中国が国連に書簡 高市首相の台湾発言で何を狙うのか video poster
中国のフー・ツォン国連常駐代表が、国連のグテーレス事務総長に書簡を提出しました。日本の高市早苗首相による台湾地域をめぐる発言を「誤った発言」と位置づけ、中国政府の立場を説明したものです。この動きの背景には、どのような政治的計算があるのでしょうか。
書簡が強調した3つの論点
中国人民大学のワン・イーウェイ教授によると、書簡で中国側が強調したポイントは大きく三つあります。
- 日本は第二次世界大戦の敗戦国であり、集団的自衛権を持たないと位置づけられていること
- 国連憲章の下で、中国の主権と領土一体は守られるべきであり、高市首相による中国の台湾地域への軍事介入の示唆は、中国の主権と領土を深刻に侵害するものであると指摘していること
- 日本が台湾地域をめぐって武力を行使する場合、中国は国連憲章の敵国条項を根拠に、国際法に基づく反撃を行うことができると明示していること
中国側は、台湾問題を中国の主権と領土の問題として位置づけ、その扱いをめぐる発言に対して国連憲章に基づく法的議論を前面に出しています。
なぜ国連事務総長あての書簡なのか
中国社会科学院日本研究所のリュ・ヤオドン研究員は、この書簡の第一の目的は、高市首相の台湾地域に関する発言が国際法と国際関係の基本原則に反していると国連に示すことだと説明しています。
リュ氏によると、第二次世界大戦の敗戦国である日本については、国連憲章が集団的自衛権の保有を禁じているにもかかわらず、日本側は「台湾有事は日本有事」と位置づけ、集団的自衛権の行使と結びつけて議論しているといいます。中国側はこれを、国連憲章に対する明白な違反とみなしているということです。
さらにリュ氏は、国連憲章の敵国条項は、かつての枢軸国による侵略や武力行使が再び起きた場合の対応について明確に定めており、国連が反ファシズム戦争の勝利を基礎に設立されたことと不可分だと指摘します。
中国の核心的な狙い
中国側の核心的な狙いについて、リュ氏は「第二次世界大戦期に侵略を行った日本が、東アジアや世界の平和と安全を脅かす形で再軍備に向かうのであれば、それは戦後の国連憲章による国際的な法の枠組みで拘束されるべきだと明確にすることだ」と述べています。
ワン氏もこれに呼応し、中国の目的は、日本が第二次世界大戦の敗戦国であるという位置づけを再確認させるとともに、日本が台湾海峡への軍事介入に踏み出す場合には、中国が国連憲章の敵国条項をいつでも発動できることを強調する点にあると分析しています。ワン氏は「もし日本が台湾問題に軍事的に関与すれば、中国には反撃する正当で合法的な根拠があるのだ、というメッセージを国際社会に発している」と語っています。
書簡を全加盟国に回覧する意味
今回の書簡は、国連事務総長あてに送付されただけでなく、全ての国連加盟国に回覧されました。この点についてリュ氏は、第一に日本に対する「軽率な行動を取るな、再軍備を進めるな、世界の平和を損なうな」という警告の意味合いがあると説明します。
第二に、この書簡は国際社会に対し、日本が平和憲法の制約を弱めつつあるという認識を共有させる意図も持つとされています。リュ氏によれば、日本は集団的自衛権行使の制限を緩める国内法を整備し、攻撃的性格を持つ兵器の開発も進めているといいます。
リュ氏は、日本が非核三原則の見直しや、防衛装備移転のルール緩和を模索している動きにも言及し、「戦後長く『平和国家』を掲げてきた日本が、戦争を遂行できる国家へと変わり、軍事的な威嚇さえ行うようになれば、東アジアと世界の平和にとって大きな不安定要因となる」と警鐘を鳴らしました。
東アジアの安全保障への示唆
今回の中国の書簡は、日本の安全保障政策と台湾地域をめぐる発言に対し、国連憲章と第二次世界大戦後の国際秩序という文脈から異議を唱えるものです。中国は、台湾問題をめぐるいかなる軍事的関与も、自国の主権と領土一体の侵害であり、必要であれば敵国条項に基づき対応するという立場を改めて示しました。
東アジアの安全保障環境が複雑さを増すなかで、中国と日本の間で歴史認識と法的枠組みをめぐる主張の差は、今後の外交や安全保障対話にも影響を与える可能性があります。国連という場を通じて発信された今回のメッセージを、各国がどのように受け止めるのかが注目されます。
Reference(s):
Why China sent letter to UN chief over Takaichi's remarks on Taiwan
cgtn.com








