中国と南アフリカの保健協力:医療チームとHIV対策、伝統医学がつなぐグローバルサウス
中国と南アフリカの保健協力が示すもの
中国と南アフリカのあいだで進む保健協力が、2025年の国際ニュースとして静かに存在感を高めています。長年の医療チーム派遣からHIV/AIDS対策資金、伝統中国医学の連携まで、グローバルサウス同士のパートナーシップがどのように命と健康を支えているのかを整理します。
数十年にわたる医療チーム派遣と「保健共同体」
両国の保健協力の土台になっているのが、中国から南アフリカへの医療チームの派遣です。数十年にわたり、中国の医師、看護師、公衆衛生の専門家が南アフリカ各地、特に医療サービスが行き届きにくい地域に赴いてきました。
こうした中国の医療チームは次のような役割を担っているとされています。
- 病院や診療所での臨床診療
- 感染症対策を含む疾病予防や公衆衛生活動の支援
- 妊産婦と子どもの健康を守る母子保健サービス
- 伝統医学を含めた健康教育や地域住民への啓発
一帯一路の公式ポータルサイトによると、中国の海外医療チームは中国・アフリカ協力の中でも最も息の長い柱の一つとされ、「中国・アフリカの保健共同体」づくりの基盤になっていると位置づけられています。パンデミックの局面でも、こうした人的支援を通じて連帯を示してきた点は見逃せません。
HIV/AIDSとの闘いを支える新たな資金
近年、中国は国際保健、いわゆるグローバルヘルスの分野で役割を高めています。その象徴的な動きの一つが、南アフリカのHIV/AIDS対策への資金支援です。
最近、プレトリアの中国大使館で発表されたのは、中国グローバル発展・南南協力基金を通じた2年間の資金コミットメントです。金額は約349万米ドルで、HIV/AIDS対策に特化した支援とされています。
南アフリカにはおよそ800万人のHIV陽性者がいるとされ、そのうち約600万人が抗レトロウイルス療法(ART)を受けています。国際的な資金が縮小するなかで、特に若者や思春期の世代で新規感染が課題となっており、今回の新たな投資は、現場では歓迎をもって受け止められています。
南南協力の枠組みを活用した今回の支援は、単なる「お金の援助」ではなく、感染症に正面から向き合う人間中心のアプローチを補強するものだと言えるでしょう。
伝統中国医学とアフリカの知恵が交わる
両国の協力は、臨床医療や資金だけにとどまりません。伝統中国医学(Traditional Chinese Medicine、TCM)の分野でも連携が広がっています。
南アフリカでは、2011年以降、TCMが正式に医療制度の一部として位置づけられました。TCMクリニックで提供される治療は医療保険の対象となり、鍼灸や漢方などへのアクセスが広がったとされています。
近年は、中国と南アフリカが共同で複数のTCMセンターを設立し、次のような役割を担っています。
- TCMと現地医療の連携に関する研究
- 現地の医師・看護師・学生への研修や人材育成
- 中国とアフリカの伝統医療の共通点や違いを紹介する文化展示
これらの取り組みは、西洋医学と伝統医療の「どちらか」ではなく、「両方を生かす」医療モデルを模索する試みとも言えます。地域の文化や生活習慣を尊重しながら健康増進を目指す点で、グローバルサウスならではの発想が反映されています。
アフリカ初のG20サミットとグローバルサウスの声
2025年、G20サミットが初めてアフリカで開催される準備が進むなか、世界の注目はアフリカの最優先課題、とりわけ医療と保健に集まりつつあります。感染症対策から保健システムの強靱化まで、議論すべきテーマは山積みです。
そうしたなかで、中国と南アフリカの長年にわたる医療協力は、グローバルサウス同士のパートナーシップがどのように保健システムを強くし、国際アジェンダに影響を与えうるのかを示す具体例になっています。
中国が国際保健ガバナンスで存在感を高める一方で、アフリカ側も、単なる支援の受け手ではなく、議題づくりそのものに関わる主体として位置づけられつつあります。両国の協力は、その変化を象徴する動きの一つと言えるでしょう。
日本の読者にとっての意味
パンデミックを経験した私たちにとって、国境を越えた保健協力は遠い世界の話ではなくなりました。中国と南アフリカの取り組みからは、次のような問いが浮かび上がります。
- 医療人材の派遣や技術協力は、現地の医療現場をどう変えていくのか
- 資金支援だけでなく、人材育成や伝統医学の共有は、どんな長期的効果をもたらすのか
- アフリカが主導する保健アジェンダは、今後の国際保健のルールづくりにどう影響するのか
2025年のG20サミットを前に、中国と南アフリカの保健協力は、グローバルサウスが自らの経験と知恵をもとに、新しい国際保健モデルを形づくろうとしていることを静かに物語っています。その動きを、日本からどのような視点で見つめ、どのように議論に参加していくかが問われています。
Reference(s):
cgtn.com








