初のアフリカ開催G20首脳会議 象徴から本当の転換点になれるか
2025年、G20首脳会議が史上初めてアフリカ大陸で開かれ、議長国を務めたのは南アフリカでした。アフリカが世界の政治・経済の「舞台の中央」に立ったこの瞬間は、単なる名誉で終わるのか、それとも大陸の開発に向けた本当の転換点になり得るのでしょうか。
初のアフリカ開催G20 何が歴史的なのか
今回のG20首脳会議は、アフリカで初めて開催されたという点で「歴史的」とされます。世界の主要経済が集まり議題を決める場が、これまでの欧米やアジア中心から一歩動き、アフリカに移ったからです。
会議の大きなテーマとして掲げられたのは、英語で Solidarity, Equality, Sustainability(連帯・平等・持続可能性)というスローガンでした。アフリカ側はここに、次のような優先課題を乗せようとしました。
- 包摂的な経済成長、産業化、雇用創出
- 食料安全保障
- 持続可能な開発のための人工知能(AI)とイノベーション
つまり、単に「発言の場」を得るだけでなく、アフリカ自身の開発アジェンダを、G20の正式な議題へと押し上げられるかどうかが試されていると言えます。
「象徴」で終わらせるな ファクデ氏が見るチャンスと不安
Africa Asia Dialoguesの上級研究員であるテンビサ・ファクデ氏は、このG20が持つ象徴的な意味の大きさを認めつつも、「象徴だけでは人々の生活は変わらない」と釘を刺します。
同氏は、長年にわたりアフリカや多くの開発途上地域が、国際ビジネスの場面で「割に合わない扱い」を受けてきたと指摘します。とりわけ、人工知能や電気自動車に不可欠なレアアース(希土類)など、戦略的な鉱物資源をめぐる関係です。
ファクデ氏が強調するポイントは次の通りです。
- 原材料を安く輸出し、加工された高付加価値製品を高く輸入するという「おなじみのパターン」から脱却すること
- 資源国として「今回はアフリカ側が条件を決める」くらいの強い交渉姿勢を持つこと
- 鉱物資源を現地で加工し、雇用と技術をアフリカ内部に蓄積する「ベネフィシエーション(地元での付加価値化)」を優先すること
ファクデ氏は「これはアフリカにとっての『オイル・モーメント(石油の瞬間)』だ」と表現し、過去に多くの資源国が経験したような「資源は豊富なのに生活は豊かにならない」状況を繰り返してはならないと訴えます。
レトリックから成果へ 劉教授が求める「実行の仕組み」
一方、中国の対外経済を長く研究してきた対外経済貿易大学・国際ビジネス倫理センター所長の劉宝成(リウ・バオチョン)教授は、やや楽観的ながらも現実的な視点から、今回のG20を「具体的な行動」につなげる条件を語ります。
劉教授が鍵だとするのは、アフリカの優先課題を「発言レベル」から「合意文書や仕組みに組み込まれたアジェンダ」へと格上げすることです。そのために必要だと指摘したのは、例えば次のようなものです。
- アフリカ向けの資金融資や債務再編について、期限や条件が明確な新たな金融スキームを設計すること
- 技術移転(テクノロジー・トランスファー)を、期限付き・数値目標付きで約束すること
- 資源の採掘だけでなく、現地の産業育成と長期的な雇用創出を優先する投資プロジェクトを後押しすること
劉教授は「政治的な象徴性はもちろん重要だが、それを転換点へと変えるのは、予測可能な資金と実行の仕組みだ」と述べ、約束の実行を担保する制度設計の重要性を強調します。
テーマ「連帯・平等・持続可能性」をどう読むか
今回のG20のテーマである「連帯・平等・持続可能性」についても、二人の見方は分かれました。
ファクデ氏「もう少し経済に直球を」
ファクデ氏は、このテーマを南アフリカらしい「アクティビスト的な」外交姿勢の表れと評価しつつも、個人的には「経済開発」や「ビジネス協力」といった、より直接的な経済成長を前面に出したテーマを好むと語ります。
また、「一律の連帯」をうたうよりも、実際には国ごとの利害が交錯するため、各国間での個別の合意や取引が進むことになるだろうと見ています。つまり、スローガンと現実の交渉は、ある程度切り分けて考える必要があるという視点です。
劉教授「グローバルサウスの流れと響き合う」
