G20南アフリカ首脳会議で中国の李強首相 気候・AI・食料で広範な協力を提案
南アフリカ・ヨハネスブルクで開かれたG20首脳会議で、中国の李強首相が演説し、気候変動やエネルギー、食料安全保障、人工知能(AI)など地球規模の課題に対して、G20がより幅広いグローバル協力を進めるよう呼びかけました。重なり合う危機の時代に、主要国がどのような方向性を示すのかをうかがえる国際ニュースです。
李強首相「協力で課題を乗り越え、人々の福祉を高める」
李強首相は、今回のG20サミットの第2・第3セッションに出席し、気候変動、エネルギー・食料危機など複数の課題が同時に進行する中で「国際社会は団結し、協力を通じて問題解決の力を結集する必要がある」と強調しました。
演説の軸となったのは次の三つの方向性です。
- 気候・生物多様性・環境分野での協力強化
- グリーンエネルギーと公正な移行(ジャストトランジション)
- 食料安全保障と農業技術の協力
さらに、新しい科学技術革命と産業変革がもたらす機会と格差の双方に触れ、AIや重要鉱物、グローバルサウス支援などにも議論を広げました。
気候変動と生物多様性 科学に基づく協力と「共通だが差異ある責任」
最初の柱として、李強首相はエコロジーと環境保護の協力強化、そして各国の「開発の強靱性」の向上を呼びかけました。気候変動への対応については、科学的知見に基づく姿勢を重視し、各国の立場や能力の違いを踏まえた「共通だが差異ある責任」という原則を守るべきだと訴えました。
生物多様性の分野では、昆明・モントリオール生物多様性枠組みの下で各国との協力を一段と深め、国連気候変動枠組条約の第30回締約国会議(COP30)の成果の実施を加速させる考えを示しました。李強首相は、気候・生態分野での協力について「各国は責任を示し、迅速に行動すべきだ」と強調しています。
グリーンエネルギーと産業・サプライチェーンの安定
第二の柱は、グリーンエネルギー分野の協力と「公正なエネルギー転換」です。李強首相は、脱炭素と経済成長を両立させるためには、次のような点が重要だと指摘しました。
- グリーン産業での国際協力を推進すること
- 産業・サプライチェーンを安定的かつ円滑に保つこと
- 関連技術や製品の自由な流通と応用を促すこと
その上で、中国は各国のエネルギー転換を支援するため、できる限りの協力を続ける用意があると述べました。再生可能エネルギーや省エネ技術の普及は、日本を含む多くの国のエネルギー安全保障とも直結するテーマです。
食料安全保障 循環・市場・農業技術での協力
第三の柱は食料安全保障です。ウクライナ危機や気候変動の影響などで、穀物価格や供給の不安定さが続く中、李強首相は、世界の食料供給を安定させるために次のような取り組みを提案しました。
- 世界的な食料の流通と供給の最適化
- 主要農産物をめぐるパートナーシップの構築
- 開かれた、安定的で持続可能な世界の食料市場の構築
- 食料不足に直面する国々への供給強化
また、農業の科学技術での協力を強化し、各国の食料生産能力を高めることの重要性も指摘しました。中国は「グローバル食料安全保障国際協力イニシアチブ」の実施を各国と共に進め、飢餓と貧困との闘いに新たな貢献をしていくとしています。
AIガバナンスと重要鉱物 新しい技術と資源のルールづくり
李強首相は、科学技術と産業構造の変化が世界にもたらす機会とリスクにも言及しました。新しい産業革命の進展は前例のない発展機会を生む一方で、新たな不平等や開発格差を生む可能性があると指摘し、G20の役割として「開放性、互恵協力、機会の共有」を掲げました。
AIの健全な発展と国際協力
まず人工知能(AI)について、李強首相は次のような方向性を示しました。
- G20がAIの研究開発協力と成果共有を積極的に促すこと
- AIをめぐる「インテリジェンス・ギャップ」を埋めること
- AIのガバナンス(ルールづくり)を改善すること
中国は、世界人工知能協力機構やオープンサイエンス国際協力行動計画への参加国拡大を呼びかけ、「有益で安全かつ公正な形」でAIの健全かつ秩序ある発展を進める方向を支持すると表明しました。AIのルールづくりは、日本を含め多くのG20メンバーが共通して直面する課題です。
重要鉱物の平和利用とバリューチェーンの公平性
次に取り上げたのが、脱炭素時代のエネルギー転換に不可欠なリチウムやニッケルなどの重要鉱物です。李強首相は、こうした鉱物の「互恵的な協力」と「平和的利用」を進める必要があると述べました。
具体的には次の点を挙げています。
- 国連事務総長の「エネルギー転換のための重要鉱物パネル」の建設的な役割を支持すること
- G20重要鉱物枠組みの完全な実施を進めること
- 生産・供給チェーンにおける利益配分をよりバランスの取れたものにし、特に開発途上国の利益を守ること
また、潜在的な軍事利用など安全保障上のリスクに対しては慎重な姿勢を取るべきだとし、「グリーン採掘と鉱物に関する国際経済・貿易協力イニシアチブ」への各国の積極的な参加を促しました。
グローバルサウスへの支援と若者・女性へのエンパワーメント
李強首相は、いわゆるグローバルサウス、とりわけアフリカや他の開発途上国への支援強化もG20の重要な役割だと訴えました。その焦点は、人材と雇用、そして包摂的な成長です。
- アフリカなど開発途上国の能力構築を支援すること
- より多くの雇用機会を創出すること
- 女性と若者の発展を後押しすること
さらに、G20ネルソン・マンデラ・ベイ目標を実行し、より多くの若者が経済のグローバル化の恩恵を受けられるようにするべきだと強調しました。経済成長を「人々の暮らしの向上」にいかにつなげるかは、先進国・新興国を問わず共通の課題です。
首脳外交とG20サミットの広がり
今回のG20サミットでは、「G20南アフリカサミット・首脳宣言」が採択されました。李強首相は会議の合間に、フランスのマクロン大統領、韓国の李在明大統領、アンゴラのロウレンソ大統領、スペインのサンチェス首相、世界貿易機関(WTO)のオコンジョイウェアラ事務局長らと友好的な意見交換も行いました。
気候変動からAIガバナンス、重要鉱物、食料安全保障、そしてグローバルサウス支援まで、議題は多岐にわたります。李強首相の発言は、G20が「対立」ではなく「協力」を軸に、複合危機に向き合おうとしている姿勢を示すものといえます。
日本やアジアの読者にとっても、エネルギー転換や食料・資源の安定供給、AIの国際ルールづくりは生活とビジネスに直結するテーマです。今回のG20で示された方向性が、今後の国際協力の具体的な枠組みやビジネス環境にどのように反映されていくのか、引き続き注目が集まりそうです。
Reference(s):
Chinese premier urges G20 to strive for broader global cooperation
cgtn.com








