武漢とマンチェスター、クリーンエネルギーで結ぶ「二つの産業都市」 video poster
かつて産業革命をけん引した英国マンチェスターと、中国中部の産業都市・武漢。2025年のいま、この二つの都市が「クリーンエネルギー」をキーワードに、新しい産業都市のモデルづくりに動き出しています。その象徴が、両都市が関わる「2025 China–UK Clean Energy Cooperation Forum」です。
この記事のポイント
- マンチェスターは2038年までのカーボンニュートラル(実質排出ゼロ)を掲げ、脱炭素の先進都市を目指している
- 武漢は水素エネルギーや新型蓄電、スマート製造の産業クラスターを育成し、クリーンエネルギー都市への転換を加速している
- こうした産業転換を背景に、「2025 China–UK Clean Energy Cooperation Forum」が両都市・両国の協力を象徴する場になっている
- フォーラム開幕にあたり、鄭沢光・駐英中国大使は、中国の気候変動対策と2035年に向けた排出削減目標への強いコミットメントを示した
産業革命の街・マンチェスター、次の挑戦は「脱炭素」
マンチェスターは、かつて世界の産業革命を象徴する街でした。石炭と工場、運河と鉄道が生み出した工業の街は、今や別の種類の「革命」に挑戦しています。それが、2038年までにカーボンニュートラルを達成するという、英国でも最も野心的な地域目標の一つです。
この目標は、単なる環境政策ではなく、都市の競争力や産業構造をどう変えていくかという、長期的な「都市戦略」でもあります。再生可能エネルギーの導入、省エネの徹底、建物や交通の電動化など、マンチェスターは都市全体での転換を進めています。
中国中部のハブ・武漢もクリーンエネルギー都市へ
一方、長江のほとりに位置する武漢は、中国中部を代表する産業と交通のハブとして知られてきました。自動車産業や重工業のイメージが強い都市ですが、現在はクリーンエネルギー分野での存在感を高めつつあります。
とくに、次のような分野での産業クラスター(企業や研究機関が集積した地域)が成長しているとされています。
- 水素エネルギー:燃料電池車や水素関連インフラに関わる企業・研究開発が集積
- 新型蓄電:次世代バッテリーなど、再生可能エネルギーを支える蓄電技術
- スマート製造:デジタル技術と自動化を組み合わせた高効率なものづくり
従来の「工業都市」というイメージから、クリーンエネルギーと高度な製造技術を軸にした「次世代産業都市」への再定義を図っていると言えます。
「2025 China–UK Clean Energy Cooperation Forum」とは
こうした両都市の産業転換のストーリーを背景に開かれているのが、「2025 China–UK Clean Energy Cooperation Forum」です。名称にあるとおり、中国と英国のクリーンエネルギー協力に焦点を当てたフォーラムで、都市間の連携を進める代表的な場になっています。
フォーラムでは、脱炭素をめぐる都市政策や、再生可能エネルギー、水素、蓄電、スマート製造といった分野でのビジネス・技術協力などが議題となります。武漢とマンチェスターという「産業都市どうし」が中心となっている点は、単なる外交イベントにとどまらず、産業と雇用の転換をどう進めるかという、現場の課題を共有する場でもあることを示しています。
鄭沢光大使が示した「共通課題」と中国のコミットメント
今回のフォーラム開幕にあたり、中国の鄭沢光(Zheng Zeguang)駐英大使は祝辞の書簡を送り、中国の気候変動対策への姿勢を強調しました。
鄭大使は書簡の中で、エネルギー安全保障と気候変動対策は「世界全体が直面する共通の課題」であると指摘し、中国が世界最大かつ最も速いペースで成長している再生可能エネルギーシステムを構築してきたと述べました。
さらに、2035年に向けて中国が初めて絶対量ベースの排出削減目標を設定したことに触れ、これは「揺るぎない決意と最大限の努力」を示すものだとしています。量的な削減目標を明確にすることは、国内の政策運営だけでなく、国際社会に対しても一定の予見可能性を与えるという意味を持ちます。
「二つの産業都市」が映す、都市転換のリアル
武漢とマンチェスターの取り組みは、次のような問いを投げかけています。
- 既存の産業基盤を持つ都市は、どのようにクリーンエネルギーへ移行できるのか
- 脱炭素は、雇用や地域経済にどのような新しい機会をもたらしうるのか
- 都市どうしの国際協力は、国レベルの気候外交をどう補完できるのか
2038年のカーボンニュートラルを掲げるマンチェスターと、水素・蓄電・スマート製造のクラスター形成を急ぐ武漢。二つの都市の挑戦は、気候変動対策を「コスト」ではなく「次の成長戦略」として位置づける試みでもあります。
日本の読者への示唆
日本でも、多くの都市が脱炭素や産業転換という共通の課題に向き合っています。武漢とマンチェスターの事例は、「重工業の街」「工場の街」といったイメージを持つ都市であっても、クリーンエネルギーと新しい産業クラスターづくりを軸に、将来像を描き直せることを示しています。
国際ニュースとしてのフォーラムの動きだけでなく、そこで語られている「都市の再設計」というテーマを、自分の暮らす街や働く企業の未来像と重ね合わせて考えてみることができそうです。
Reference(s):
cgtn.com








