。
北京大学人工知能研究院副所長のYang Xiaolei氏は、AIは新たな技術革命の中核的な原動力であり、大きなチャンスと同時に複雑なリスクも伴うと説明しました。そのうえで、AIの可能性を引き出しつつ「安全で、信頼でき、公平」な発展を実現するためには、グローバルな協力が不可欠だと述べました。
北京大学全球協力・理解研究所(Institute for Global Cooperation and Understanding)所長のJia Qingguo氏は、AIが生産性を高め、人類の発展を後押しする一方で、倫理的なジレンマや人間の制御を失うリスクといった深刻な課題ももたらしていると指摘しました。そのうえで、これらの課題に対応するには国際協力が欠かせないと強調しました。
登壇者たちの発言からは、次のような共通認識が見えてきます。
- AIの急速な進展は、社会全体のルールを見直すレベルの変化をもたらしている
- 安全性とイノベーションのどちらか一方ではなく、両立を図ることが重要である
- そのためには、一国だけでなく国際的な対話と協力が不可欠である
各国のガバナンスモデルと中国の取り組み
中国政法大学人工知能法研究院の院長であるZhang Linghan教授は、各国のAIガバナンスモデルの共通点と相違点を分析しました。多くの国が、法律や規制、業界ガイドライン、技術標準など複数の手段を組み合わせつつ、それぞれの政治・社会制度や行政能力に合わせたアプローチをとっていると指摘しました。また、ガバナンスモデルは各国の制度的なキャパシティに整合している必要があると述べました。
Concordia AIのシニアリサーチマネジャーであるJason Zhou氏は、中国のAI安全ガバナンスの現状について、政策や規制、技術標準の動向を紹介しました。そのうえで、欧州連合(EU)や米国の取り組みと比較しつつ、AIがもたらす安全保障上のリスクについて世界的な共通認識が高まりつつあると評価しました。また、安全性評価のためのベストプラクティスや検証用データセットを共有する形で、国際協力を一層強化すべきだと提案しました。
人間中心のAIと具体的リスク
米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の准教授Francis Steen氏は、社会がAIリスクを理解する上での限界を指摘しました。AIは人間の意図、データ、行動の延長であり、その反映でもあるとし、技術の開発とガバナンスの中心には常に人間が据えられるべきだと強調しました。今後のAIガバナンスは、人間の価値と責任を改めて確認することを土台にすべきだと問題提起しました。
モスクワ物理工科大学のIntelligent Transport Laboratoryを率いるDmitry Yudin氏は、安全面で最も差し迫った懸念として、自動運転や知能ロボット分野を挙げました。ロシアにおけるAIイノベーションの推進や、最近導入されたAI倫理ガイドラインの取り組みを紹介しつつ、規制当局が最先端技術を理解し受け入れやすくするため、国際的な実証プロジェクトや研修プログラムが有効だと提案しました。
複雑な地政学環境で求められる協調のルール
今回のラウンドテーブルは、複雑な地政学環境の中で、AIガバナンスに関する多様な視点と実務経験を共有する場になりました。安全性の確保とイノベーションの促進という一見相反する目標をどう両立させるかは、日本を含む各国・地域に共通する課題です。
2025年現在、世界各地でAIのルールづくりをめぐる議論が進む中、こうした対話の積み重ねが、今後の国際的な枠組みづくりの重要な手がかりになっていきます。日本やアジアの研究機関、企業、規制当局が、北京などで行われる議論とどのように連携していくのかも、今後注目すべきポイントと言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








