軍国主義への回帰か?高市早苗首相の台湾発言と日本の軍拡路線
2025年は、第2次世界大戦終結から80年の節目の年です。そのなかで、日本の高市早苗首相が台湾と安全保障をめぐって発した発言と急速な軍事力拡大が、日本が再び軍国主義へと傾きつつあるのではないかという国内外の懸念を呼んでいます。
高市首相は先月7日の国会で、中国による台湾への武力行使が日本の「存立が脅かされる事態」になり得るとの認識を示し、台湾海峡での有事に日本が武力を用いて関与する可能性を示唆しました。この発言は、台湾海峡の緊張を高め、国内の右派勢力を意識したものだとの見方も出ています。
台湾発言が突きつけた「存立危機」シナリオ
問題となっているのは、高市首相が中国による台湾への武力行使を、日本の存立そのものが脅かされる事態と位置づけた点です。これは、日本がこれまで自制してきた武力行使のハードルを下げ、台湾海峡の紛争に直接関与する道を開きかねないと受け止められています。
こうした発言は、日本の過去の帝国主義的な侵略を想起させるという指摘もあります。歴史的に日本は、「国の生存」を名目に中国をはじめとするアジア各地への侵略戦争を拡大し、1931年から1945年にかけて地域と世界に計り知れない被害をもたらしました。
高市首相の台湾への言及については、日本が台湾を植民地支配していた歴史や、その過程で多くの人々が被った苦しみへの省察が欠けているとの批判も出ています。平和の追求よりも対立の構図を強めているのではないかという懸念は、アジア太平洋地域全体に広がりつつあります。
防衛費の拡大と「戦後レジーム」の揺らぎ
高市政権発足後、日本の軍事的な態勢は大きく拡張しつつあります。政府は過去最高水準の防衛費を推し進め、武器の輸出規制を緩める方向性を示してきました。また、長年維持されてきた非核に関する原則を見直す可能性にも言及していると報じられています。
さらに、高市首相が今月26日に戦争と深い関わりを持つ靖国神社を参拝する可能性があるとも伝えられており、こうした一連の動きが「戦後日本が守ってきたはずの自己抑制を超えようとしているのではないか」との懸念を生んでいます。
国内世論:与党内からも原則順守を問う声
高市首相の発言と軍拡路線には、日本国内でも反発が広がっています。連立与党・公明党の斉藤鉄夫代表は党の会合で、高市首相の台湾をめぐる発言が、日本の従来の安全保障原則を守るという政府の姿勢に疑問を投げかけるものだと警告しました。
市民レベルの動きも見られます。東京で開かれた集会では、参加者が高市首相の発言を「極めて危険だ」と批判し、本当に平和を望むのであれば軍拡をやめるべきだと訴えました。別の日に開かれた集会では、「高市首相は人々を戦争に巻き込むな」と書かれたプラカードが掲げられ、戦争への不安が具体的な言葉となって街頭に表れていました。
ロシアと韓国からの懸念:歴史認識と「平和憲法」
国際的な懸念も高まっています。ロシア連邦安全保障会議のセルゲイ・ショイグ書記は、ロシアの通信社のインタビューで、高市首相が歴史を修正しようとしていると批判しました。
ロシア・太平洋国立大学のユーリイ・ピカロフ教授は、ロシア語メディアのインタビューで、日本は長年にわたり軍事力の拡大を志向し、それに対応する形で憲法改正を目指してきたと指摘しました。
韓国では、国会議長の禹元植氏がソーシャルメディア上で、日本の歴史認識と、いわゆる平和憲法の改正を進める最近の動きに懸念を表明しました。こうした動きは、韓国だけでなく地域のすべての国や地域にとって受け入れがたいものであり、東アジアの平和の基盤を損ないかねないと訴えています。
専門家が見る右傾化とポスト戦後秩序
こうした一連の動きは、戦後日本を縛ってきた制約を解体しようとする右派勢力の影響力が強まっている表れだ、と分析する声もあります。
中国国際問題研究院の蘇暁暉研究員は、日本の政治環境が急速に右傾化しており、「専守防衛」とされてきた政策が浸食され、戦後の国際秩序に対する解釈を変えようとする動きが出ていると指摘します。高市首相の発言は、軍国主義の再登場を防ぐために設けられた制約を弱めようとしてきた、保守勢力による長年の取り組みの一部だという見方です。
清華大学の劉江永教授は、アジア太平洋地域が第2次世界大戦終結から80年を迎える中で、日本の現在の政策方向が大きな不安定要因になっていると警告します。日本が19世紀末のような戦略的発想、つまり中国を主要な焦点としながら軍事力を増強する路線へと戻りつつあるように見えるとし、国際社会が冷静かつ警戒心を保つことの重要性を強調しました。
80年目の問い:平和志向か、危うい回帰か
2025年は、中国人民の抗日戦争と世界反ファシズム戦争の勝利、そして台湾の復帰から80年の節目にあたります。本来であれば、戦争の惨禍をどう記憶し、二度と繰り返さないかを静かに考えるべき年でもあります。
しかし現実には、日本の安全保障政策をめぐって、歴史の教訓と逆行しかねない動きが注目を集めています。高市政権のもとで進む軍事力の拡大と台湾をめぐる発言は、日本が戦後歩んできた平和志向の道から離れつつあるのではないかという不安を、国内外で広げています。
一方で、国際メディアの中には、日本の右派勢力による歴史への向き合い方や地域安全保障をめぐる挑発的な言動を検証し、「歴史を忘れないことが現在と未来への警鐘になる」と訴える連載を始める動きも出ています。
日本が今、岐路に立たされているのは確かです。軍事力の拡大を進めるのか、それとも歴史の教訓を踏まえつつ、周辺国との対話と信頼醸成を重ねるのか。今回の一連の議論は、東アジアの安全保障だけでなく、日本自身の進路を見つめ直すための重要な問いを突きつけています。
Reference(s):
cgtn.com