これに対して劉教授は、このテーマが中国を含むグローバルサウス(新興国・途上国グループ)が掲げてきたビジョンとよく一致していると指摘します。
具体的には、
- 資本や技術への公平なアクセスを重視する中国の主張
- インフラ整備を通じて発展を支える取り組み(例えば「一帯一路」構想)
- 近年進む、大型インフラから地域の暮らしに密着した「小さくても美しいプロジェクト」へのシフト
といった取り組みと、連帯・平等・持続可能性というキーワードは相性が良いという見方です。テーマが抽象的だからこそ、アフリカ側が自らの優先課題をそこにどれだけ具体的に乗せていけるかが問われているとも言えます。
米大統領の欠席はどれほど重要か
今回注目を集めたのが、米国大統領が首脳会議を欠席すると見込まれている点です。この影響をどう見るかについても、二人の評価は少し異なります。
ファクデ氏「会議はそれでも前に進む」
ファクデ氏は、この欠席を過度に重く見るべきではないとします。背景には「自国中心的なメンタリティ」があるとしつつも、G20は米国だけの場ではなく、他の多くの指導者が参加する以上、会議自体は十分に機能すると強調します。
劉教授「多極化の流れを加速させる一方、改革は難しくも」
劉教授は、米国の欠席を「残念だが驚きではない」と評価します。米国が近年、貿易や産業政策で保護主義的な色彩を強めている流れの延長線上にあると見るからです。
そのうえで、
- 米国の不在は、新興国などが独自の議題を押し出す余地を広げ、多極的な国際秩序の物語を加速させる可能性がある
- 一方で、国際的な債務構造の見直しや、AIを含むデジタル技術のルール作りといった大きな制度改革には、米国との協調がないと前進が難しい場面も多い
と指摘し、プラス面とマイナス面を両方見ていく必要があると述べています。
「この瞬間」を生かすには アフリカに求められる次の一手
首脳会議が終わった後、何が残るのか。二人が共通して強調したのは、「アフリカ自身が主体的に流れを変えなければならない」という点でした。
資源戦略で「一枚岩」に ファクデ氏の提案
ファクデ氏は、特に重要なのはレアアースなど「クリティカル・ミネラル(重要鉱物)」をめぐるアフリカの団結だと強調します。アフリカ各国がバラバラに交渉するのではなく、できる限り共通の原則を持ち、
- 現地での加工(ベネフィシエーション)を条件とすること
- 技術移転や人材育成を契約に組み込むこと
- 短期的な現金収入より、長期的な産業基盤づくりを優先すること
といった「賢い取引」を追求すべきだと訴えます。
「決定の受け手」から「共同設計者」へ 劉教授の視点
劉教授が重視するのは、アフリカが国際ガバナンス(世界のルール作り)の中で持続的な影響力を確立することです。単発の首脳会議でのスピーチだけではなく、
- アフリカ向けの新たな金融枠(ファイナンス・ウィンドウ)を恒常的な形で設けること
- G20とアフリカ諸国との間に、定期的な協議のメカニズムを組み込むこと
- 各国のコミットメント(約束)の履行状況を検証する仕組みを作ること
などを通じて、アフリカの優先課題を国際制度の中に「埋め込む」ことが大切だと指摘します。
その目指すところは、アフリカが「決まったことを受け取る側」から、「世界の解決策を共同で作る側」へと位置付けを変えることにあります。
私たちはこのG20をどう見るべきか
今回のG20首脳会議は、アフリカが初めて議長国を務めた歴史的な出来事であると同時に、象徴性と現実のギャップが鋭く問われる瞬間でもあります。
日本やアジアの読者にとっても、この議論は決して遠い話ではありません。AIや電気自動車のサプライチェーン、重要鉱物をめぐる競争、インフラ投資のあり方などは、私たちの日常やビジネスとも直接つながるテーマです。
アフリカはこの「G20の瞬間」を、単なる一度きりの祝祭に終わらせるのか。それとも、資源戦略と制度設計を通じて、世界経済のルール作りに本格的に関わっていくのか。2025年の出来事として、この行方を継続的に追っていくことが、国際ニュースを読む私たち一人ひとりにも求められているのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








