Nature掲載:レアアース材料が電気で光る新コーティング技術とは
電気を流すだけで鮮やかに光るレアアース材料──そんな次世代発光技術が、国際共同研究チームによって実現に一歩近づきました。科学誌「Nature」の最新号に掲載された研究は、レアアースナノ結晶に特別な分子コーティングを施し、電気で直接光らせる仕組みを示しています。
レアアースは「よく光るのに電気には弱い」素材
レアアース(希土類元素)を含むナノ結晶は、鮮やかで純度の高い発光と高い安定性を持つため、照明や表示装置の材料として注目されてきました。一方で、本来は電気を通しにくい絶縁体であり、電流を直接流して光らせるのが難しいという弱点があります。
清華大学のHan Sanyang准教授は、この状況を「厚手の冬物コートを着たまま走ろうとするようなもの」と表現します。素材そのものの絶縁性が高いため、電気がうまく内部に届かず、発光を引き出しにくかったのです。
分子コーティングが「エネルギー変換層」に
今回の研究では、中国の黒竜江大学と清華大学、シンガポール国立大学の研究者らが協力し、レアアースナノ結晶の表面を包み込む特殊な分子コーティングを設計しました。この層は「エネルギー変換層」として働き、電気エネルギーを効率よく光へと変換する役割を担います。
分子コーティングは、まず外から加えられた電気エネルギーを受け取り、そのエネルギーをナノ結晶内部のレアアース元素に渡します。その結果、これまで電気では光らせにくかったレアアースナノ結晶が、電気駆動で明るく発光できるようになりました。
研究チームによると、この手法を用いることで、電気によって発光色を調整しながら、高純度な色の光を得ることも可能になったといいます。
Natureに掲載された国際共同研究
この成果は、黒竜江大学、清華大学、シンガポール国立大学による国際共同研究としてまとめられ、科学誌「Nature」の最新号に掲載されました。レアアース材料の強みである「明るく安定した発光」と、「電気で直接駆動できる」という電子デバイスの要件を両立させた点が大きなポイントです。
これまで、LEDや有機EL(OLED)といった電気駆動の発光デバイスでは、レアアースナノ結晶の絶縁性がボトルネックとなり、応用は限定的でした。今回提案された分子コーティングというアプローチは、その根本的な制約を乗り越える新しい設計指針として注目されています。
医療・検査・農業照明への応用に期待
研究チームは、今回の技術が人の健康モニタリング、非侵襲的な検査、作物の補光技術など、さまざまな分野への応用につながる可能性があると指摘しています。高純度な色の光を自在に発することができる点は、精密な計測やセンシングにとって大きな利点となります。
例えば、身体に負担をかけずに状態をチェックするための光学的な健康モニタリングや、作物の成長を助ける補光システムなどで、レアアースナノ結晶の特性が生かされることが考えられます。
研究グループは現在、特にヘルスケアや赤外線を用いた応用に向けて、この技術の改良を続けているといいます。今後、医療機器や照明技術とどのように結びついていくのかが注目されます。
「よく光る素材」を次世代デバイスにつなぐ一歩
今回のコーティング技術は、レアアースという「光らせれば優秀」な素材を、電気駆動のデバイス設計に組み込むための新しい橋渡しといえます。素材の性質そのものを変えるのではなく、その周りを工夫してエネルギーの流れ方を設計するという発想は、他のナノ材料にも応用可能かもしれません。
身の回りのセンサーやディスプレー、農業や医療の現場など、光を使う技術は今後も広がっていきます。今回の国際ニュースは、その裏側で進む材料研究の一端を示すものとして、これからのテクノロジーの行方を考える手がかりになりそうです。
Reference(s):
Scientists design coating for rare earth materials to glow with power
cgtn.com








