中国本土で日本映画の公開延期 高市首相発言と観客感情が映す映画市場
中国本土で予定されていた日本映画の公開が相次いで延期されています。きっかけは、高市早苗首相の発言をめぐる中国の観客の反発と、それを反映した市場の動きです。
何が起きたのか
中国メディアの中国メディアグループ(China Media Group=CMG)の報道によると、中国本土の映画輸入会社や配給会社は、複数の日本映画の公開時期を延期する「慎重な決定」を下しました。対象となったのは、アニメ映画「Crayon Shin-chan the Movie: Super Hot, The Spicy Kasukabe Dancers」や「Cells at Work」など、近く公開が予定されていた作品です。
決定の背景には、日本映画全体の興行成績の推移や、中国の観客の日本作品に対する感情の変化があるとされています。
その前段として、アニメ映画「Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba – The Movie: Infinite Castle – Part 1: Akaza Returns」は、中国本土で公開直後こそ、既存ファン層に支えられて好調なスタートを切りました。しかし、日本の高市早苗首相による挑発的な発言と受け止められたコメントが伝えられると、中国の観客から直ちに反発が起きました。
その結果、公開からわずか3日で同作品の興行収入は急減し、市場の熱気は急速に冷え込んだとされています。この急激な変化が、他の日本映画の公開戦略を見直す直接のきっかけとなりました。
公開延期の判断 観客感情と市場原理
今回の日本映画の公開延期について、輸入会社や配給会社は、今後予定されていた作品についても、日本側の挑発的な発言が中国の観客の受け止め方に必然的に影響を与えると見ています。そのうえで、市場原理に従い、観客の感情を尊重する形で公開を延期したと説明されています。
CMGによれば、判断の材料となったのは、少なくとも次のような要素です。
- 直近の日本映画全体の興行成績
- オンライン上を含む中国の観客の反応や議論
- 高市首相の発言に対する反発の広がり方
作品そのものの内容や出来栄えだけでなく、作品がどの国から来たのか、その国をめぐる最新のニュースや発言が、観客の「観たい」という気持ちに影響を与える――。今回の決断は、そうした現実を前提にしたビジネス上のリスク管理だといえます。
2025年の中国本土映画市場 数字が示す構図
CMGの報道によると、2025年11月16日時点で、中国本土の年間興行収入は455.43億元(約64億ドル)に達し、世界第2位の映画市場としての地位を維持しています。
このうち、中国本土の国内作品の興行収入は402.98億元(約57億ドル)で、全体の88.48%を占めました。国内作品の年間興行収入が400億元を超えたのは、中国映画史上3回目となります。
数字だけを見ても、中国本土では国内作品が圧倒的な存在感を持っていることがわかります。輸入作品、とりわけ日本映画は、一定のファン層を持ちながらも、市場全体から見れば限られた割合にとどまっています。こうした構図のなかで、観客感情の変化は、輸入作品の公開時期や本数に直接的な影響を与えやすいと言えます。
文化コンテンツと政治発言 切り離せない現実
映画やアニメなどの文化コンテンツは、本来であれば作品そのものの魅力で評価されたいと、多くのクリエイターやファンが望んでいます。一方で、今回の日本映画の公開延期や、人気シリーズ作品の興行急落は、政治的な発言や国際情勢が観客の感情に影響し、その結果として市場の動きも変わりうることを改めて示しました。
高市首相の発言をめぐる反発を受けて、中国本土の観客の一部は、日本作品から距離を置く選択をしました。それを受けた企業側は、市場の変化を敏感に読み取り、予定していた作品の公開をいったん見送る道を選んでいます。
こうした動きを「文化と政治が混ざり合いすぎている」と見る見方もあれば、「消費者が自らの感情に基づいて選択した結果」ととらえる見方もあります。どちらの立場に立つにせよ、作品が国境を越えて届く時代には、その背景にある言葉や態度も含めて受け止められる、という現実があることは否定できません。
なお、CMGの報道では、延期された各日本映画の新たな公開時期については言及されていません。中国本土映画市場が高い成長と国内作品の存在感を維持するなかで、日本映画をはじめとする輸入作品が今後どのような形で受け入れられていくのか、引き続き注目されます。
Reference(s):
Japanese film releases postponed in China over audience sentiment
cgtn.com








