COP30ベレン会議で浮かぶ分断と共通点 中国の新NDCと実行への課題
地球温暖化が加速する2025年、ブラジル・ベレンで開かれている国連気候変動会議COP30では、各国の分断と同時に、実行へ向けた共通認識も浮かび上がっています。本記事では、会議の背景にある最新の気候データ、米国不在の影響、中国の2035年NDCの中身を整理します。
加速する気候危機 2025年の現実
世界気象機関WMOの最新報告によると、2025年1〜8月の世界の地上付近の平均気温は、産業革命前の水準より1.42℃(誤差±0.12℃)高くなりました。気候変動の現実はもはや否定できず、極端な気象現象をすでに多くの人が経験しています。
温室効果ガス濃度と海洋の熱含量も、2024年に記録的な水準となった後、2025年も上昇を続けています。海が蓄える熱が増えるほど、海面上昇や異常気象のリスクは高まり、影響は長期化します。
WMOのセレステ・サウロ事務局長は、この異例の高温の連続と記録的な温室効果ガスの増加について、次のように警告しています。
「今後数年間、地球温暖化を一時的にでも1.5℃以内に抑えることは、ほぼ不可能に近い。しかし一方で、今世紀末までに気温上昇を1.5℃まで引き戻すことは、科学的には十分可能であり、不可欠でもある」と述べ、行動の遅れが許されない状況だと強調しました。
COP30ベレン会議の焦点 分断とコンセンサス
こうした厳しいデータを背景に、現在ベレンで行われている第30回国連気候変動枠組み条約締約国会議COP30では、気候変動という差し迫った課題をめぐり、各国の利害の違いによる溝と、行動の必要性をめぐる共通認識の両方が現れています。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、COP30に先立つベレン気候サミットの首脳会合で、「もはや交渉の時間ではない。必要なのは実行、実行、そして実行だ」と訴えました。議論から具体的な実施へと舵を切れるかどうかが、今回の会議全体の成否を左右するテーマになっています。
実行のカギとなるNDC いまだ埋まらないギャップ
パリ協定の下で、すべての締約国は温室効果ガスの削減や気候変動への適応に向けた自国の行動計画として、自国が決定する貢献NDCを提出し、定期的に更新することになっています。
現在までに118カ国が新たなNDCを提出していますが、それだけでは世界全体の気温上昇を抑える目標を達成するには不十分だという懸念が根強くあります。
中国国家気候変動専門委員会の副主任である王毅氏は、NDCの実行に向けた大きな課題として、各国の目標水準が十分かどうか、そしてどれだけ世界目標とのギャップがあるのかを評価する必要がある点を挙げています。
さらに、多くの途上国がNDCを実現するには、資金面などの支援が欠かせないと指摘しました。支援がなければ、掲げた目標を達成することは難しくなります。王氏はまた、気候変動への適応も今年の重要な議題だとし、被害を抑えるためのインフラ整備や防災など、適応に向けた支援のあり方も問われていると述べています。
米国不在が投げかける影
今回のCOP30では、世界最大の経済規模を持ち、歴史的に最も多くの温室効果ガスを排出してきた米国が、公式代表団を派遣していないことも大きな波紋を呼んでいます。
中国の気候変動担当特使である劉振民氏は、「今回の会議が特に難しくなっている主な理由のひとつが、COPに米国が初めて不参加となったことだ」と述べました。
劉氏によれば、主要な先進国であり超大国でもある米国の不在は、多国間の気候協力の一体性に大きな影響を与えているほか、先進国内部の調整も難しくしているといいます。米国がパリ協定から離脱した後、その空白を埋める準備ができていないと語る国もあるとされています。
「こうした状況が、今回の会議で質の高い成果を得ることを一段と難しくしている」と劉氏は指摘しました。
王毅氏も、米国がパリ協定から2度目の離脱を行ったことは、単に自ら行動を拒むだけでなく、他国に追随を促すという点で、各国の行動力や意欲に影響を与えていると述べています。
中国の2035年NDC 野心と現実性のバランス
こうした中で、今年9月に発表された中国の2035年NDCは、COP30の議論とも深く関わる内容を含んでいます。主な柱は次のとおりです。
- 経済全体としてのネット温室効果ガス排出量を、排出ピーク時から7〜10%削減する。
- 一次エネルギーに占める非化石エネルギーの割合を30%超に引き上げる。
- 風力・太陽光発電の設備容量を2020年比で6倍超に拡大し、合計3,600ギガワットを目指す。
- 森林蓄積量を240億立方メートル超まで増やす。
- 新車販売において、新エネルギー車を主流とする。
- 全国統一の排出量取引市場を拡大し、主要な高排出部門を網羅する。
- 気候変動への適応能力を高め、気候適応型社会をおおむね構築する。
中国国家気候変動専門委員会の副主任である潘家華氏は、今回のNDCには二つの大きな突破口があると評価しています。ひとつは、二酸化炭素だけでなく全ての温室効果ガスを対象に含めたこと、もうひとつは、絶対量としての排出削減目標を導入したことです。
王毅氏は、この2035年NDCを「野心的でありながら現実的でもある」と表現しました。「明確な目標を示すことで、より具体的な実施策を整え、より良い結果を目指すことができる」と強調し、実行段階での工夫と努力の重要性を語っています。
実行へ向けて問われる視点 日本の読者が押さえたいポイント
今回のCOP30をめぐる議論からは、少なくとも三つの論点が浮かび上がります。
- 科学は危機の深刻さを明確に示している一方で、各国の現在の行動はまだ目標と大きく乖離していること。
- NDCの実行には、途上国への資金支援を含む国際協力の枠組みが不可欠であること。
- 大きな排出国の不在や後退が、多国間プロセス全体の信頼性とスピードに影響を与えること。
日本を含む多くの国にとっても、COP30は単なる海外のニュースではなく、自国のエネルギー政策や産業戦略、日常生活の選択にもつながるテーマです。
今後、各国が次のNDCをどう具体化し、国内でどのように実行していくのか。そのプロセスを丁寧に見ていくことが、気候危機の時代を生きる私たち一人ひとりの視野を広げるきっかけになりそうです。
Reference(s):
COP30: Divisions, consensus, goals amid global climate urgency
cgtn.com








