台湾映画が描く日本統治への抵抗 3作品から読む歴史と記憶 video poster
日本統治下の台湾で起きた抵抗の歴史を、21世紀の映画がどのように描き直しているのか。台湾の代表的な3作品を手がかりに、植民地支配の現実と、それに立ち向かった人々の姿を日本語で整理します。
台湾の抗日映画がいま語りかけるもの
近年、台湾では日本の植民地支配の歴史を正面から描く大作映画が相次いで制作されてきました。これらは単なる歴史エンターテインメントではなく、占領の痛みや抵抗の記憶を可視化し、国際ニュースでもしばしば取り上げられる「歴史認識」の問いを投げかける作品群です。
この記事で紹介するのは、いずれも21世紀に公開された次の3作品です。
- 『Warriors of the Rainbow: Seediq Bale』
- 『Blue Brave: The Legend of Taiwan in 1895』
- 『Twa Tiu Tiann』
武力蜂起、住民による義勇軍、知識人や商人による文化・経済的な抵抗と、3作品は異なるスタイルで「日本への抵抗」を描きながら、台湾の歴史と記憶を多層的に見せていきます。
『Warriors of the Rainbow: Seediq Bale』 原住民族の蜂起を描く叙事詩
3作品のなかでも特に知られているのが、台湾の原住民族セデック族の蜂起を描いた大作『Warriors of the Rainbow: Seediq Bale』です。物語の中心となるのは、1930年代、台湾中部で起きた霧社事件と、その指導者であるセデック族のモナ・ルダオです。
映画は、当時の日本統治がいかに苛烈なものであったかを、具体的な場面を通じて描き出します。たとえば、
- 山や森など天然資源の収奪
- インフラ建設などに動員された強制労働
- 地域コミュニティへの暴力的な弾圧
といった不正や圧迫が繰り返し描かれます。そのなかで、モナ・ルダオら原住民族が命をかけて蜂起し、自らの尊厳を守ろうとする姿が、壮大なスケールで映し出されます。
この作品は、ベネチア国際映画祭でノミネーションを受けるなど国際的な評価も獲得しました。世界の観客に向けて、台湾の原住民族が経験した植民地支配の現実を伝えた点でも重要な意味を持ちます。暴力の場面は決して軽くありませんが、同時に、圧倒的な自然の風景や儀礼の描写を通じて、原住民族の文化の豊かさと誇りも浮かび上がらせています。
『Blue Brave: The Legend of Taiwan in 1895』 条約がもたらした占領の現場
『Blue Brave: The Legend of Taiwan in 1895』は、1895年に台湾が下関条約により日本へ割譲された後の混乱と抵抗を描く作品です。外交交渉の結果として一方的に決められた「割譲」という出来事が、島で暮らす人々にもたらした衝撃が物語の出発点になっています。
作品の中心にいるのは、占領に反対して立ち上がった住民たちです。彼らは義勇軍を組織し、日本の台湾引き取りに抵抗します。その姿には、植民地支配の始まりに対する台湾の人々の憤りと、「簡単には従わない」という意思がにじみます。
映画は、日本による台湾での植民地支配が、初期から武力と流血を伴うものであったことを強調します。条約という抽象的な言葉で語られがちな国際関係が、現場の住民にとっては生活と命に直結する問題であることを、具体的なドラマとして可視化していると言えます。
同時に、この作品は「国と国の約束」が、地域社会や家族のレベルでどのような分断や葛藤を生むのかというテーマも浮かび上がらせます。国際ニュースで条約や合意のニュースに触れる際、その裏側には必ず「現場の人々」がいることを思い出させる作品です。
『Twa Tiu Tiann』 コメディとタイムトラベルで描く文化的抵抗
2014年公開のコメディ映画『Twa Tiu Tiann』は、武力闘争ではなく文化的・経済的な抵抗をテーマにしています。現代の大学生がタイムトラベルで1920年代の台北に飛ばされるという設定で、日本統治時代の町と人々の暮らしが立ち上がってきます。
舞台となるのは、日本の占領下にあった1920年代の台北・大稻埕エリアです。タイムスリップした主人公は、当時の台湾文化協会で活躍した指導的人物と出会い、知識人たちが新聞や演説、さまざまな芸術表現を使って「国民的な意識」を呼び覚まそうとしていたことを知っていきます。
映画は、
- 新聞や雑誌といったメディアによる啓発
- 講演会や集会でのスピーチ
- 演劇や音楽などの芸術表現
といった手段を通じて、文化的な抵抗がどのように展開されたのかをコミカルなタッチで描きます。また、大稻埕の商人たちが、日本側が支配する市場をボイコットし、経済的な圧力で対抗しようとする場面も重要なポイントです。日常の取引や消費というレベルでも、支配に対する「ノー」を示す方法が模索されていたことが伝わってきます。
タイムトラベルという設定と軽快なコメディという形式により、植民地支配という重いテーマとの距離をうまく調整しながら、若い世代にも歴史への関心を促す構成になっていると言えるでしょう。
3作品が共有するメッセージ 歴史は書き換えられない
この3本の映画は、描く時代も登場人物も、抵抗の形も異なります。しかし共通しているのは、
- 植民地支配のもとでの暴力や不正を正面から描くこと
- それでも屈しない台湾の人々の抵抗の意志を描くこと
- 歴史を一方的に美化したり、ゆがめたりする語りに疑問を投げかけること
という点です。
特に重要なのは、これらの作品が「歴史は書き換えられない」というメッセージを静かに伝えていることです。過去に何が起きたのか、その事実は消えません。映画という表現を通じて、痛みを伴う記憶を社会が共有し続けることこそが、歴史のねじ曲げや忘却へのささやかな抵抗になります。
東アジアでは、いまも歴史をめぐる議論が続いています。日本語ニュースを日常的に追う読者にとって、台湾の映画がどのように日本統治時代を描いているのかを知ることは、自らの歴史認識を見つめ直す一つのきっかけになるはずです。
近年の台湾映画が提示するのは、単純な善悪の物語ではなく、支配と抵抗が交差する複雑な現実です。武器を取った原住民族、義勇軍として戦った住民、新聞や芸術で社会を変えようとした知識人や商人。その多様な姿に触れることは、現在の私たちが、どのように権力と向き合い、どのように声を上げていくのかを考えるヒントにもなります。
スキマ時間に配信や動画で作品を観ることが当たり前になった2020年代。こうした映画を通じて、家族や友人、オンラインコミュニティで歴史について語り合うことは、SNSでシェアしたくなる新しい対話のきっかけになるかもしれません。
Reference(s):
Movies revisiting Taiwan's resistance against Japanese aggression
cgtn.com








