中国女性と冬の養生 伝統中国医学の知恵が今も生きる
2025年の冬、中国本土北部では気温がぐっと下がるなか、女性たちが最新の発熱素材のインナーなどの防寒グッズだけでなく、古くからの養生の知恵にも目を向けています。伝統中国医学の考え方を手がかりに、冬をどう乗り切るのか。その日常の工夫は、国際ニュースとしても注目されるライフスタイルの変化です。
自然のリズムと結びついた女性のからだ
伝統中国医学(Traditional Chinese Medicine、TCM)では、女性の健康は自然のリズムと陰陽のバランスに深く結びついていると考えられてきました。陰陽とは、冷と温、静と動、柔らかさと強さといった、相反しながらも補い合う力を指します。
TCMでは、女性は男性に比べて陰の性質を多く備えているとされます。陰は冷たさや静けさ、滋養といった性質と結びついており、そのため女性は「手足が冷えやすい」「内側が冷えやすい」と表現されることがあります。これは体質的な弱点というより、もともとのエネルギーの特徴として捉えられてきました。
こうした陰の性質を持つからこそ、特に冬のあいだは、からだを冷えから守り、穏やかに温めていくことが大切だと考えられています。
気と血、そして衝脈・任脈という「通り道」
TCMの世界観では、女性の健康を支える鍵として、気(き、生命エネルギー)と血(けつ、血とその働き)、そして独自の経路である衝脈(しょうみゃく)と任脈(にんみゃく)が重視されます。
- 気と血が全身をなめらかに巡っていること
- 衝脈と任脈という経路が調和して働いていること
この二つが、月経や妊娠、出産といった女性のライフステージを支える土台だとされます。
任脈(Ren Mai)は体の前面を通る経路で、「陰の海」とも呼ばれます。子宮をはじめとする生殖器を滋養し、その働きを整える役割があるとされる経路です。一方の衝脈(Chong Mai)は「血の海」とされ、気と血の流れをととのえ、月経周期や妊娠、出産に深く関わると考えられています。
気と血が十分にあり、衝脈・任脈の働きが整っていることが、女性の心身の安定につながる――。そんな見立てが、長い歴史の中で語り継がれてきました。
月経期は冷えに弱いとされる理由
TCMの考え方では、女性のからだは月経周期の中で状態が変化し、特に月経期には外からの冷えに影響を受けやすいとされます。そこで、冬の月経期には次のような過ごし方がすすめられてきました。
- できるだけ十分に休息をとる
- 生野菜や冷たい飲み物など、冷やす性質が強いものを控える
- からだを内側から温める飲み物やスープを選ぶ
その代表的な例が、しょうがと黒糖を使った温かいお茶です。しょうがは体を温める食材として、黒糖はエネルギーを補うものとして位置づけられ、冬に好まれてきました。
また、肉となつめ(赤い実のデーツ)、クコの実(ゴジベリー)などを煮込んだスープもよく知られています。これらは血を補い、気を養う料理として位置づけられ、月経後のからだを支える一品とみなされています。
通勤電車とオフィスに溶け込む「養生」
こうした冬の養生は、いまも中国本土の女性たちの日常に息づいています。特徴的なのは、そのスタイルがとても現代的であることです。
朝の通勤電車の中やオフィスのデスクの上には、保温機能付きのマグや水筒が並びます。その中身は、しょうがと黒糖のお茶であったり、なつめやクコの実を入れた温かい飲み物であったりします。仕事の合間に一口飲み、からだをゆっくり温める――そんな光景が冬の日常の一部になっています。
防寒コートや機能性インナーなどの現代的なグッズと、しょうが茶や薬膳風スープといった伝統的な養生法。二つを組み合わせながら、自分のからだをいたわろうとする姿勢が見えてきます。
古い知恵が今の世代にも響く理由
なぜ、数百年にわたって受け継がれてきたTCMの知恵が、デジタルネイティブ世代の女性たちにも支持されているのでしょうか。
- 季節の変化に合わせて自分のペースを調整するという考え方
- 月経や冷えといった、日々の不調に寄り添おうとする視点
- 身近な食材や飲み物でできる、小さなセルフケアであること
こうしたポイントは、忙しい現代の生活とも相性がよいものです。大きく生活を変えなくても、通勤時間や仕事の合間に、保温マグ一杯の温かいお茶から始められる。その手軽さが、習慣として続きやすい理由のひとつだと言えそうです。
季節とからだの関係を静かに見直すきっかけに
中国本土北部の冬の暮らしを見ていると、最新のテクノロジーと古くからの知恵が、対立するものではなく補い合う存在になっていることが伝わってきます。発熱素材のインナーで外側から温め、TCMの発想を取り入れた飲み物やスープで内側からケアするという発想です。
日本に暮らす私たちにとっても、こうした国際ニュースは、季節とからだの関係を静かに見直すヒントになります。仕事や学びに追われがちな日々のなかで、気温の変化やからだのリズムに少し意識を向けること。その小さな一歩が、冬を穏やかに過ごすためのきっかけになるのかもしれません。
Reference(s):
How Chinese women embrace ancient wellness practices in winter
cgtn.com








